1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. もっとニュース
  4. 物価高 株価や賃金上昇の動き 次の値上げは?くらしの影響をどうみる

物価高 株価や賃金上昇の動き 次の値上げは?くらしの影響をどうみる

  • 2023年5月22日

日経平均株価が5月19日にいわゆる「バブル景気」の時期以来の最高値を更新した一方で4月の消費者物価指数の上昇率が拡大しました。株価や物価の動き、生活への影響はどうなるのか、今後のポイントや見通しなどについて専門家に聞きました。

4月 消費者物価指数 3か月ぶり上昇率拡大

総務省によりますと、4月の消費者物価指数は生鮮食品を除いた指数が2020年の平均を100として2022年4月の101.4から104.8に上昇し、上昇率は3.4%となりました。
3月の上昇率の3.1%と比べると、0.3ポイント上がり、上昇率が拡大したのは、ことし1月以来、3か月ぶりです。

食料品などの値上がりが主な要因で、「生鮮食品を除く食料」は9.0%上昇し、1976年5月以来、46年11か月ぶりの水準となりました。

“賃上げを価格転嫁する動きが一段と”

消費者物価指数は食料などの「財」と「サービス」の価格の平均的な変動を調査したものですが、このうち、「サービス」は去年の同じ月より1.7%上昇しました。これは消費税率引き上げの影響を除くと、1995年3月以来、28年1か月ぶりの水準です。
「サービス」のうち「理美容サービス」は2.5%上昇しました。

民間のシンクタンク「ニッセイ基礎研究所」の斎藤太郎経済調査部長は、「サービス価格は賃金との連動性が高い。現時点ではサービス価格の上昇は外食が主な要因となっているが、今後は賃上げに伴う人件費の増加を価格転嫁する動きが一段と広がることが予想され、サービス価格の上昇ペースは非常に速いものとなる可能性がある」と指摘しています。

人手を確保するには賃金の引き上げも

企業の間では人手が足りないという声が多く聞かれ、人件費の上昇などを要因とした値上げの動きも出ています。
このうち首都圏で50あまりの美容室を運営する会社では4月1日からカットやカラーなどの料金の値上げを4年ぶりに行い、一律で10%引き上げました。

コロナ禍からの経済活動の再開で人手が足りない状況となっていて、需要に対応するためにも新たに従業員を採用することを計画していますが、人手を確保するためには時給の引き上げなども検討しなければいけないと考えています。

今後、賃上げをした場合には物価などの状況に応じて美容室の利用料金を再び値上げする可能性もあるといいます。

株価・物価の上昇をどう見る 専門家は

こうしたなか、日経平均株価は5月19日、終値が3万808円35銭と、いわゆる「バブル景気」の時期の1990年8月以来32年9か月ぶりの高値をつけました。その一方で、4月の消費者物価指数の上昇率が拡大しています。これらについて大和総研の熊谷亮丸副理事長に聞きました。

〇株価・物価上昇をどう見るか
日本は、新型コロナからの経済の正常化が各国に比べて遅れていた分だけいま回復の動きが目立っている。また、春闘で賃金が上昇し、消費などが活性化するというような、経済の好循環に対する期待が市場で高まっている。物価については引き続き高い伸びになっていて、賃金を上回る物価の伸びが続いている状況だ。

〇株価や物価の今後の動き
株価については、長めの時間軸で見ると、海外経済が心配な状況だ。アメリカで金融システムへの不安があり、ロシアのウクライナ侵攻もまだ続いている状況で資源価格などもさらに上がる可能性がある。当面、株価はどちらかというと上値を試すと見ているが、中長期で見ると海外経済の下振れに警戒する必要がある。また、物価は資源価格の高騰が一服してきたこともあり、日銀が考えているようにおそらく物価の上昇率は2%より小さくなるのではないか。

〇生活にはどのような影響
いま物価は上がっているが賃金の上昇がそれに追いついておらず、国民の生活が苦しくなっている状況だ。国民の生活実感がよくなるような経済の好循環が生まれるかどうか向こう半年から1年ぐらいで正念場を迎える。

〇今後のポイントは
まずは賃金の上昇が続くかどうかだ。今は賃金の上昇が物価の上昇に追いついていないため、国民の生活実感が厳しくなっている。日本企業がリスキリングなどを積極的に行って、労働生産性を高め持続的に賃金を上げることができるかどうかがポイントとなる。もう1つは海外経済。これが下振れすると、日本の成長率はマイナスに陥る可能性もある。アメリカの金融システムの問題や中国で高騰する不動産が下落しないかといった問題など、もっぱら地雷は海外経済のところに埋まっていると思う。

春闘 大手企業の賃上げ率 31年ぶりの高水準

経団連は従業員500人以上の大手企業を対象にことしの春闘での妥結状況などを調査し、1次集計として92社の結果を5月19日に公表しました。

それによりますと、定期昇給と基本給を引き上げるベースアップをあわせた月額賃金の引き上げ額は平均で1万3110円と、去年の1次集計を5680円上回り、2年連続で増加しました。
この結果、賃上げ率は3.91%と1992年の4.78%以来、31年ぶりの高い水準となりました。

経団連 新田秀司労働政策本部長(5月19日)
「賃上げの勢いを中小企業につなげるとともに来年以降も持続的にしていくことが重要だ」

ページトップに戻る