国内では新型コロナウイルスの「第7波」がようやく収まってきたかという一方で、ヨーロッパでは再び感染が広がりつつあります。専門家の間では「第8波」への危機感が強まっています。では次の感染拡大が起きるとすればいつなのか。また予想される感染の広がり方や、海外で検出されている新たな変異ウイルスの情報などについて、専門家に聞きました。
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国内では感染者数の下げ止まりの状況が見え始めています。オミクロン株の「BA.5」による第7波では、8月下旬にピークを迎えたあと、ほぼ2か月にわたり、感染者数の減少が続いてきました。
全国の1週間平均の感染者数は、8月24日のおよそ22万7000人から10月11日にはおよそ2万6000人にまで減少しました。
ところが、このところは、横ばいから増加傾向で、10月17日にはおよそ3万1600人となっています。
厚生労働省専門家会合 脇田隆字座長(10月12日)
「日本でもこの冬、かなり大きなコロナの感染拡大が起きるおそれがあるという認識を共有している。これにインフルエンザの流行が重なれば医療体制にさらに深刻な負荷がかかるおそれがある」
背景にあるのがすでに多くの人が感染し、免疫を持つ人が多いはずのヨーロッパでの感染再拡大です。
ドイツでは1日あたりの新規感染者数が10月に入ってから10万人を上回る日が続いていて、政府は感染拡大が再び始まったという認識を示しています。
フランスでも1日あたりの新規感染者数が10月14日までの1週間平均では9月初旬と比べて3倍以上に増加し、重症者の数なども増え始めています。
ヨーロッパ各国では、コロナ対策として行われてきたさまざまな規制が緩和されています。日本でも10月11日から水際対策が大幅に緩和されて、入国者数の上限がなくなり、全国旅行支援もスタートして人と人との接触が増える中で、専門家は、これらの国と同様に増えるのではないかと懸念しているのです。
次の感染拡大「第8波」はいつ来るのか。京都大学の西浦博教授は、ヨーロッパのデータをみると、日本国内でもそう遠くない時期に「第8波」が訪れるとしています。
京都大学 西浦博教授
「第8波は目の前にあることが、ヨーロッパのデータから分かるし、その規模はかなり大きなものになりそうだ。緩和を進めたり、マスクを着用しなくてもいいといったメッセージが発信されたりして、危機感のない状況だ」
次の感染拡大が起きるとしたら、どんな変異ウイルスが主流になるのか、海外の感染状況に詳しい東京医科大学の濱田篤郎特任教授は「第8波」を引き起こす可能性がある変異ウイルスは主に2つあると言います。
1つは「第7波」を引き起こしたのと同じ、「BA.5」による感染拡大です。
東京医科大学 濱田篤郎特任教授
「ヨーロッパでは『BA.5』の流行が再燃し、残り火が広がり始めている。日本では『第7波』での『BA.5』の流行が収まりきらないうちに季節が寒くなって流行が再燃し、『第8波』になることが予想される」
そしてもう1つは、海外から新たな変異ウイルスが流入し感染が拡大するケースです。濱田特任教授は、懸念される変異ウイルスの1つとして、シンガポールなどで「XBB」と呼ばれるタイプのウイルスが広がってきていると指摘しました。
「XBB」はオミクロン株のうちの複数のタイプのウイルスが組み合わさったもので、シンガポールの保健省のデータでは、9月の時点で6%だったのが、10月9日までの1週間では54%を占めるようになったということです。
この変異ウイルスの影響もあり、シンガポールでは人口100万あたりの感染者数が9月上旬にはおよそ340人だったのが、10月中旬には1500人を超えるに至っています。
濱田特任教授
「日本にもオミクロン株の別のタイプの1つが入ってくると、これまでの『BA.5』よりも拡大することが可能性としてはある」
さらに、ほかの変異ウイルスも検出されてきています。アメリカでは、CDC=疾病対策センターによると、10月15日の時点で、オミクロン株の「BA.5」が引き続き最も多く67.9%を占めているものの、「BA.4」から派生した「BA.4.6」が12.2%、「BQ.1.1」と「BQ.1」がそれぞれ5.7%、「BA.2.75.2」が1.4%、「BA.2.75」が1.3%などと、いずれもオミクロン株の一種ですが変異ウイルスの種類が増えてきています。
このうち、「BQ.1」系統のウイルスは「BA.5」がさらに変異を重ねたウイルスです。また、「BA.2.75.2」はアメリカやインド、ヨーロッパ各国などで検出されていて、「BA.2」が変異を重ねた「BA.2.75」にさらに3つの変異が加わっています。
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これらの変異ウイルスの性質はまだはっきりしていませんが、人の血液を使って分析すると、「BA.5」よりも免疫の働きが下がるという報告が出されています。
濱田特任教授によりますと、これらの変異ウイルスは「BA.5」と比べて、感染した場合の重症度が大きく変わるとは考えにくいものの、感染力が高まることや、欧米などで広がるのとほぼ同時に日本国内でも広がるおそれがあることに注意が必要だとしています。
濱田特任教授
「今出てきている変異ウイルスはオミクロン株の中で変化しているものなので、重症度が大きく高まることはあまりないと考えられる。感染力が高くなる、免疫を逃避する能力が高くなることは予想されるが、ドラスチックな大きな変化というものは現在の状況からみると起きないのではないか。
過去2年間は、ヨーロッパやアメリカで冬の流行が広がってしばらくしてから、変異ウイルスが日本に入ってくる状況が見られたが、今は水際対策が緩和されているので、欧米での流行が起きたあとに間を置かずに日本で流行が広がってしまうということも考えておかなければいけない」