東京・葛飾区の新小岩と金町の間を結ぶJRの貨物専用の路線「新金線」。
この「新金線」の「旅客化」を図り、地域の利便性を向上させようと、葛飾区や鉄道事業者などによる会議の初会合が開かれました。
新金線の計画の経緯のほか、地下鉄や羽田空港のアクセスなど、東京都内の鉄道をめぐる動きをまとめました。
「新金線」は、東京・葛飾区の新小岩と金町の間を結ぶ、およそ7キロのJRの貨物専用の路線です。
区によりますと、葛飾区を南北に結ぶこの路線は、大正15年に建設され、東京の臨海部と千葉方面の間の物資輸送で重要な役割を担ってきたということです。
しかし、鉄道網の発展に伴って、別のルートを経由する貨物列車が多くなったため、運行本数が大幅に減少し、現在は1日数本程度しか走っていないということです。
葛飾区は、JR常磐線や総武線など区内を東西に結ぶ鉄道は整備されている一方で、南北を結ぶ公共交通機関はバスに限られています。
このため、区では利便性を向上させようと「新金線」に、客を乗せた電車を走らせる「旅客化」を目指してきました。
5年前から、「新金線」の旅客化に向けて、運行方法や採算性、周辺の交通影響などについて調査を行い、本格的な検討を進めてきました。
これまでの区の検討で示された案は次の通りです。
検討案
・第三セクターが施設の管理や運行を担う
・駅数は7か10
・運行本数はピーク時1時間あたり6本など
新金線の旅客化について、葛飾区民からは、公共交通の利便性の向上につながるとして期待する声が聞かれました。
旅客化されると、南北の移動の利便性が上がり、区の中央図書館や沿線の病院に行きやすくなるので、期待したい。
これまでバスしか移動手段がなかった。鉄道になると、バスより定時制が守られると思うので、便利になって良いと思う。
以前から貨物だけが走っているのはもったいないので、新金線を旅客化しようという話はあった。簡単には実現しないとは思うが旅客化したら喜ぶ人は多いと思う。
31日、この「新金線」の「旅客化」を図り、地域の利便性を向上させようと、葛飾区や鉄道事業者などによる会議の初会合が開かれました。
会議には、JR貨物や国土交通省、東京都など関係者が集まりました。
葛飾区 青木克徳区長
「新金線の旅客化は長年の悲願とも言えるので、早期の実現に向けて取り組みたい」
会議は冒頭を除き非公開で行われ、区によりますと、会議では、運行方法や費用面、それに駅や車両基地といった施設整備などについて検討を進めていくことを確認したということです。
葛飾区は、2030年には、一部区間の旅客化を実現したいとしています。
同じく東京東部では、東京メトロ、有楽町線の新駅についての動きも出ています。
延伸が決まっている江東区のおよそ5キロの区間に新設される3駅について、それぞれの場所を記した素案がまとまりました。
東京メトロの有楽町線は、江東区の豊洲駅から半蔵門線などが乗り入れる住吉駅までの4.8キロの区間を延ばすことで国の認可を受けていて、2030年代半ばの開業が予定されています。
この区間には、新たに3つの駅が設けられることになっていて、東京都と東京メトロは、それぞれの場所を枝川地区、東陽地区、それに千石地区とする計画の素案を8月1日にまとめました。
一方、東京都内から羽田空港へのアクセス向上が期待される「新空港線(蒲蒲線)」にも、この夏動きが出ました。
東京・大田区は、蒲田地区にある2つの「蒲田駅」を結ぶ新たな鉄道路線「新空港線」の整備で、事業費の負担割合について6月、東京都と合意したと発表しました。
東京・大田区の蒲田地区には、東急電鉄の「蒲田駅」と羽田空港に乗り入れている京浜急行の「京急蒲田駅」の2つの駅があり、この駅の間はおよそ800メートルあります。
大田区などは、この2つの駅を「新空港線」と呼ばれる新たな鉄道路線で結ぶことで、都内などから羽田空港へのアクセスの向上につながるとして、整備に向けた検討を進めてきました。
こうした中、6月大田区は「新空港線」の事業費の負担割合について東京都と合意したことを明らかにしました。
それによりますと、事業費は区などの現時点の試算で1360億円にのぼり、このうち都や区などの地方は3分の1を負担する必要があります。
この負担について協議した結果、7割を大田区が、3割を東京都が負担することで合意したということです。
区は今後、事業費を精査するとともに、今年度中に区や鉄道事業者などが出資して事業を担う第三セクターを設立することを目指すとしています。
路線の整備には、必要な手続きを経た上で、おおむね10年はかかると見込まれるということです。
「新空港線」が整備され、東急電鉄や東京メトロ副都心線との相互直通運転を行った場合、渋谷や池袋などと羽田空港を直接結ぶ路線ができるため、空港へのアクセスの向上が期待されています。