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保育園児への虐待 「不適切保育」相次ぐ背景は?再発防止に向けて

  • 2022年12月12日

保育園児への虐待が相次いで明らかになっています。
静岡県裾野市の保育園での事件、さらに仙台市の保育所で園児に下着姿のまま食事をさせる、富山市の認定こども園では園児を狭い倉庫に閉じ込めるといった不適切な保育が次々と発覚しました。
保護者などで作る民間団体は12日、厚生労働省を訪れ不適切な保育に関する相談窓口を自治体に設置することなどを求める要望書を提出しました。

保護者などの団体「相談窓口 自治体に設置を」

静岡県裾野市の認可保育園「さくら保育園」の元保育士3人が園児に暴行した疑いで逮捕された事件では、不適切な保育を把握してからおよそ3か月にわたって県への報告や事案の公表を行わなかったことから保育園と市の対応の遅れが指摘されています。

こうした中、保護者などで作る民間団体「保育園を考える親の会」が厚生労働省を訪れ、不適切な保育を防ぐための要望書を提出しました。

要望書
・自治体に不適切な保育に関する相談窓口を設置し、すぐに調査を行う体制を作る
・相談や内部告発があった場合には自治体と施設が職員や保護者に聞き取り調査を行うなどして速やかに事実確認を行う。
・保護者に対して正確に事実を伝えるなど

「保育園を考える親の会」 渡邊寛子代表
「不適切保育の疑いがある事案が相次いで発覚しているが、これは『氷山の一角』にすぎないと思う。子どもたちを守るためにも国には思い切った対策や啓発に取り組んでほしい

2019年度の実態調査では

保育所での不適切保育について厚生労働省は2019年度に初めて実態調査を行いました。

調査では不適切保育を「保育所での保育士などによる子どもの関わりについて人権や人格の観点に照らし改善を要すると判断される行為」と位置づけたうえで都道府県や市区町村のあわせて1063の自治体から回答を得ました。

それによりますと96の自治体であわせて345件不適切な保育があったと確認されたということです。

「罰を与える・乱暴な関わり」 最多の60自治体
「人格を尊重しない関わり」 46の自治体
「物事を強要するような関わり・脅迫的なことばがけ」 45の自治体

一方、不適切保育の未然防止や発生時の対応に備えたガイドラインを作成している自治体は全体の4.1%にとどまりました。

不適切保育防止などで手引き

厚生労働省は2021年、不適切保育の未然防止や発生時の対応についてまとめた手引きを作成しています。

この中では不適切保育が生じる背景について、子どもへの適切な関わり方を理解していないといった「保育士の認識」や、職員体制が十分でないなど「職場環境」に問題があると考えられるとしています。

そのうえで不適切保育を未然に防止するため保育士には子どもの利益が尊重されているかを意識することや、日々の保育を振り返る機会を定期的に持つ必要があると指摘しています。

また不適切保育が疑われる事案を把握した時点で、保育所は速やかに自治体に情報提供をして対応を相談し、市区町村や都道府県は迅速に指導・監査を行うことが必要だとしています。

保育士の配置基準 4・5歳児30人に1人

厚生労働省によりますと認可保育所で働く保育士の配置基準は児童福祉法に基づく省令で、子どもの年齢ごとに定められています。
表にまとめました。

具体的には保育士1人が受け持つ子どもの人数は、0歳児は3人、1~2歳児は6人、3歳児は20人、4歳児以上は30人となっています。

保育所などの保育施設の数は年々増加していてことし4月時点では全国で3万9000か所あまりにのぼっています。
一方で仕事を求める人1人に対して何人の求人があるかを示す有効求人倍率はことし4月時点で保育士は1.98倍と全職種の平均の1.23倍を上回っていて、施設が増加する中で、保育の質をどう維持していくのかが課題とされています。

専門家「保育士の業務負担が大きい」

保育現場の問題に詳しい保育研究所の村山祐一所長は、不適切な保育が相次ぐ背景について、今後詳しく調査すべきだとしたうえで、保育士の業務負担が大きいことが関係している可能性もあると指摘します。

保育研究所 村山祐一所長
「事件は許されないが、保育のニーズが高まる中、人員が限られているぎりぎりの保育現場ではゆとりのある体制が保証されておらず、保育士同士で情報共有したり助け合ったりすることが難しくなっている。保育の現場のゆとりがなくなっていて、どの園で虐待が起きてもおかしくない危険性が内包されている」

そして、保育士に求められる仕事が増えていく中、国の保育士の配置基準が長年ほとんど変わっていないとして、次のように指摘しています。

保育研究所 村山祐一所長
「国は保育士の配置基準について見直しを図るなど、保育士が余裕をもって働ける環境を整備する必要がある」

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