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コロナ 5類になるとどうなる 医療費や行動制限 見直し判断の要素は

  • 2022年12月8日

新型コロナウイルスの感染症法上の扱いは、現在「2類相当」ですが、季節性インフルエンザと同じ「5類」への引き下げも含め、議論が本格化する見通しです。仮に「5類」となった場合、行動制限や医療費の負担など、どう変わるのか。また扱いについて判断する際に考慮するとされる要素や、引き下げた場合の課題についてまとめました。

感染症法 「2類」と「5類」の違いは

感染症法は、ウイルスや細菌を重症化リスクや感染力に応じて原則「1類」から「5類」に分け、国や自治体が行うことができる措置の内容を定めています。例えば「1類」は、かかった場合に命の危険がある危険性が極めて高い感染症としてエボラ出血熱やペストなどが分類されます。

〇「2類」とは
「2類」には重症化リスクや感染力が高い結核や重症急性呼吸器症侯群=SARS(サーズ)などがあります。
地方自治体は感染者に就業制限や入院勧告ができ、医療費は全額、公費で負担します。入院患者は原則、感染症指定医療機関が受け入れ、医師はすべての感染者について発生届け出を保健所に届けなければならないとされています。

〇「5類」とは
一方、「5類」には季節性インフルエンザや梅毒などがあります。
地方自治体は就業制限や入院勧告の措置がとれないほか、医療費は一部で自己負担が発生します。一般の医療機関でも入院患者を受け入れ、医師の届け出は7日以内とされ、患者の全数報告は求められていません。

感染症法 新型コロナウイルスの類型は

新型コロナウイルスは当初は特性が分からなかったため「2類相当」とされましたが、2020年2月に法改正で5つの類型に入らない「新型インフルエンザ等感染症」に位置づけられ、外出自粛要請など「2類」よりも厳しい措置がとれるほか、緊急事態宣言のような強い行動制限ができるようにしていました。
また、感染対策を取っていれば、都道府県の指定で一般の病床でも患者を受け入れることができるようにもなりました。

しかし、第6波や第7波で拡大したオミクロン株は従来株と比べて重症化率が低い傾向にあったことや、オミクロン株に対応したワクチン接種が開始されたことなどを受け、患者の療養期間が見直されたほか、感染者の全数把握も簡略化され、水際対策も緩和されました。

感染症法上の扱い 判断の際に考慮する要素

新型コロナウイルスの感染症法上の扱いについて厚生労働省は12月7日の専門家会合で判断する際に考慮する要素についてまとめた資料を示しました。
この中では、判断にあたって考慮する要素として、「病原性」と「感染力」、それに「今後の変異の可能性」を挙げています。

〇病原性
このうち「病原性」については、オミクロン株でも季節性インフルエンザより致死率が高いとされているとしていて、累積の患者数の増加やワクチン接種の進展、それに治療薬の普及などを踏まえて、いまの時点での病原性についてどう考えるか判断が必要としています。

〇感染力
「感染力」については、オミクロン株は感染力が強いとされるとしていて、いまの時点での「感染力」や国民の生命や健康に対する影響をどのように考えるか。

〇変異の可能性
「今後の変異の可能性」については、病原性が大きく上がるような変異が起きる可能性をどのように考えるかも考慮すべき要素としています。

この上で病原性と感染力を踏まえて、患者をどのように医療で受け止めていくかも考える必要があるとしています。

ワクチン接種や治療薬の現状

ワクチンや治療薬の現在の状況についてみてみると、ワクチン接種率は総理大臣官邸のウェブサイトによりますと、12月6日の時点で、3回目接種も67.1%に上っています。ただ、オミクロン株に対応したワクチンの接種率は、22.1%にとどまっています。

また、治療薬については重症化リスクのある人を対象に処方されるものとして「メルク」が開発した「ラゲブリオ」と「ファイザー」が開発した「パキロビッドパック」が使われているほか、11月には重症化リスクがない人でも使える初めての薬として、「塩野義製薬」の飲み薬、「ゾコーバ」が緊急承認され、処方が始まっています。

変異ウイルス 病気の性質の変化などに注意を

一方で、ことし10月、東北大学の押谷仁教授や京都大学の西浦博教授などは厚生労働省の専門家会合に今後の見通しを示す文書を提出し、今後、「BA.5」に変わる新たな変異株の急速な拡大やワクチン接種率が思うように伸びず高齢者を中心にワクチンや自然感染による免疫が弱まることで、重症化率や致死率が再び高まる可能性もあるとして注意を呼びかけました。

また、11月30日に開かれた厚生労働省の専門家会合のあとの記者会見で、脇田隆字座長は「コロナウイルスの感染は、これまで呼吸器疾患を重症化させるという傾向があったが、心血管疾患の合併症が多く、循環器の病気になっているのではという意見も出てきている」と述べ、病気の性質の変化を注視する必要性を指摘しています。

新型コロナ 5類となった場合の課題

新型コロナウイルスの感染症法上の分類が仮に「5類」となった場合、原則、感染症指定医療機関に限られている入院患者の受け入れが一般の医療機関でも対応可能になります。

今後、感染が拡大した場合、これまでよりも病床のひっ迫は軽減されると期待されますが、新たに入院患者を受け入れる医療機関には院内での感染リスクを減らす対応が求められることになります。一方で、感染対策が不十分な場合などで、実際には患者を受け入れることができない医療機関もあるのではないかと懸念されています。

また、「5類」に見直された場合、全額公費負担としている検査と入院治療費について、保険適用以外の費用が原則自己負担となるため、受診控えや感染発覚が遅れてしまうケースが懸念されています。

このほか、入院勧告や濃厚接触者の待機など行動制限ができなくなるため、感染した場合には周囲に広げないよう行動することを国民に理解してもらうことも求められます。

分類見直しのとりまとめ 具体的な時期は未定

分類の見直しに向けた議論ついて厚生労働省は具体的な取りまとめの時期は決まっていないとしています。今後は専門家による病原性などの検証結果を踏まえ、公費負担のあり方など具体的な検討が進められるものとみられています。
あわせて現在、無料で行われているワクチン接種をどうするかも検討が行われる見通しです。

分類を「5類」に変える場合は厚生労働省の専門家で作る部会にはかったうえで省令改正を行う必要があります。予算措置で治療費などを公費で負担することも考えられます。
新たな分類を作る場合は感染症法の改正が必要となるため、国会での審議が必要になります。

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