新型コロナウイルスの感染状況を把握するため、国は現在、医療機関や保健所から患者の全数報告を求めていますが、現場の負担が大きいという指摘があることなどから、厚生労働省は調査方法の見直しを検討することになりました。
感染症法は、重症化リスクや感染力に応じて感染症を「1類」から「5類」に分けています。新型コロナは2類相当、季節性インフルエンザと同等の「5類」。どういう違いがあるのか、まとめました。
感染症法は、重症化リスクや感染力に応じて感染症を「1類」から「5類」に分け、国や自治体が行うことができる措置の内容を定めています。
新型コロナウイルスは「2類に相当する」との扱いとなっていて、国や自治体は患者に対し、入院の勧告、就業制限、外出自粛の要請が可能となる一方で、検査や治療の費用は国が公費で全額負担しています。
しかし、現在の主な流行株となっているオミクロン株は、感染力は強いものの重症化率は低いとされているほか、医療機関や保健所の負担を減らすために、季節性インフルエンザと同等の「5類」に分類を引き下げるよう求める意見が出ています。
「5類」に分類されると、国や自治体による入院の勧告、就業制限、外出自粛の要請がなくなる一方で、検査や治療の費用は公費で負担されなくなります。
このほか、「2類相当」では医療機関や保健所には国に患者の全数報告が求められていますが、「5類」になると基幹病院からの定点報告に変更されます。
全国知事会議(7月28日開催)
全国知事会議では、新型コロナの感染が急拡大する中、社会経済活動を維持するため、新型コロナの感染症法上の扱いを季節性のインフルエンザと同じ扱いに見直すことも含め、これまでの対策を転換すべきだという意見が相次ぎました。
神奈川県の黒岩知事は、季節性のインフルエンザと同じ「5類」に見直すべきだと訴えました。
いつまでも『2類相当』では実態とあわず、社会経済活動が止まってしまう。
オミクロン株は99%が軽症であることを踏まえ、議論を進めていく事が重要だ。
感染者の『全数把握』は見直しの必要がある。負担を軽減するため『定点把握』に移行すべきだ。
入院者数が増加する中、4回目のワクチン接種の対象拡大や国産の飲み薬の後押しをお願いしたい。
そして、全国知事会として、ワクチンの3回目や4回目接種の促進を図ることや、検査キットの安定的な供給、それに新型コロナの感染症法上の取り扱いについて検討することなどを国に求める緊急提言をまとめました。
木原官房副長官は、1日の記者会見で、新型コロナの感染症法上の扱いについて、次のように述べました。
木原官房副長官
「今まさに新規感染者数が増加していて、最大限の警戒が必要な局面だ。現時点で『5類』への変更などは現実的ではない。
今後、時期もしっかり見極めながら、また変異の可能性などもしっかり判断した上で、『新型インフルエンザ等感染症』として規定されている各種措置の必要性などについて専門家の意見も伺いながら、丁寧に検討を進めていく」
1日、感染症法の課題を検討する会議が厚生労働省で開かれました。
専門家から、新型コロナウイルスの感染状況の調査について、「重症者の報告を優先する段階ではないか」や「医師の負担が大きいので、届け出以外の方法を検討すべきだ」といった意見が出された一方、「できるのであれば全数で把握したほうがいい」といった意見も出されました。
厚生労働省は、会議での意見を踏まえ今後、調査方法の見直しについて具体的に検討を行うことにしています。