渋谷で長年、親しまれてきた「東急百貨店本店」がきょう閉店し、55年の歴史に幕を閉じます。
これまで通い続けた人や最後まで接客にあたった店員はどのような思い出があるのでしょうか。
また、跡地の再開発によって渋谷がどのような街になることを願っているのでしょうか。閉店当日のドキュメントとともにまとめました。
(聞き手 浅野里香アナウンサー)
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開店時間の1時間近く前から東急百貨店本店の正面入り口の前には列が出来はじめ、30分前にはすでに70人ほどの人たちが並んでいました。
百貨店のスタッフが寒いなか行列をなす人たちのことも考え、開店時間の前に入り口のとびらを開き、買い物客が店内に入っていきました。
なぜ、行列に並んだのか。先頭の男性に話を聞きました。
良く来られていたんですか?
渋谷区在住 60代 男性
「家から一番近い百貨店で、週に1回ほど必ず来ていました。30年以上前から通っていたので本当に残念です。
社会人になりたての頃は、屋上のビアガーデンでよく同僚と飲みましたね。家族とはいわゆる『デパ地下』に通いました。天ぷら、焼き鳥、パン、手軽においしいものが購入できて本当に便利でしたね。舞台などが好きなので、再開発後も、文化の発信に積極的な施設になってほしいです」
開店から1時間もたたないうちに店内は大勢の買い物客が訪れました。
5階の婦人用の靴売り場では、ベテランの店員と常連客があいさつを交わし、別れを惜しんでいる姿がみられました。
どうしてきょう来られたんですか?
都内在住 70代 女性
「若い頃から通っていたので最終日にもう一回だけ来ようと思いました。日用品や靴、洋服など、ほとんど東急本店で買い物をしていたので、これからどうしたらいいのか困っています(笑)
デパートはインターネットと違って、買い物しやすいと思っていたので残念ですね。本当にこれまで助けられました。感謝しています」
1907年創業で100年以上の歴史がある「銀座ヨシノヤ」。
東急本店で10年以上、接客にあたってきた山崎明さん(68)に話を聞きました。
いま、どのようなお気持ちですか?
当日になっても、まだ、実感がわきません。
終わってしまう寂しい気持ちはありますね。
忘れられない出来事はありますか?
接客についてお客様から苦情をいただいたことですね。
その経験を糧にして、自分も少し成長できたと思います。
山崎さん
「デパートの接客は1人だけではうまくいきません。まわりの店舗のスタッフさんとも調和して対応することの大切さを知りました。
いかにお客様に目を向け、意見を聞き、何を望んでいるのか共有する意識が大事で、『垣根のない接客』を心がけてきました。
再開発が進む渋谷の街ですが、若者からお年寄りまで、いろんな人が仲よく、共存できる街になってほしいです。ここでお会いできるのは最後ですが、またどこかでお会いできる日が来ればいいなと思います」
跡地には、商業施設のほか、ホテルや賃貸住宅などを備えた地上36階建ての複合施設が2027年度の完成を目指して建設されることになっています。
東急百貨店の親会社の東急によりますと、新たに建設される複合施設は、高さが164メートル、地上36階、地下4階建てで、低層階に商業施設を、中層階にはアジアで展開する高級ホテルを設けるとしています。
一方、隣接する「Bunkamura」は、4月9日まで営業を続けます。その後、オーチャードホールを除いて、4月10日から長期休館となり、再開時期は2027年度中です。
私たちは、東京・渋谷に根ざしたみなさんの「地域ド密着」の取り組みや課題を取材しています。
渋谷駅前では大規模な再開発が進み、スクランブル交差点やセンター街などには世界中から多様な人々が集まっています。原宿からは常に新しいファッション、文化が生まれています。
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