新型コロナウイルスのオミクロン株に対応したワクチンで行われている3回目以降の接種について、前回接種からの間隔は少なくとも3か月に短縮され、10月21日から5回目の接種も可能となりました。懸念される「第8波」に備え、ワクチンの配送計画の情報ほか、接種間隔の短縮についての専門家の見方などをまとめました。
新型コロナウイルスのオミクロン株対応ワクチンは、12歳以上を対象にした3回目以降の追加接種として、9月20日から「BA.1」対応ワクチン、10月13日から「BA.5」対応ワクチンの接種が始まっています。
この3回目以降の追加接種について、厚生労働省は少なくとも5か月としていた前回の接種からの間隔を3か月に短縮することを決め、10月21日から運用を開始しました。
これを受け、ことし7月に接種を受けた人も21日から追加の接種を受けられるようになりました。都の大規模接種会場の1つの都庁の北展望室では、訪れた人が何回目の接種になるかなどをスタッフに伝えていました。最多となる5回目の接種も可能となり、25日からは専用のウェブサイトで予約もできるということです。
対象となるのは、10月に接種が始まったオミクロン株の「BA.5」などに対応するワクチンや、9月から接種が始まったオミクロン株の「BA.1」に対応するワクチン、さらに従来型のワクチンと、現在、日本で打つことができるファイザー社とモデルナ社のワクチンが対象となります。
対象年齢はファイザー社のワクチンがいずれも12歳以上、モデルナ社のワクチンが「BA.1」に対応するワクチンが18歳以上、従来型のワクチンが12歳以上となります。
厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、10月19日までの1週間の新規感染者数は、全国では前の週と比べて1.35倍と8月下旬以来、およそ2か月ぶりに増加に転じています。
新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合は20日、新規感染者数の増加傾向が続く可能性があると指摘しました。
また、ワクチン接種や感染によって獲得した免疫は時間とともに低下すると考えられ、60代以上では感染による免疫の獲得は少ないことから、今後、高齢者での感染拡大が懸念されると指摘しました。
専門家は、国内の多くの地域で感染者数が増加に転じていることや、ヨーロッパやアジアの一部の国々で感染拡大が起きている状況などから「第8波」が起きる可能性が非常に高いと分析しています。
厚生労働省は、年末年始に懸念される感染拡大に備え、希望する人全員が年内に接種を行えるようにする方針で、ファイザー社の「BA.1」対応ワクチンと「BA.5」対応ワクチン、モデルナ社の「BA.1」対応ワクチン、合わせておよそ9908万回分を11月下旬にかけて自治体に配送する計画です。
厚生労働省は前回の接種からの間隔が短縮されたことにともなって、10月中に1800万人が新たに接種できるようになるとしています。
また、従来株のワクチンを9月までに接種したおよそ1億人が年内にオミクロン株対応ワクチンを接種できることになるとしていて、厚生労働省は十分に対応できる量のワクチンが配送されるとしています。
◆追記◆
オミクロン株のうち「BA.5」に対応するモデルナのワクチンについて、厚生労働省は国内での使用を承認し、公的接種に位置づける方針を決めました。「BA.5」に対応するモデルナのワクチンは、11月28日の週から12月下旬にかけて、およそ300万回分を自治体に配送し、順次、接種を開始する方針です。
(年内に自治体配送のオミクロン株対応ワクチンは計1億200万回分に)
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新型コロナウイルスのワクチンの接種間隔が少なくとも3か月に短縮され、5回目の接種ができるようになったことについて国際医療福祉大学の松本哲哉主任教授に聞きました。
〇5回目の接種
4回目のワクチン接種を早い時期に受けた高齢者や医療従事者などは、この冬には抗体の値が下がり、ワクチンの効果が低くなるケースもありえる。クラスターが起きている介護施設などもあるので、重症化しやすい高齢者は積極的に5回目の接種を受けることが大切だ。
〇接種間隔の短縮
安全性の面では、接種間隔を3か月に短縮しても副反応が強く出たり、非常に重い症状が出たりするデータはなく、これまでと同じくらいだと評価されている。抗体の値は接種から3か月ほどたつと徐々に下がるので、接種間隔を短くして、ワクチンの効果を一定程度に維持するという判断だと思う。
〇予約が難しくなることも
接種間隔が短縮され、一定の人数が接種対象に含まれることで、再び感染が拡大した場合、急にワクチンを接種したいと思っても、予約が難しいということになりかねない。第8波とインフルエンザが同時に流行した場合、医療も厳しい状況に置かれる可能性が高いので、感染が再拡大する前に接種し、備えておくことが重要だ。
一方、「第8波」では海外から新たな変異ウイルスが流入し感染が拡大するケースが予想されています。
懸念されるオミクロン株の変異ウイルスとして、シンガポールなどで広がっている「XBB」と呼ばれるタイプのウイルスや、アメリカやインド、ヨーロッパ各国などで検出されている「BA.2.75.2」が挙げられています。
これについて、厚生労働省はワクチンが新たな変異ウイルスに効くかどうかを判断できるデータはまだなく、現状「BA.1」対応ワクチンと「BA.5」対応ワクチンが効くかどうか言える状況ではないとしています。