新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に移行することに伴い、都内の病院のなかには、新型コロナの対応を縮小し、本来の役割のひとつである重い病気の患者の治療に重点をおくよう見直しを進めているところもあります。
東京・品川区にある昭和大学病院は、国内で新型コロナの感染拡大が始まった3年前から、優先的に新型コロナの患者の対応にあたっていて、東京都の要請で軽症から重症までの患者を受け入れる専用病床を最大50床以上確保しています。
一方で、この病院は「特定機能病院」と呼ばれる先進医療や難易度の高い手術など高度な医療を提供する役割を担う病院のひとつに指定されています。
いま、病院では、新型コロナの感染症法上の位置づけが「5類」に移行されるのに伴い、医療体制の見直しを進めています。
2月1日、病院内で開かれた会議では、新型コロナの専用病床を段階的に縮小し、その分、新型コロナ以外の重い病気の患者の治療に医療資源を振り分けることを確認しました。
背景には、優先的に新型コロナの患者に対応するなか「特定機能病院」の役割を十分に担うのが難しいことがあるといいます。
特に感染が拡大した時期には、38床ある集中治療室のおよそ3分の1の病床を新型コロナの重症患者に割り当てたため、新型コロナ以外の重い病気の患者の手術を延期したり、入院を断ったりするケースが相次いだということです。
昭和大学病院 相良博典病院長
「社会の求めに応じて新型コロナの患者の対応を優先してきた部分もあり、この3年間、新型コロナへの対応と、特定機能病院としての役割をいかに両立させるか、常に難しさを感じてきました」
一方、この病院では新型コロナの対応を縮小するには「5類」への移行に伴い、一般の医療機関での新型コロナ患者の診察や入院の受け入れが進むことが必要になると考えています。
しかし、新型コロナの診療の経験が少なかったり、感染拡大を防ぐ対策が整っていなかったりする病院も少なくないことに加え、「5類」への移行に伴い、保健所が担ってきた入院調整を医療機関などの間で行うようになれば、入院が難しい患者が発生するおそれもあるとして懸念も抱えています。
相良博典病院長
「本来の高度医療の役割を果たそうと思っても、一般の医療機関で新型コロナの入院患者の受け皿が増えないことには難しい。一般の医療機関の新型コロナへの対応が一斉に切り替わるとは考えられないので、診療方法などステップを踏んで段階的な医療体制の移行を進めてほしい」