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暑熱順化とは?熱中症リスク減 いつから?方法は?ポイント知って対策を

  • 2023年5月18日

17日は急な暑さとなりましたがこれからさらに暑くなる季節に向けて必要となるのが「暑熱順化(しょねつじゅんか)」で、「体を暑さに慣れさせる」ことです。
本格的な夏を前に、軽く汗をかく運動や入浴などを習慣化し「暑熱順化」を進めることで熱中症のリスクを減らせるため、そのポイントを知って対策を行うことが大切です。

東京で初の真夏日

気象庁によりますと、関東甲信は17日も高気圧に覆われて晴れ、山を越えた風が吹き下ろす際に乾燥して気温が上昇する「フェーン現象」の影響も加わり広い範囲で夏のような厳しい暑さとなりました。

最高気温は群馬県神流町と山梨県の甲州市勝沼で34.8度、埼玉県秩父市で34.6度、栃木県佐野市で34.5度、茨城県古河市で34.3度、千葉県市原市の牛久で34.1度などとなり、東京の都心でも31.6度と初めて真夏日となりました。

暑さに慣れさせる「暑熱順化」

これからさらに暑くなる季節に向けて必要となるのが、体を暑さに慣れさせる「暑熱順化」です。

日本気象協会は熱中症になる人を減らすため専門家の監修で「暑熱順化」の詳しいポイントなどをまとめています。
「暑熱順化」は気温の高い日が続くと自然に進みますが、ここ数日のように涼しい日が続いたあとに急に暑くなるときはまだ進んでいないため、意識的に行う必要があるということです。

具体的な方法は?

具体的な暑熱順化の方法や目安はウォーキングは30分、ジョギングは15分で、頻度は週に5日程度が望ましいとしています。
ひと駅分歩くことやできるだけ階段を使うなど、意識して少し汗をかくことが大切です。

通勤や買い物など日常で取り入れやすいのがサイクリングで、1回30分、週3回程度が望ましいということです。

ほかにも屋内で行う軽いストレッチは1日30分を週に5日から毎日だとしています。

いずれも、体が汗ばむ程度の無理ない範囲で実施することが大切なほか、厳しい暑さとなった日には行わないなど時間帯やそのときの環境に注意して行う必要があるということです。

入浴については、シャワーだけでなく湯舟につかって適度に汗をかくことが大切だとしています。

暑熱順化前線 東京は5月中旬目安

また、地域ごとに暑熱順化を始める時期の目安にしてもらうため、「暑熱順化前線」を独自に算出していて、ことし、東京や名古屋、それに大阪では「5月中旬」を開始の目安としています。

日本気象協会 泉澤里帆さん
「まさに今の時期から暑熱順化が必要なタイミングとなっている。暑熱順化には個人差があるが2週間ほどかかると言われているため、今の時期から暑さに慣れるための運動や軽めのストレッチ、入浴を始めて徐々に暑さに体をならしていくことが大切だ」

一方、体が暑さに慣れても気温の変化などで戻ってしまうこともあるということで、「一度運動や入浴で暑熱順化が進んでも気を抜かず、引き続き、熱中症に注意してほしい」と話していました。

ラグビーの動きで暑熱順化

猛暑で知られる埼玉県熊谷市では、ラグビーの動きを取り入れた運動を制作し、「暑熱順化」を呼びかけています。
この運動は、熱中症の危険が高まる前に身体を動かして「暑熱順化」を進めてもらおうと熊谷市が企画し、地元のラグビーチーム、「埼玉パナソニックワイルドナイツ」の元選手が作りました。

ラグビーとエクササイズをかけて「熊谷ラグササイズ」と名付けられ、フォワード編とバックス編の2つのバージョンがあります。

市のホームページなどで、それぞれ10分ほどの動画が公開されています。
それぞれ6種類の運動が設定されていて、ラグビーで実際に行う動きに近い動作で体を動かします。

・ボールを横に投げるような動作で両手を動かす運動
・味方選手を上に持ち上げるような動作をする運動
・相手にタックルするような動作で体と足を前に出す運動
・四つんばいになったあとスクラムの時のように膝を少し浮かすような運動 など

荒木さくらアナウンサーも市の職員に指導を受けながら体験しましたが、10分余りの運動で、じわりと汗をかいたほか、途中「きつい」などと話していました。

一方、市は、この運動中もこまめな水分補給をし、室内で行う場合は換気することや体調に変化が合った場合には運動を中止するよう呼びかけています。

熊谷市スポーツタウン推進課 滑和也さん
「ラグササイズはメニューの負荷を自分で調整しやすいのが特徴だ。小さい子どもからお年寄りまで幅広い人に知ってもらって、『暑熱順化』という考え方を広げていきたい」

消防の訓練方法は

「暑熱順化」を業務で取り入れているのが、真夏でも火災現場などに駆けつけ、重装備で活動しなければならない消防隊員たちです。前橋市の消防局は毎年この時期、隊員たちの「暑熱順化」の機能を高めるための訓練を週に1度を目安に行っています。

17日は市内の消防署で、実際の訓練と同じ実演をしてもらいました。隊員たちは、防火服やヘルメット、手袋を身につけボンベを担ぐ、実際の活動のときと同じ装備で訓練に臨みます。装備の重さは20キロにものぼるということです。

まず、5階建ての建物で火災が発生し複数の人が逃げ遅れた想定の訓練が行われ、およそ20分にわたってホースでの放水をしたり、はしごをのぼって人を模した人形をベランダから救出したりしていました。

このあと、隊員たちは運動靴に履きかえ、ボンベを背負った重装備のまま、敷地内を20分ほどランニングします。訓練で熱中症にならないよう、途中、水分補給などは行います。

隊員たちは暑さで時折、険しい表情をみせ、したたり落ちるような汗をかいていました。

30代
男性隊員

結構汗をかきました。夏本番に向けてしっかり体を慣らすよう意識しています。

 

20代
男性隊員

実際の火災現場ではもっと厳しい暑さに耐えないといけないので、こういう訓練は大事だと思います。

 

前橋市消防局は隊員の熱中症のリスクを減らすため、10年ほど前から暑さが本格化する前に「暑熱順化」の訓練を始めていますが、近年は暑くなり始める時期が早くなり、ことしは4月中旬から訓練を行っているということです。

前橋市消防局中央消防署 星野光広副署長
「過去には隊員が熱中症で倒れるケースもあったので、しっかり体力をつけて活動に支障が出ないよう訓練をしている。市民の命を守る役目を果たせるよう、日頃から努力していきたい」

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