いわゆる拒食症や過食症などの摂食障害で1年間に医療機関を受診する人は、およそ22万人にのぼると推計されています。コロナ禍で子どもの拒食症患者が増えたという調査結果もあり、学校現場での大規模な調査が行われることになりました。コロナ禍の摂食障害の状況や、家族のサポートで苦しみを乗り越えようとしている人の声です。
摂食障害は、食事をコントロールできなくなり心や体に影響がでる、いわゆる拒食症や過食症などの病気です。国立精神・神経医療研究センターの推計によりますと、国内で、医療機関を受診している患者は1年間で22万人にのぼるとみられるということです。
10代から20代の若い世代が多く、女性の割合が高いとされていますが、年齢や性別にかかわらず誰もがなるおそれがある病気で、詳しい原因などは分かっていません。
栄養状態が悪くなることから深刻な場合は、命に関わる場合もあり、精神面と身体面の両方の治療が必要だということで、早期の診断や適切な治療を届けることなどが課題となっています。
摂食障害に苦しむ人たちを支援するためのイベントが5日、オンラインで開かれました。
イベントでは、大学生の河野瑞夏さんが自身の経験を語りました。
河野さんは、大学に入ってから、周囲に認めてもらうために外見を良くしなければいけないと思い込み、極端なダイエットにのめり込んだといいます。
入学当初は、171センチの身長に50キロほどだった体重が、およそ1年後には30キロ台にまで落ち、体脂肪率も女性としては極めて低い5%ほどにまで下がったということで、当時は感情がまひしているような感覚だったということです。
コロナ禍に入ると、生活の変化がストレスになっていました。一袋のナッツを食べきってしまったことをきっかけに、今度は大量に食べては絶食をしたり、吐いてしまったりを繰り返すようになったといいます。
心配した母親に医療機関の受診を強く勧められましたが、当初は自分の症状を受け入れられず、ようやく受診したのは1か月後でした。
今も母親のサポートのもと治療を続けていて、河野さんの症状は少しずつ改善がみられるようになり、体重ももどってきたということです。
そして、摂食障害に悩む人たちに自分の経験を伝えて、苦しんでいるのは1人では無いことを知ってもらいたいと「ミス日本」に挑戦し、ことし1月、グランプリに選ばれました。
河野瑞夏さん
「まだ摂食障害を完全に克服できたわけではなく悩みは続いていますが、それでも何とか前を向けたことは自分の誇りになっています。私自身は、なかなか助けを求めることができませんでしたが、誰でも起こりうる病気なので悩んでいる人に寄り添う伴走者のような存在になりたいと思っています」
国立成育医療研究センターが、去年4月から6月にかけて、子どもの診察を行う全国26の医療機関を対象にアンケート調査を行いました。
その結果、2020年度はその前の年度と比べて、いわゆる拒食症と呼ばれる「神経性やせ症」の患者は、初診の外来でおよそ1.6倍に、新たに入院した人はおよそ1.4倍に増加したということです。
調査したグループによりますとコロナ禍が摂食障害に直接、影響したかどうかは分からないということですが、緊急事態宣言や学校の休校などで、外出の機会が減り、家に閉じこもる時間が増えたことや、部活動や行事が中止になったり、友人との交流が減ったりしたことなど生活環境の大きな変化によるストレスが影響している可能性があるということです。
摂食障害の患者の支援や啓発を行っている日本摂食障害協会では、学校現場での摂食障害の実態を把握する大規模な実態調査を行うことになりました。
〇学校現場での摂食障害 実態調査
・小中高の養護教諭など対象
・摂食障害の疑いの子どもへの対応経験は
・摂食障害の疑いの子どもが増えていないか
調査では全国の小学校や中学校、高校などの養護教諭などを対象にこの夏以降、アンケートを行い、およそ3000人を目標に回答を募るということで、摂食障害の疑いがある子どもの対応をしたことがあるかどうかや、コロナ禍で摂食障害の疑いがある子どもが増えていないかなどを調べるということです。