世界3大映画祭の1つ、フランスのカンヌ映画祭が開幕しました。
最優秀賞を競うコンペティション部門には、東京出身の是枝裕和監督の最新作のほか、渋谷を舞台に役所広司さんが主演を務めた、ドイツのヴィム・ヴェンダース監督の「PERFECT DAYS」(原題)がノミネートされ、賞の行方に注目が集まっています。
ことしで76回目となる世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭がフランス南東部のカンヌで開幕しました。
ことしのカンヌ映画祭には、最優秀賞にあたるパルムドールを競うコンペティション部門に、東京出身の是枝監督の最新作「怪物」がノミネートされています。
1つの出来事を、子どもや親、それに教師などさまざまな視点から描くことで「怪物」が何を意味しているのか問いかける作品で、音楽はことし3月に亡くなった坂本龍一さんが担当しました。
17日夜の上映会の前には、是枝監督や脚本を手がけた坂元裕二さんが、出演者の安藤サクラさんや永山瑛太さん、それに2人の子役と一緒にレッドカーペットに登場しました。
報道関係者向けの上映会で「怪物」を見たポーランドの映画関係者
「これまでの是枝監督の作品を見ているが、新しいスタイルの作品で、子役の演技も素晴らしかった。是枝監督は、日本らしい話のなかに普遍的なものが描かれているため、誰もが好きになるのだと思う」
「怪物」に母親役で出演した安藤サクラさんは、上映後に拍手がわき起こったことについて「地響きのような拍手で圧倒された。この瞬間の是枝監督の姿を目に焼き付けようと、ずっと監督を見ていた」と話していました。
また、教師役の永山瑛太さんは「監督や関係者の皆さんに感謝したい。『怪物』という作品に携わることができ、今まで俳優をやってこれて本当に良かったと感じた」と話していました。
そして、脚本を手がけた坂元裕二さんは「面白いストーリーを作るために、登場人物が物語に振り回されず、ひとりひとりが生きている物語を作りたいと心がけた。特に子どもが出る物語なので、うそのない子どもたちを描きたいと思っていた」と話していました。
是枝裕和監督は「上映後の皆さんの顔がとても輝いていて、いい上映だったと感じた。とても良かった」と、満足な様子でした。
そして、今回の作品を通して伝えたいことは何かと尋ねられると「特にこう感じてほしいとは思っていない。見た人で受け取り方は違う。そして違うということが、いい映画なんだと思う」と話していました。
また、作品の音楽を担当し、ことし3月に亡くなった坂本龍一さんとのやりとりについては映画音楽として坂本さんの最後となった作品の制作エピソードを次のように明らかにしました。
是枝裕和監督
「仕事を依頼した時は、病気で難しいかもしれないと思っていたところ、『映画全体を担当する体力は残っていないが、すでに1、2曲浮かんだのでできたら送る』と返事があった」
ことし、最優秀賞のパルムドールを競うコンペティション部門には、是枝監督の最新作「怪物」のほか、東京・渋谷を舞台に役所広司さんが主演を務めた、ドイツのヴィム・ヴェンダース監督の「PERFECT DAYS」(原題)がノミネートされています。
このほか、北野武監督の6年ぶりの新作「首」も、2021年に新たに設けられた「カンヌ・プレミア」部門で上映される予定で、注目を集めています。
コンペティション部門の受賞作品は、日本時間の28日早朝に発表される予定です。
カンヌ映画祭のコンペティション部門にノミネートされた映画「怪物」は、小学生どうしのよくあるけんかから見えてくるある事件を描いた物語です。
子どもたちや親、そして学校教師などさまざまな視点から1つのできごとを描くことで「怪物」が何を意味しているのか問いかける作品となっています。
母親の役を安藤サクラさん、教師の役を永山瑛太さんが務め、2人の小学生を黒川想矢さんと柊木陽太さんが演じています。
是枝裕和さんが監督し、脚本を、映画「花束みたいな恋をした」などの作品で知られる坂元裕二さんが手がけています。
自身で脚本を担当することが多い是枝監督が別の脚本家の作品を手がけるのは映画では1995年の「幻の光」以来、2作目となります。音楽はことし3月に亡くなった坂本龍一さんが担当していて、映画音楽としては、坂本さんの最後の作品になるということです。
是枝裕和監督(60)は、大学を卒業したあとテレビ番組の制作会社に入り、多くのドキュメンタリー番組を手がけて、ギャラクシー賞の優秀作品賞など数々の賞を受賞しました。
1995年に「幻の光」で映画監督としてデビューし、ベネチア国際映画祭の撮影賞にあたる「金のオゼッラ賞」を受賞して話題を集めました。
2004年には、親に捨てられたきょうだいがたくましく生き抜く姿を描いた「誰も知らない」で、主演の柳楽優弥さんが日本人として初めてカンヌ映画祭の最優秀男優賞を受賞し、ドキュメンタリータッチの作風と制作手法が高く評価されました。
2018年のカンヌ映画祭では、年金をあてに暮らしながら、万引きで足りない生活費をまかなう家族を描いた「万引き家族」が、日本の作品としては21年ぶりに最優秀賞のパルムドールを受賞しました。
去年(2022年)は、初の韓国での監督作品となる映画、「ベイビー・ブローカー」で主演のソン・ガンホさんがカンヌ映画祭の最優秀男優賞を受賞するなど、世界を舞台に活躍する映画監督として実績を重ねています。
是枝監督の作品がカンヌ映画祭のコンペティション部門にノミネートされるのは「ベイビー・ブローカー」に続いて2年連続、7回目です。
「PERFECT DAYS」(原題)は、ドイツの世界的な映画監督、ヴィム・ヴェンダース監督が東京・渋谷の公共トイレを舞台に撮影した作品です。
公共トイレの清掃員として働く主人公の男性がある日、思いがけない再会を果たしたことをきっかけにその過去や思いが明らかになっていく物語です。
この作品は、ヴェンダース監督が東京・渋谷区で実施された誰もが快適に使用できる公共トイレを設置するプロジェクトに共感したことがきっかけで製作され、撮影はすべて東京都内で行われました。
寡黙できちょうめんな清掃員の主人公の役を、俳優の役所広司さんが演じています。
また、脚本はヴェンダース監督と、クリエイティブ・ディレクターで小説家の高崎卓馬さんが共同で手がけています。