そごう・西武のストライキは、親会社がそごう・西武を、売却しようとする中で、組合が雇用などへの懸念から実施したものでした。ただ、親会社はスト翌日には売却を完了させました。主な大手デパートとしては61年ぶりとなった今回のストライキが残したものや、今後への影響について取材した首都圏局の牧野記者がQA方式で解説します。
業績の不振が続くそごう・西武をめぐっては、親会社のセブン&アイが2022年11月、アメリカの投資ファンドに売却する方針を決め、最終的な決議に向けて調整を進めていました。
これに対して、そごう・西武の労働組合は雇用などへの懸念から反発し、8月31日、ストライキを実施して旗艦店の西武池袋本店で全館の営業を取りやめました。
ストライキの実施は、主な大手デパートではおよそ60年ぶりとなります。
〇ストライキとは
ストライキは労働組合や労働者の団体が経営側に対して賃上げや労働条件の改善などを求めて、働くことを拒否する争議権の行使形態の一つです。
ストライキの権利は憲法28条で「団体行動権」として認められていて、始めるにあたっては投票で組合員の過半数の賛成を得ることが必要となっています。
また、ストライキの期間中は会社側に賃金を請求することができず、一般的に組合側が負担することになっています。
Q. ストから1週間たってその効果は?
組合側は厳しい受け止めです。目的のひとつとした早期の売却阻止は実現できませんでした。そして雇用の維持については、売却先のアメリカの投資ファンドの日本法人は「最大限の雇用維持に向け、そごう・西武の経営陣を支援していく」と表明していますが組合側にはストライキ後もその具体的な内容は示されていないということです。
ただプラス面もあったとしていてその1つがストライキに肯定的で支援する声が多かったことだとしています。
そごう・西武労働組合寺岡泰博中央執行委員長
「多くの方から頑張ってください、これからもお店を守って下さいと、本当に考えられないぐらい多くの方からご声援をいただいた。会社を超えた1つの大きな連帯、団結が出来たと言うことはわれわれにとっても1つの成果だ」
Q. 今回のストはどう受けとめられたのでしょうか?
肯定的な意見が多いなというのは、私も取材していて感じました。さらにネットの声を集めて分析してみました。
『西武』『ストライキ』を含む言葉での投稿を分析したところ、9万を超える投稿があり、肯定的、否定的、さまざまな立場から投稿がありました。
Q. 関心を集めた理由はどんなことが考えられるでしょうか?
そもそも国内ではストライキは大きく減っているので「めずらしい」という点が1つあります。
減った主な理由の1つが雇用そのものは維持するという協調的な労使関係が長く続いてきたからです。ただ、今回はその雇用の維持そのものが揺らいでいることからストライキに至りました。そしてその雇用そのものが揺らぐということをひとごとではなく捉えた人も多かったということも関心を集めた要因の1つと言えるかもしれません。
〇ストライキの件数
厚生労働省によりますと半日を超えるストライキの件数は昭和30年代後半から昭和50年代前半にかけては全国で年間1000件を超え、ピークの昭和49年、1974年は5197件、参加した人も362万人にのぼっていました。
しかし、それ以降は減少傾向で、2001年以降は100件を下回り、2022年は33件で、参加者は744人となっています。
Q. ストライキは今後、日本でも増えていくのでしょうか?
アメリカでは、最近は物価高騰などを背景に賃上げなどを求めるストライキが目立っています。専門家は今回のそごう・西武のストライキが日本社会に与える影響は大きいと指摘しています。
立教大学 首藤若菜教授
「ストライキは非常にリスクやコストがかかるのでそんな簡単ではない。ただ今回のそごう・西武のストをみて、多くの方が、やはり労働者、労働組合が声を上げていくことがすごく大事だと感じ取ってくれれば、今回のそごう西武のストが与えた影響は大きいのではないかと思っています」
大きな注目を集めた今回のストライキですが、そごう・西武は雇用の維持をしながら業績をどう立て直すかが今後の課題で、雇用の維持については話が整ったわけではありません。
組合は「雇用が本当に維持されるのか確認していきたい」としていて地域のみなさんも大きな関心があるこの問題を引き続き取材していきたいと思います。