いまから58年前の昭和39年、地域の人たちが山間部で暮らす子どもたちのために協力してつくったプールが東京・青梅市にありました。それが、ことし22年ぶりに復活しました。
さまざまな困難を乗り越え、プール復活のために汗を流したのは、子ども時代、このプールで遊んだ地元の仲間でした。その思いをまとめました。
8月、夏休み最後の日曜日に青梅市の黒沢地区でマスのつかみ取り大会が開かれました。参加したのは、地元の園児や小学生など、約20人です。
その会場となったのは、山のふもとに作られた、縦14メートル、横4メートルほどの小さなプールです。その名も「ひまわりプール」。22年もの間、閉鎖されていましたが、今年5月、地元の有志の人たちの手で復活しました。
中村さん
「毎日夏休みになると通ってきていた。いまのお子さんたちは自然に触れる機会も少ないでしょうから、せっかくこういう場所があるんであれば、皆さんに使っていただけるようにと復活させました」
「ひまわりプール」は、山あいを流れる黒仁田川をせき止めた天然のプールです。川の水は、澄んでいて、冷たく、子どものころ、中村さんたちは夏休みの間、ほぼ毎日、プールで遊んでいたといいます。
ひまわりプールが誕生したのは、いまから58年前。作った当時の様子は、教科書でも紹介されました。山のふもとで暮らす子どもたちに、近くで泳げる場所をつくってあげたいという思いから地元の人たちが協力し、丸太などで川をせき止めて、プールを手作りしたのです。地域の子供会の名前をとって「ひまわりプール」と名付けられました。地域の子どもを大切に思う気持ちとその実行力が全国に伝えられたのです。
青梅市立第七小学校 森田哲生校長
きっとこれを読んだ当時の子どもたちはすごくうれしく誇りに思ったと思います。(保存会の人たちの)今の子どもたちにその体験をさせてあげたいという思いは伝わってきました。
しかし、多くの子どもたちでにぎわった「ひまわりプール」は、やがて地域の過疎化と少子化によって、平成12年に廃止になります。その後、22年もの間、プールとして使われることはありませんでした。
何とか、あの当時の活気を取り戻したいと中村さんは、地元の先輩や後輩たちに声をかけて令和2年にプール保存会を結成しました。しかし、復活までの道のりは決して、簡単ではありませんでした。川を使用する許可について、市役所と相談を重ね、事故が起きないようにルールも何度も作り直しました。また、整備などに使う費用は地元の個人や企業を周って協賛金を集めたのです。そして、およそ2年の準備期間を経て、「ひまわりプール」を復活させることに成功しました。
楽しかった。
水が冷たい。
またやりたいです。
夏休みもうすぐ終わるのでいい思い出。絵日記に描かせます。
地元なんで最高でした。自分の子どもがここで遊べるとは思ってなかったんで、それはもう感激しました。
中村さん
「なによりも子どもたちが喜んであの笑顔があっただけでもう十分です。すごく大切なものだよ、ほかにはないものだよって教えてもらった、せっかくあるんだったらいろんな子どもに楽しんでもらって、どんどん次世代につなげていけたらいいです」
プールの使用は、事前予約制で、いまのところ、地域の団体に限定していますが、今後はほかの地域の方でも使えるようにしていきたいと考えているそうです。