1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. もっとニュース
  4. 小学校の校庭 くぎがなぜ?児童が大けが 杉並区 緊急点検で1350本

小学校の校庭 くぎがなぜ?児童が大けが 杉並区 緊急点検で1350本

  • 2023年5月15日

東京・杉並区の小学校の校庭で、児童が転んだ際に地面から突き出ていた「くぎ」によって大けがをしました。運動会で目印などを固定するために打ち込まれたものが、長い間、放置されていたとみられます。校庭でくぎを見たことがあるという方も多いと思いますが、どのような管理が必要なのでしょうか。都内の学校の取り組みや専門家が示したポイントなどをまとめました。

校庭で転倒 地面からくぎの一部

杉並区教育委員会などによりますと4月13日、区立荻窪小学校の校庭で体育の授業中に児童が転倒した際、地面からくぎの一部が突き出ていて、左ひざを切る大けがをしました。くぎは長さ12センチほどで、このうち地面から数ミリが突き出ている状態でした。

このため、学校は校庭の使用を禁止し、業者に依頼して金属探知機で調べたところ、あわせて544本のくぎやフックが見つかりました。多くは腐食するなど長期間、放置されたものとみられています。

くぎなどはこれまでに撤去され、校庭は使える状態になっているということで、学校は今後、くぎを使わずに対応するなど、安全管理に努めるとしています。

くぎは移転後の十数年の間に?

荻窪小学校の校長によりますと、荻窪小学校の校舎は14年前の2009年に現在の場所に移りました。校舎の移転の際に校庭も整えられたため、くぎが打ち込まれたのはその後の十数年の間のことだとみられています。

くぎは運動会や体育の授業で整列する際やダンスの立ち位置、ハードルを置く位置などの目印として打ち込まれることが考えられるということです。
くぎは運動会や一連の授業のあとには撤去することになっていましたが土がかぶるなどし、見落とした可能性もあるとしています。

杉並区 緊急点検で くぎなど1350本

杉並区の教育委員会によりますと、区立の小中学校や幼稚園などの校庭や園庭の緊急点検では、これまでに荻窪小学校を含め、あわせて43の学校と園で速報値として1350本のくぎなどが見つかったということです。いずれも、すでに撤去したということです。

教育委員会は「5月から多くの学校や園では運動会などが予定されていることから、その前に再度の点検をするよう通知した。安全確保に万全を期したい」としています。

葛飾区でも計20校から350本

葛飾区教育委員会によりますと、杉並区での事故を受けて区内の小中学校など73校の校庭を目視で調べたところ、小学校18校と中学校2校のあわせて20校で、あわせて350本のくぎなどが見つかったということです。

大きさは5センチほどから長いもので20センチほどで、運動会などの際に、目印のために打ち込んだまま、放置されていたとみられるということです。

これまでに子どもたちがけがをしたという報告は無く、すべて取り除いたということです。

校庭からくぎ さらに拡大

さらに31日には3つの区の小中学校の校庭からも数百本のくぎが新たに見つかりました。

江東区では、区の教育委員会が区立の小中学校などの校庭を目視で調査したところ、5月30日までに21か所の校庭からあわせて772本のくぎや金属片が埋まっているのが見つかりました。
北区では区立の7校の小中学校の校庭からあわせて277本のくぎやフックが見つかりました。また、江戸川区では区立の3校の小中学校の校庭からあわせて187本のくぎが見つかったということです。

各区の教育委員会は今後、金属探知機を使って地中に埋まっているくぎがほかにもないか確認を進めるということです。

運動会 くぎの管理をどうする

春の運動会シーズンで、学校現場はどのように対応しているのでしょうか。取材に向かった都内の小学校では5月20日に行われる運動会に向け、10日ほど前に競走のスタート位置や整列の際の目印として色がついたテープとともに長さ9センチのくぎを合計68本、校庭に打ち込みました。

学校では校庭のどのポイントに何本埋め込んだのか、図に残して記録していました。そして、この図をもとに3日に1回、くぎが飛び出していないかなど教員が点検しているということです。

また、撤去も迅速に行います。運動会を終えたあとはその日のうちに撤去するといいます。教員だけでなく保護者にも協力してもらい、本数を確認しながらくぎ抜きを使ってすべて撤去するということです。

学校の安全対策について詳しい名古屋大学大学院の内田良教授に必要な対応を聞いたところ、くぎには目立つ印をつけて紛失しないようにすること、使ったらすぐに撤去すること、教員の人手不足が深刻なので、保護者や地域のボランティアなどとも協力して行うことなどといったポイントを挙げています。

広がる校庭の点検 “安全管理の徹底を”

杉並区の小学校で子どもが大けがをしたことを受けて、ほかの自治体でも緊急の点検が進められています。

【足立区】
このうち、足立区は、5月11日付けで区内のすべての小中学校に校庭の安全点検を行うよう通知を出しました。過去に取り付けたくぎやフックが埋まっていないか、教職員が校庭に横一列に並んで一斉に確認するなど、点検の具体的な方法も示したということです。
足立区では、5月23日までに報告を求めるとともに、今後、保育園なども含め金属探知機で点検するなど追加の対応を調整しているということです。

【世田谷区】
また、世田谷区では、これまでも月に1回は校庭の安全点検を行うようにしてきましたが、今回の件を受けて改めて校庭の点検を依頼したということです。

【豊島区など】
豊島区でも土の校庭の学校に点検を依頼しました。このほかの自治体でも今後、校庭の点検を通知するというところがありました。

事故を受けて文部科学省は5月12日、各学校で安全点検が確実に行われるよう、全国の教育委員会などに通知しました。通知では、校庭などでくぎやガラスなどの危険物がないかや、ブロック塀やフェンスに破損がないかなどについて点検をするよう促しています。

文部科学省は「適切な点検が行われるようこれまでも周知してきたが春の運動会シーズンも控える中、改めて、安全管理を徹底してもらいたい」としています。

ページトップに戻る