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バンドあきらめ渋谷で料理教室 林健一さん “優しい家庭料理で笑顔にしたい“

  • 2023年3月8日

JR渋谷駅から10分ほど歩いた渋谷区松濤エリア、いわゆる『奥渋』のマンションの1室で開かれている料理教室。初心者でも1人で気軽にレシピや調理方法を学ぶことができます。

「優しい家庭料理で“ちょっとだけ”人の人生を変えたい」

代表の林健一さんに教室をはじめた意外なきっかけや料理を教えることのやりがいについて話を聞きました。

“奥渋”の人気料理教室

JR渋谷駅から10分、京王井の頭線の神泉駅から5分ほど歩いた“奥渋”のエリアにある料理教室「彩りクッキング」。代表をつとめる林健一さん(61)は10年ほど前に教室を始めました。

林健一さん
「料理を作ったことのない人でも安心して通える教室にしたいと思いました。1人で具材を切って、仕上げの味付け、盛りつけまで行い、技術を身につけてほしいですね」

バンドの夢 追いかけた20代

大阪府出身の林さん。
実はバンドのドラマーとしてプロのミュージシャンを夢見ていたといいます。
高校時代に吹奏楽部で打楽器を担当してからフュージョンと呼ばれるジャンルのとりことなり、卒業後、プロを目指します。

ライブハウスで演奏したり音楽教室で教えたりしていましたが、26歳で夢をあきらめました。

「ライブハウスで知り合いになった仲間とバンドを組んで頑張ったのですが厳しかったですね。とにかくお金がなく、その日に食べるものもありませんでした。

そんなあるとき、音楽教室で子どもにドラムをたたくスティックを渡してみると、センスがよくて難しいリズムがすぐに出来ました。

『何でできるの?』と聞いたら、『何でできないの?』って不思議がられました(笑)
『これは才能ないな』と感じ、やめました

料理教室の原点 あきらめた“ドラム”

バンドをやりながらイタリアンを中心とした洋食店でアルバイトをしていた林さん。
ミートソースパスタが得意だったといいます。ほかに進むべき道も特に思いつかず、まかない飯もあり、食べることには困らないと考え、料理の道に進みます。

「バンド時代と比べると、これ以上、人生落ちることはないかなと思っていました。
料理は見て盗めという世界でした。自己流でやっていましたが、ある日、包丁さばきについて『よくできるな』と褒められました」

「ドラムのスティックのリズムに似ていて、逆に『何でできないの?』と思いましたね(笑)

ランニングで乗り越えた苦悩の時期

料理人として着実に力をつけた林さんは独立を決断します。
音楽教室などでの指導者の経験をいかし、飲食店ではなく、料理教室をはじめようと考えたといいます。場所はとにかく人が多いところにしようと電車の乗降者数を調べ、東京・渋谷を選びました。

「50歳で銀行から借金してはじめました。最初、無料の体験レッスンをはじめたら好評でしたが、みんな晩ごはんを食べにきている感覚で、全然定着しなかったですね(笑)ひまでやることがなさすぎて頭がどうにかなりそうで、ランニングは無料だと思い、ひたすら代々木公園を走っていました。汗をかいて、気分転換にもなり、精神的的にもよかったですね(笑)」

“ちょっとだけ”料理で人生が変わる

教室をはじめて1年以上が経過したころから少しずつ経営が安定していきました。
その原点には忘れられない経験があるといいます。

「生徒のなかに料理が苦手な人がいました。どうしてなのかなと思ったら、幼い頃に親と過ごしたことがなく、家庭料理を知らないと。どう教えたらいいかと悩みましたが、いつの日か教室の味が“懐かしい家庭の味”になるかもしれない。親の代わりにはなれないけど、料理だけはしっかり教えてあげたいと考えました。最初はフランス料理も教えていましたが、いまは家庭料理中心です」

「料理で人生がちょっとだけ変わる。その瞬間に出会えたときが一番、うれしいですね

おいしさ+優しい料理で笑顔に

コロナ禍では教室も十分に開催できず、物価高では食材の高騰にも直面していますが、料理を通じて人の食生活に関わる日々にうれしさを感じているといいます。

「コロナ禍では売り上げが半分になった時期もあり不安でしたが、バンド活動中にどん底を見た経験から、人生は一度きりで後戻りできない、いまできることをとにかくやるしかないと思いました」

「厳しい時代かもしれませんが、おいしく優しい家庭料理で人を笑顔にできるように頑張りたいです」

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