来年4月に発足するこども家庭庁の予算案が公表されました。
ここには、虐待などの事件や、人手不足に悩む保育に関わる予算案も含まれています。
保育現場や専門家はどうみているか、取材しました。
まずは、予算案の内容です。
保育士の負担軽減
規模の大きい保育所については加配できる保育士を2人に増やすことができるよう従来の加算を拡充するため、13億円が盛り込まれました。
国の基準では、保育士1人が見る子どもの数は4歳児以上の場合、30人までとされていますが、これにより1人が見る子どもの数を25人にまで減らすことができるようにします。
空き定員の活用
保育所で空きとなっている定員を活用し、ふだん保育所や幼稚園などを利用していない未就園児を定期的に預かる事業として、2億円が計上されました。
ほかの子どもと過ごして遊ぶことで子どもたちの発達を促すほか、保護者に対しても定期的な面談などを実施し、育児疲れなどがある場合は必要に応じて関係機関と連携した支援を行うとしています。
配置基準というのは、子どもの人数に対して必要な保育士の人数の最低基準です。
1948年に定められたあと、一部見直しが行われました。
現在の基準は次の通りです。
・0歳児が子ども3人に対し、保育士1人
・1歳児と2歳児が6人に1人
・3歳児が20人に1人
・4、5歳児が30人に1人
特に4、5歳児の基準は70年以上そのままで、保育現場の実態に対応できていないとして見直しを求める声が上がり続けています。
国は2015年に保育制度を変更して3歳児について一部、加算を創設した際に、1歳児や4,5歳児についても必要な予算が確保でき次第、改善するとしていました。
しかし、内閣府によりますと4,5歳児の配置基準を仮に30人から25人にした場合、国と地方の負担分であわせて600億円が必要になるということで基準の見直しにあたっては財源確保が大きな課題となっています。
今回、保育士の負担を軽減するために拡充された「チーム保育推進加算」は配置基準を超える保育士を配置した場合などに1人分の人件費相当額を受け取ることができるものです。
主に4歳児と5歳児を対象に、保育士を2人まで加配できるようになり、これにより、「1人の保育士に対し子ども25人」の状態にまですることができるようになります。
ただ、対象は、定員が121人以上の比較的規模が大きな保育所で、全体の18%程度にとどまるということです。
国が示したこの予算案について、保育所からは現場の負担軽減に向けてさらなる対策を求める声が聞かれました。
千葉県八千代市の認可保育所では、市内の待機児童数の増加を受け、定員より2割近く多い187人の子どもを預かっています。
このうち、4歳児のクラスは35人で、国の基準よりも多い3人の保育士を配置しています。
それでも取材に訪れた日も、走り回っている子どもやけんかになって泣いている子どもたちの対応に追われていました。
国の基準よりも多く配置した保育士の人件費は自治体の補助のほかは園が自前で捻出していて、物価高によって光熱費なども高騰する中、これ以上の増員は難しいとしています。
緑が丘はぐみの杜保育園 大越紀明 園長
「保育士の加配について国が対応してくれることはありがたいですが、保育士の負担の大きさはまだまだ解消されないと思います。子どもたちに余裕を持って接するためにも保育士の配置基準を抜本的に見直してほしいです」
4歳の子どもを預けている30代の母親
「保育所での事故や虐待などのニュースを聞き、不安になります。園の中の様子は親からは見えないだけに、保育士の先生がたが子どもたちにゆとりを持って接することができる体制を国には整えてほしいです」
今回の予算案は、今の厳しい保育現場の改善につながるのか。保育に詳しい玉川大学の大豆生田啓友教授にも話を聞きました。
玉川大 大豆生田啓友 教授
「限られた保育士の数で長時間保育や新型コロナ感染対策への対応を行っており業務負担によるストレスが不適切な保育など保育を巡る問題が起きる背景のひとつとしてあげられる。
保育士の配置基準は長年、変わっていないため、現状に即した対応ができなくなっている。
今回の国の加配は一部の効果があると思うが、全体の課題解決には至らず、4、5歳だけではなく、1歳児なども含めて配置基準そのものを見直し、保育の質の向上に目を向ける必要がある」