特定の条件のもとで完全な自動運転を行う「レベル4」の車両は人口減少が進む地域では公共交通機関としての活用が期待されています。部分的な自動運転「レベル2」で走行する路線バスの運行サービスを行っている茨城県境町は「レベル4」に対応する新型車両を路線バスに導入する計画です。車両の仕組みや安全運行のポイントなど、町の取り組みをまとめました。
自動運転は技術の進み具合によって5段階にレベル分けされています。「レベル4」は、ルートや速度など一定の条件のもとでドライバーが不要となる完全な自動運転で、改正道路交通法の施行に伴って4月1日から解禁されました。
福井県永平寺町の第3セクターは、町道の一部の区間で緊急時には人間が操作する「レベル3」の車両を運行してきましたが、区間をさらに限定し、時速12キロ以内で運行するといった条件のもとで国から「レベル4」の認可を取得しました。
そして。5月21日、全国で初めてとなる「レベル4」の運行が始まりました。
特定の条件のもとドライバーが不要な完全自動運転となる「レベル4」は、人口減少が進む地域では公共交通機関としての活用が期待されています。
茨城県境町は「レベル4」に対応する新型車両を、公道を走る路線バスに導入する計画で、遠隔監視システムなどを提供する企業と覚え書きを交わすとともに試乗会が行われました。
広々とした車内で、曲がったり止まったりする時もスムーズで安心して乗れました。
車両は、8人乗りの小型のバスで、ハンドルとアクセルがなく、最高速度は時速20キロ、100メートル先を検知できる7つのセンサーと、8つのカメラで周囲の状況を確認するということです。
境町では、公共交通が脆弱で高齢者が免許を返納しにくい状況があり、2年半ほど前から部分的な自動運転「レベル2」で走行する路線バスの運行サービスを行ってきました。
レベル2では、運転手が乗車して監視しながら走行し、障害物などで設定したルートから外れる場合は操作が必要です。
まずは、病院やスーパー、町役場など町の中心部を走る往復5キロの区間で運行を始めましたが、この間、バス停を17か所まで増やし、往復8キロから9キロ余りの2つのルートで運行されるまでになりました。
公道を走る公共交通として安全な運行のカギとなったのは住民の理解だといいます。自動運転バスは、20キロの低速で、障害物を検知すると停車するなど渋滞の懸念もありました。
こうしたなか町では、バス停や待避スペースで追い抜きができるよう沿線の店などに敷地を借りたほか、バスの動線に路上駐車をしないよう啓発して理解を求めてきたということです。
最初は大丈夫かなと思いましたが、いまはもう心配はないです。免許返納した人が病院とかカフェとか、自動運転バスで出かけますし、私も老人会で利用します。少しゆっくりですが、やはり安全が大事です。
この2年半ほどで、自動運転中の事故はないということで、のべ1万7千人あまりが利用しています。
今後は新車両を秋ごろから「レベル2」の運転で公道を走らせ、将来的に「レベル4」に移行していきたいとしています。
茨城県境町 橋本正裕町長
「町には駅がなく、高齢化で免許返納したくても、返納できない町だった。自動運転車による事故よりも住み続けられるかという不安の方が大きかった。『レベル4』の運行をこの町でやることで、横展開で全国に広がっていくことを非常に期待している」
「レベル4」での運行が福井県で始まったことについて、自動運転に詳しい自動車ジャーナリストの清水和夫さんに聞きました。
〇レベル4運行開始
移動手段がないことで過疎化している地方もあるが、移動手段があれば若い世代が地方で暮らしてオンラインで仕事をすることもできる。そういう意味で地方が元気になるというインパクトは大きい。
〇普及に向けた課題
違法駐車とか歩行者がスマホを見ながら車道に入ってくるとか、無謀な自転車が走っているところでは自動運転では走れない。大事なことは自動運転車が社会に出たときに世の中の人たちがどう受け入れていくかで、その社会的受容性について、もっと市民や実証実験している町と一緒に議論していく必要がある。