1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. もっとニュース
  4. コロナ“特例貸付”返済困難 免除や猶予は?緊急小口資金 総合支援資金

コロナ“特例貸付”返済困難 免除や猶予は?緊急小口資金 総合支援資金

  • 2023年1月18日

国の「緊急小口資金」と「総合支援資金」は、特例として新型コロナウイルスの影響で失業した人などにも対象が広げられ、この返済は、1月以降、順次、始まります。ただ、返済免除の申請が3分の1に上っているほか、免除の対象者以外からも返済が見通せないという相談が寄せられているということです。特例貸付の状況のほか、必要な対応についての専門家の見方などをまとめました

特例貸付 返済に関する問い合わせが急増

東京都の大田区社会福祉協議会には、1月に入って、特例貸付を利用した人からの返済に関する問い合わせが急増していて、専門の部署を設けて電話や面談に応じています。
1日におよそ50件の連絡が寄せられ、多くが手続きなどの問い合わせですが、「返済の見通しがたたず免除や猶予などができないか」という相談も少なくないということです。

返済 1月以降順次始まる

当面の生活費を無利子で借りられる国の「緊急小口資金」と「総合支援資金」は、3年前の感染拡大以降、特例として、新型コロナの影響で失業した人や収入が減った人にも対象が広げられました。2人以上の世帯の場合、最大200万円を借りることができて、返済は1月以降、順次、始まります。

失業 体調悪化…返済のめどがたたない人も

制度を利用したものの返済のめどが立たないという人もいます。3年前の2020年、コロナ禍で会社が事業を続けられなくなり失業した埼玉県入間市で暮らす小久保晴美さんは、複数回にわたり、「緊急小口資金」と「総合支援資金」で合わせて110万円を借りました。

このお金と月に13万円ほどの年金で、生活費のほか、残っている住宅ローンや、体調の悪化に伴う治療費などを支払っていますが、新たに収入を得る手立てもないため厳しい生活が続いています。

特例貸付の一部の返済が1月末から始まりますが、年金収入があるため返済免除の対象にはならず、月に1万2000円の返済は難しいということです。

弁護士 “免除要件の緩和や猶予制度の周知を”

特例貸付の返済の開始を前に小久保さんが埼玉県内の弁護士事務所に相談したところ、弁護士からは仕事が見つかっていない場合や病気にかかっている場合などは返済を猶予できる可能性があると告げられ、具体的な申請の方法を教えてもらいました。
また、支払いを遅らせる間に体調に無理がない範囲で仕事を探すようアドバイスを受けたということです。

相談を受けた猪股正弁護士
「生活の再建に向けて手伝っていきたい。大変な状況の人はたくさんいるので、国には免除の要件の緩和や猶予の制度の周知に努めてもらいたい」

免除申請83万件 免除の対象者以外からも相談

厚生労働省によりますと特例措置が終わった2022年9月までの決定件数はおよそ335万件、1兆4200億円あまりに上ります。

このうち2022年3月までに申請があったおよそ250万件の返済が1月以降、順次、始まります。
住民税が非課税の世帯などは返済が免除されますが、貸し付けの窓口となった全国社会福祉協議会によりますとおよそ3分の1にあたる83万件で免除の申請が出されています。

また、免除の対象者以外からも、再就職や収入の回復が難しく返済が見通せないといった相談が寄せられているということで、借りた人の生活をどう再建するのかや資金の回収をどう進めていくのかが課題となりそうです。

返済困難 “生活再建や経済的自立への支援が必要”

特例貸付の返済の免除の申請や返済が難しいという相談が相次いでいることやコロナ禍での「特例貸付」について、生活困窮者の支援に詳しく国の審議会の委員も務める大阪公立大学の五石敬路准教授は次のように話しています。

〇返済困難 必要な対応は
生活困窮の時間が長ければ長いほどメンタルや身体的な健康を崩し再就職もできなくなって困窮の度合いが増していくということに気をつけないといけない。返済の免除申請をした3割という数字よりもはるかに多くの人々が返済困難になる可能性がある。生活再建や経済的な自立に向けた支援が必要だ。そのためには圧倒的に数が足りていない支援員の増員整備が必要だし、働きたいけど働けないという人も多いので福祉行政と労働行政の連携も必要になってくる。

〇制度の検証を
困窮のおそれがある人に迅速に対応できた点は評価できるが、一時的にしのげても結局、生活基盤が再建できておらず、その先送りした課題が今後、押し寄せてくる。1兆4000億円を使っている訳で、どういう人がどれくらい支援を受けたのか、どういう生活再建が必要だったのかという情報を国が明らかにしないと国民の理解が進まないのではないか。今後、合理的な施策を立案するためにも制度を検証すべきだ。

ページトップに戻る