神奈川県川崎市中原区は、江戸時代に多摩川の水を引く用水路が整備され、米造りが盛んに行われていました。かつて米どころだった、そんな地域には、およそ150年前から伝わるといわれている郷土芸能・「新城の囃子曲持」(しんじょうのはやしきょくもち)があります。
そんな地域の宝を守り、つなごうと奮闘する人たちの物語です。
神奈川県川崎市中原区の新城地区に伝わる「新城の囃子曲持」。
55キロもある俵を一気に持ち上げたり、25キロの俵を脚立でキャッチしたりします。
明治の初めごろに、若い農家が力比べをする中で生まれたとされる「新城の囃子曲持」。
この地域のお祝い事には、欠かせない存在として愛されてきました。
担い手の農家がほとんどいなくなった今、伝統の技を守っているのは、50年ほど前に結成された、保存会の皆さんです。10代から70代までの地域住民、20人ほどが参加しています。
新型コロナの影響で、毎年参加していた祭りが中止になるなど、技を披露する機会が減ってしまいました。
その中でも、伝統を絶やすまいと、週2回の稽古は欠かさず続けてきました。
囃子曲持保存会 井上孟さん
見てくれる人がいるという期待のためにがんばる。
囃子曲持保存会 千葉康史 会長
街を元気にするためにも技芸の伝承を大事にしていきたい。
11月の週末、地元の新城小学校が地域の人を招待した記念式典に呼ばれました。
多くの観衆の前で技を披露するのは3年ぶりです。
見せ場のひとつ、重ねた5つの箱のうちの1つをたたいて落とす大技も無事、成功しました。
地域情報委員会の児童たち
その舞台を真剣に見つめる子どもたちがいました。
地域の伝統などを校内や校外に発信する「地域情報委員会」のメンバーです。
地域情報委員会の児童
片手で持ったり回すところなんて、絶対にマネできない。
保存会のメンバー
練習したらできるよ。
左:井上法久さん 右:井上孟さん
囃子曲持保存会 井上孟さん
「こういう子どもたちにすごいっていってもらえるのは本当にうれしいです」
囃子曲持保存会 井上法久さん
「なかなか下に続く人たちがいない中なので、保存会としてもうれしいですね」
郷土芸能の迫力を身近に感じた子どもたちは、早速、「新城の囃子曲持」をどのように広めていくべきか話し合います。
箱抜き、あれ原理どうなっているんだって思った。
55キロって大人1人分くらいあると思うからそれ持っていてすごいなと思いました。
その結果、子どもたちは、学校の児童だけでなく、地域の人に向けた「新城の囃子曲持」の魅力を伝える活動を進めていこうと考えています。
新城小学校 地域情報委員会 鷲山莉乃さん
「保存会の方にインタビューとかさせてもらったり、それをほかの人にも発信したりして、さらに囃子曲持を広めていきたいなと思います」
保存会 千葉康史 会長
「新城愛がすごかった。新城全体で盛り上げてくれているんで、私たちもそれに応えようと、街のそばにいる。みなさんのそばにいる郷土芸能、それに徹したいと思っています」