2021年のシーズンで自動車レースの最高峰「F1」から撤退していたホンダは、3年後の2026年のシーズンから復帰することを明らかにしました。
新たなパートナーとなるのがレーシングチームの「アストンマーティン」。
エンジンなどを供給する契約を結ぶことで合意しました。
記者会見でF1シリーズへの復帰を表明したホンダの三部敏宏社長
ホンダは、自動車レースの最高峰「F1」に2026年のシーズンから復帰することを明らかにしました。
発表によりますとホンダは、2026年のシーズンからF1に参戦し、エンジンとモーターを組み合わせたパワーユニットを「アストンマーティン」に供給する契約を結ぶことで合意したということです。
チーム名は、「アストンマーティン・アラムコ・ホンダ」となります。
ホンダは、1964年に日本の自動車メーカーとして初めてF1に参戦しました。
1980年代後半から90年代前半にかけて「マクラーレン」などにエンジンを供給して黄金時代を築いた歴史があります。
2015年に参戦したあとは、本業での脱炭素に向けて経営資源を集中するとして2021年に撤退していました。
自動車レースF1の総合優勝を記念したホンダ本社の展示
2021年のシーズン、ホンダのパワーユニットを搭載する「レッドブル・ホンダ」のマックス・フェルスタッペン選手がシーズン10勝目を挙げ、最終戦までもつれたメルセデスのルイス・ハミルトン選手との争いを制して、初めてドライバー部門で総合優勝を果たしました。
ホンダのエンジンを搭載するチームの選手が総合優勝するのは、1991年のアイルトン・セナ選手以来30年ぶりです。
F1日本GP決勝を前に観客の声援に応えるアルファタウリの角田裕毅選手
また、2021年のシーズンは、ホンダのパワーユニットを搭載するチーム「アルファタウリ・ホンダ」から神奈川県出身の角田裕毅選手が参戦しました。
角田選手は、ホンダのパワーユニットを搭載したマシーンでUAE=アラブ首長国連邦のアブダビで行われた「アブダビグランプリ」で4位に入るなど、7回目の入賞を果たして1年目のシーズンを終えました。
ホンダは、2040年に、世界で販売する新車のすべてをEV=電気自動車やFCV=燃料電池車にする方針を示しています。
復帰の理由について会社は、2026年からの新たなレギュレーションで、脱炭素につながる「合成燃料」の全面使用や、電気エネルギーの比率を高めてエンジンとモーターの出力を同等にすることが決まり、脱炭素を進める会社の方針と合致したためとしています。
ホンダの三部敏宏社長は記者会見で「ホンダは世界のレースに挑戦し、勝利することで成長してきた企業で、参戦の意義は技術と人を育てることだ。われわれが掲げる脱炭素の目標に向けて、レースから得られる技術やノウハウは、これからの電動車の量産の競争力に直結する」と述べました。
会見でアストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラ・ワン・チームのローレンス・ストロール会長は「ホンダはモータースポーツ界の巨人で、特にF1においてはすばらしい成績を収めてきた。2社が一緒になり、ホンダのパワーユニットを通じて大きな成果を収めることを心から楽しみにしている」と述べました。
ホンダが再びF1に参戦するのは、F1界の脱炭素へのシフトが鮮明になっていることが背景にあります。
脱炭素社会とは逆行するイメージもあるモータースポーツですが、現在のF1は、排気量を少なくした小型のエンジンとモーターを組み合わせたパワーユニットを採用し、環境対応を意識したレギュレーションをすでに導入しています。
さらに、2026年からの新たなレギュレーションでは、脱炭素につながる「合成燃料」の全面使用や、電気エネルギーの比率を高めてエンジンとモーターの出力を同等にすることが決まりました。
F1を統括するFIA=国際自動車連盟は、2030年にモータースポーツ競技で二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする目標を掲げています。
2026年からの新たなレギュレーションの決定を受けて、ホンダのほか、自動車メーカー各社の参戦表明が相次いでいます。
フォードは、2004年にF1から撤退していましたが、2026年のシーズンから、レッドブルとのチームでF1に復帰することを表明しています。
また、アウディは、初めてF1に参戦することを表明しました。
さらに、GM=ゼネラル・モーターズは、キャデラックブランドでの参戦を目指すことを表明しています。