入国制限緩和で、外国人観光客の受け入れも6月10日から始まります。新型コロナウイルスの水際対策が1日から大幅に緩和され、成田空港では到着した人たちから手続きの簡素化を歓迎する声が聞かれました。
また観光庁は、旅行会社向けのガイドラインを7日公表しました。
外国人観光客受け入れ再開をめぐる課題や期待などをまとめました。
新型コロナの感染状況が改善していることなどから政府は外国人観光客の受け入れを6月10日に再開することを決めていて、これを前に1万人に制限していた1日あたりの入国者数を緩和し、1日から2万人に倍増させました。
これにあわせて空港での検疫も大幅に緩和され、成田空港では簡素化した手続きを足早に済ませる人たちの姿が見られました。
新たな検疫措置は国や地域を現地の状況などから3つのグループに分けます。
このうち、感染リスクが最も低いとされたアメリカや韓国など98の国と地域の入国者は、抗原検査とワクチンの接種証明の提示が免除されます。
検疫がすぐに終わり、びっくりしました。少しずつ日常が戻ってきているのかなと思いました。
以前は2時間以上かかった検査もきょうはなく、スムーズでした。便利になったと思います。
厚生労働省によりますと、今回の緩和で抗原検査とワクチン証明の提示をいずれも免除される入国者は全体の80%程度に上る見通しで、このほかの入国者も多くが条件を満たせば一部の検査を免除されます。
松野官房長官は、外国人観光客の受け入れ再開は地域経済にも効果があるとして、今後も感染状況を踏まえながら段階的に緩和を進めていく考えを示しました。
松野官房長官
「円安によるメリットを受けられるインバウンドの再開は、地域経済にとっても大きな意味がある。最大限の警戒感を維持しながら徐々に社会経済活動を回復していく」
〇今後の水際対策
「感染拡大の防止と社会経済活動のバランスをとりながら引き続き段階的な緩和を進めていく。検疫体制や防疫措置の実施状況などを勘案して、国内外のニーズや新型コロナの内外の感染状況、主要国の水際対策の状況などをふまえながら適切に判断していく」
外国人観光客の受け入れが6月10日から再開されるのを前に、観光庁は、旅行会社向けのガイドラインを7日公表しました。
観光庁は、5月下旬実施した、試験的な訪日ツアーの結果などを反映したガイドラインを7日公表しました。
ガイドラインでは、旅行会社がツアーを販売する際に参加者に対して、マスクの着用をはじめ感染防止対策を徹底することや、国内で入院したり治療を受けたりする場合に備えて、民間の医療保険に加入してもらうことなどを説明し、同意を得ることが盛り込まれています。
こうした手順に従わない場合は、ツアーへの参加が認められない可能性があるということです。また、ツアー中は、添乗員が場面に応じて感染対策のこまめな注意喚起を行うよう求めています。
一方、陽性者が出た場合に備えて、旅行会社に対し、あらかじめ自治体の相談窓口などを確認したうえで、陽性者の医療機関への受診対応や濃厚接触者の範囲を特定することを求めています。
斉藤国土交通相
「内容を遵守していただくことが円滑な訪日観光の再開や、その後の受け入れ拡大につながる」
外国人観光客の受け入れ再開を前に実施している試験的な団体旅行で、タイから大分県を訪れている客の1人が新型コロナウイルスに感染したことが分かりました。
観光庁によりますと、この客を含むグループのツアーを中止しましたが、6月10日からの受け入れ再開の方針に変わりはないとしています。
新型コロナウイルスの感染が確認されたのは、観光庁の試験的な団体旅行で5月27日にタイから訪れ、大分県内に滞在していた客の1人です。
観光庁によりますとこのツアー客は30日、のどの痛みを訴え、医療機関で抗原検査を受けた結果、新型コロナウイルスに感染していることが確認されたということです。
この客は合わせて4人のグループで参加していましたが、観光庁はこのグループのツアーを中止しました。感染した客の症状は軽く、宿泊療養用のホテルに入ったほか、同行していたほかの3人の客は濃厚接触者にあたるとして、別のホテルで待機しています。
6月10日からは、98の国と地域について添乗員付きのツアー客に限定し、外国人観光客の受け入れが再開されることから、東京・浅草の人力車を運営する店では、英語の研修を再開するなど準備を進めています。
東京・浅草で人力車を25年運営する店では、人力車を引くスタッフ向けに、英語で雷門や隅田川などの名所を紹介するためのテキストの配付や、スタッフどうしの英語の研修を先月から再開しました。
いずれも新型コロナの感染が拡大し、外国人観光客が減少したおととしから取りやめていました。
1日は、人力車を引く仕事を始めて1か月に満たない新人の男性がテキストの文章を声に出しながら練習していました。
店によりますと、新型コロナの影響で、おととしと去年の売り上げは感染拡大前に比べおよそ3割にまで減少したということで、外国人観光客の受け入れ再開で売り上げの回復に期待を寄せています。
人力車を運営 藤原英則代表
「ここまで我慢してきたので失った2年を取り戻せるよう感染対策も徹底しながら頑張りたい。人力車が世界の人とつながる橋渡しになればと思う」
また、東京・浅草の土産物の販売店では、外国人観光客の受け入れ再開に向け、外国人に人気のある商品を仕入れ売り場の切り替えを進めています。
東京・浅草の仲見世商店街にある創業120年以上の土産物の販売店では、外国人観光客に人気がある富士山などの名所のマグネットの在庫を5倍以上に増やし、日本の観光客が好む商品の売り場の一部をマグネットに切り替えました。
店によりますと、新型コロナの感染拡大前は、外国人観光客による購入がおよそ8割を占めていたことから、おととしと去年の売り上げは感染拡大前の10分の1以下に落ち込んだということで、受け入れの再開を歓迎しています。
店主 朝比奈裕次さん
「これまでの商売は相当厳しかったので、受け入れ再開は期待以外のなにものでもない。感染者が増えて同じ状況が繰り返されないよう、店内でも感染対策の注意喚起をしていきたい。やっと来て頂けてうれしいし、外国の方も日本に来られてよかったと思ってもらえたらそれが一番だと思う」
新型コロナの水際対策をめぐっては、ことし3月から観光を除く新規入国が再開されています。
日本への帰国者も含めた1日あたりの入国者数の上限の推移は次の通りです。
3月1日:5000人
3月14日:7000人
4月10日:1万人
6月1日:2万人
ただ、感染拡大前の2019年の1日あたりの平均はおよそ14万人だったことから、依然として7分の1程度となっています。
日本からの海外への渡航については、ワクチン接種を終えていれば入国できる国がある一方、観光目的での入国は制限している国もあり、新型コロナによる入国制限の措置や条件などは国や地域によって分かれています。
外務省のまとめによりますと、31日時点で、日本からの渡航者などに入国制限措置をとっているのは38の国や地域で、入国する際に何らかの条件や自主隔離などの行動制限を課しているのは160の国や地域となっています。
中国
入国制限と行動制限のいずれの措置もとっていて、中国で働く予定がある人や家族の看病や葬儀で入国する人などに限られ、観光目的での入国はできません。
オーストラリア
ワクチン接種を終えていれば入国が可能
アメリカ
原則としてワクチンの接種証明の提示や陰性証明書が求められますが、観光目的の入国も可能だということです。
外務省の担当者
「日本からの観光目的の入国を緩和する動きもあるが、国や地域で対応が異なるので渡航先の情報をよく確認してほしい」
日本から海外旅行に向かう動きも活発になっています。
韓国への観光ビザの発給が1日再開され、大阪の韓国総領事館では、ビザを申請する人たちが次々と訪れていました。
韓国政府は新型コロナの感染が確認されてから中断していた観光などを目的としたビザの発給を1日から再開しました。
大阪・中央区にある韓国総領事館では、韓国旅行に必要なビザを申請する人たちが次々と訪れていました。
旅行に行きたくてビザの申請に来ました。すでに並んでいる人が100人近くもいてあとから来た人は申請を断られていました。
コロナ禍で我慢していましたが早く旅行に行きたくてきょう来ました。SNSで情報を集めていたので多くの人が申請に来るのではないかと思っていました。
大阪の韓国総領事館によりますと予想を大きく上回る申請があったため、1日午前の時点で受け付けをいったん打ち切り、2日以降のビザの申請はメールでの事前予約制に変更するということです。