新型コロナウイルスの新規感染者数を1週間平均で比較すると、全国では5週連続で増加傾向となっています。感染が拡大傾向となっていることから、医療機関や高齢者施設の中には感染を防止するため家族との面会について対応を検討する動きも出ています。現場の対応や工夫、さらに今後の感染状況についての専門家の見方をまとめました。
千葉県市川市にある国立国際医療研究センター国府台病院では、第7波が落ち着いたあと10月24日から面会の制限を緩和し、入院患者の家族は決められた人数と時間の範囲内で面会できるようにしました。
しかし、感染の再拡大が始まり、千葉県が定める感染のレベルが引き上げられたことから、11月10日から再び面会を制限することになりました。
家族同席で医師が病状を説明する場合などを除いて原則、面会はできないとしていて、制限の緩和から2週間余りで再び厳しい対応を取らざるを得なくなりました。
一方、不安や孤独を感じる入院患者にも配慮しようと、患者と家族が強く希望する場合などは、病棟の出入り口でガラス越しに顔を合わせることは認めることにしています。
千葉市にある特別養護老人ホーム「とどろき一倫荘」では、2年前の感染拡大以降、通常の面会ができたのは1か月程度で、ほかの時期は、対面は基本的に禁止し、オンラインを活用するなどして対応してきました。
ただ、利用者や家族からの直接、顔を合わせたいという要望を受けて、10月からは感染対策を工夫した新しい方法で面会できるようにしました。
施設の窓がある部分を面会場所として外側のベンチに家族が座ります。そして、窓は開けた上でフィルムを2人の間に設置し、内側にいる利用者と話す方法で、少しでも本来の面会に近づけようと職員が考えたということです。
95歳の母親に会うために訪れた60代の女性は入り口で消毒や検温をしたあとフィルム越しに母親と面会し、「お菓子持ってきたから食べてね」などと声をかけ、母親は「久しぶりに顔が見られてうれしい」と話していました。
実際に会って話すと安心します。母は耳が遠く目も見えにくくなっていてWEB面会は難しいので、顔を見て話せるだけで助かっています。
施設では時間は10分間で訪問は2人以内に限定するなど感染対策を徹底しながらできる限り面会を続けていきたいとしています。
平野幸一施設長
「入所者が家族に会えないと精神的な影響も大きいので面会は重要だと考えている。一方で、コロナとインフルエンザの同時流行も心配です。高齢者は感染してしまうと重症化しやすいので、試行錯誤しながら緊張感を持って対応に当たっていきたい」
NHKは厚生労働省が発表した感染者数をもとに、1週間平均での新規感染者数の傾向について前の週と比較してまとめました。全国では17日まででは1.24倍と5週連続で増加しています。
首都圏の1都3県の状況をみますと、17日までで、東京都は1.25倍、神奈川県は1.27倍です。埼玉県は1.29倍、千葉県は1.35倍でした。
新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会のメンバーで東邦大学の舘田一博教授に聞きました。
〇現在の感染状況
第7波のように前の週の2倍を超えるような爆発的な増加はまだ見られず、第8波の入り口のような形でだらだらとした増加が続いているが、全国の1日の感染者数を見るとすでに2022年初めの第6波のピークの10万人に達していて、このままでは気づかないうちに20万人以上に達した第7波を超えるようなリスクもある。
〇今後の感染状況
オミクロン株の『BQ.1』や『XBB』など新たなタイプが少しずつ増えていて、年末に向けて忘年会やクリスマスなどで人の動きが増えたりして、今後、感染者数の爆発的な増加につながる可能性もある。また、感染していても検査や診断を受けていない人もかなりいると考えられ、そうした人が感染を広げることで次の大きな波を作ってしまうリスクもある。
〇感染を広げないために
これから年末年始にかけてが、最も注意するべき時期だ。感染を広げないために、適切な場面でマスク使うことや3密を避けることといった基本的な対策を改めて徹底してもらうとともに、オミクロン株対応のワクチンやインフルエンザワクチンも十分に用意されているので、できるだけ前倒しで、年内には接種をしてもらうことが重要だ。