東京には40近くの生産者が酪農を営んでいますが、今、苦境を迎えています。乳用牛の配合飼料の価格は、ここ20年近くで2倍以上になっています。最近は、コロナ禍による輸送費の値上がり、ウクライナ情勢、円安などの影響を受け、さらに値上がりしている状況です。そんな厳しい状況をより地域に密着することで乗り越えようと奮闘する東京・八王子市にある牧場を取材しました。
東京八王子市の住宅街、小道に入って、現れた牛舎です。住宅地にある牧場で、およそ100頭の牛を飼育しています。
「開かれた牧場」と、うたっているこちらでは、牛との距離も近く、ふだんから触れ合うことができます。
この牧場を営む磯沼正徳さんです。磯沼さんは牛舎でも自由に動けるように、牛をつながずに飼育しています。
磯沼正徳さん
「牛というのはいかに満足度が高い世話をするかによってそれに応じてミルクを出してくれる」
磯沼さんの牧場の生乳は、都内のほかの牧場のものと合わせて「東京ブランド」の牛乳として販売されています。東京に根づいてきた牧場も今、エサ代の高騰で厳しい状況に直面しています。
磯沼正徳さん
「牛乳の値段は決まっているからコストのしわ寄せが酪農家の収入に迫ってくる」
さらに、9月には自慢の牧場オリジナル牛乳も製造委託先の経営状況悪化などから販売を終了せざるを得ませんでした。
磯沼正徳さん
「おいしい牛乳だという評価もいただいていて『牛乳飲めない人もこの牛乳なら飲める』と言ってもらったりしていたが非常に残念がられて」
「苦しい中でも東京に牧場を残したい」。磯沼さんは10月、牧場そばに新たに店をオープンしました。名前は“TOKYO FARM VILLAGE”です。
開業にあたってはクラウドファンディングも活用。「馴染みの牧場を応援したい」と地元をはじめ多くの人たちからの支援を受けました。
ミルクが濃厚でおいしい。
牧場はいつも来ていました。子どもたちも学校の遠足で歩いて牛を見に来たりしていたので。
店のコンセプトは牧場が中心となった「地産地消」。
店内では牧場の乳製品だけでなく、地元の農産物などを買ったり味わったりすることができます。
日によっては生産者みずからが、オススメの食べ方や調理方法などを説明します。
油で炒めてニンニク、あと卵入れてもおいしいです。お肉入れても。
店内で売られている野菜も、近隣の農家が牧場の堆肥を使って育てたものです。
こんなにいろんな野菜をつくっているとは知らなかったから驚きです。
地元の人に期待されている感じはめちゃめちゃありますね。
磯沼正徳さん
「うちの牧場も地域の活性化、農業の活性化、牧場の地域貢献みたいな形で、少しでも町の中にあって役に立つ、役に立てる牧場になっていきたい」