8月、東京・大手町の東京駅のすぐ近くに地方からのえりすぐりの逸品を取りそろえたセレクトショップ「アナザー・ジャパン」がオープンしました。ユニークなのは、お店の経営すべてを大学生が担っているということです。なぜ、東京駅からほど近い1等地にオープンしたセレクトショップの経営を大学生が担っているのか、まとめました。
ことし8月、東京・大手町の1等地にオープンした「アナザージャパン」。地方の逸品を集めたセレクトショップです。
経営を担っているのは、主に地方から進学のために上京してきた18人の大学生たちです。商品の仕入れ交渉から、接客、売り上げ目標の設定など、すべてを自分たちで行っています。
8月のオープンから2か月間は「キュウシュウ展」が開催されました。
店内の商品は、学生みずから九州や沖縄に足を運んで選び抜いた品々です。
沖縄県出身の学生スタッフの比嘉涼夏さんにおすすめ商品を尋ねたところ、手に取ったのは“八重山みんさー織”という織物でできたポシェットです。これは、昔から女性が愛する男性に贈っていたもので現代まで受け継がれていて日常に取り入れてもらえる商品になっています。
ほかにも、熊本県・阿蘇山のふもとに湧き出るミネラル豊富な水を使ったビールもおすすめです。さらにお酒の好きな比嘉さん一押しが、宮崎県の加工会社が扱っている“魚のジャーキー”です。
沖縄県出身の学生スタッフ 比嘉涼夏さん
「直接お会いした作り手さんの商品に対しての思いや九州のすてきな商品をできるかぎり多くのお客さんにお届けしたいという思いで日々がんばっています」
セレクトショップの全ての経営を大学生が担う取り組みは、東京駅周辺の土地開発を行っている不動産会社が“新しい街づくり”の一環として進めています。
大手町という1等地での店舗経営を学生に任せることにはリスクが伴いますが、“新しい街づくり”には若者の感性が欠かせないと考えています。
三菱地所 谷沢直紀さん
「これからの街づくりには、未来をつくっていく世代との共同の街づくりが必要だと考えています。若い世代が実際に街をみずからの手でつくっていく企画をどんどん伸ばしていきたいと考えています」
10月から2か月間は、「ホッカイドウ・トウホク」展が開催されます。
学生スタッフの中心メンバーで福島県出身の久間木壱成さんは、店を任されるプレッシャーを感じていました。
福島県出身の学生スタッフ 久間木壱成さん
「実際に自分たちがお店を経営して数字にも責任を持つとなると弱腰になってしまいます」
当初は売り上げを出すことばかり意識していましたが、実際に現場を訪れて肌で感じた“作り手の思いをお客さんに伝えること”が自分たちの使命だと感じるようになったといいます。
久間木さんが特に思い入れのある商品が、地元・福島で見つけたしょうゆです。
久間木壱成さん
「しょうゆをごはんにかけるだけですごくおいしい。もう普通のしょうゆには戻れない」
小さな蔵で、すべての工程を手づくりしているこだわりに心を打たれました。
「その感動をお客さんに届けたい」、その一心で商談を重ねた結果、店に商品を置かせてもらえることになりました。
鈴木醤油店 鈴木良浩さん
「ものをつくっていると、これが本当に売れるんだろうか、人の役に立つんだろうかと悩みながらつくっている部分があるので、自分たちの価値を認めてもらえたという感じがしてうれしかったです」
久間木壱成さん
「商品の紹介をただするのだけではなくて、その裏にある思いとかストーリーとかを、お届けしてそれを通じて地域のファンになってもらう、そういう従来のお店の形を超えたありかたというのを、この場所でつくっていけたらと思っています」
久間木さんたちは「ホッカイドウ・トウホク展」に向けて約500種類の商品を集めたそうです。
現在の学生たちがお店の経営を担う任期は1年間で1年ごとに新たにメンバーを募集するということです。