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母親から受けた虐待の記憶で苦しむ19歳 “心の傷は治らない”

  • 2022年5月10日

「お母さんの機嫌を損ねると、髪の毛をつかまれて殴られて。『そんな目で見るんじゃないとか、その目が嫌いなんだ』と…」
幼いころから母親に虐待を受けていたという19歳の女性。自分に原因があると自分を責め続けていました。
「殴られた傷は、表面上はすぐ治るんですけど、心の傷は治らないんですよ」

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虐待の記憶で苦しむ19歳の“おとさん”

母親から虐待をうけて育ったという19歳の、おとさん(仮名)。母親の機嫌を損ねないように顔色を見ながら過ごしてきましたが、それでも日常的に暴力や暴言をうけてきたそうです。中学生になってからは精神的な不調にも悩まされてきました。

おとさん
「子どもの生きづらさを知ってほしい。未成年ってだけで制限がたくさんあって、親の許可をえなければしちゃいけないっていうのは、親がまともじゃなかったら何もできないから改めてほしい」

“自分が悪い”自分を責め続けた日々

記憶では、虐待を受けていたのは長い期間ではなかったといいます。“虐待”について、小学校の道徳の授業でも学びましたが、それはひとごとととらえ、「母親が怒るのは自分が悪いせい」だと思っていたそうです。中学生になり、仲良くしていた図書館の司書の先生に家の中のことを話したことがきっかけで、学校のカウンセリングを受けることになりました。

おとさん
「『自分に原因がある、自分が悪いからお母さんはこうするんだ』というのが自分の中で絶対的なものとしてあったので、私のせいだと自分を責め続けて生活していました。カウンセリングを受けてみないかと言われて初めて、『私の家は、ちょっと変わっているのかなあ、私の親ってちょっとほかと違うのかもしれない』と思いました」

止まらない自傷行為…

このころ、精神的な不調から、自傷行為が止まらずリストカットをするようになりました。学校の先生からは病院での受診を勧められましたが、母親は連れて行ってくれず、高校2年生の冬に、アルバイト代をためて母親には内緒で心療内科を受診し、薬を処方してもらいました。しかし、専門的なカウンセリングをうけるためには、18歳未満は親の同意書が必要だと説明を受けたといいます。

おとさん
「親からも愛されていない、自己肯定感もない状態で過ごしていたので死んでしまおう、でも、自分でどうにかしなきゃという思いがありました。何か自分で行動して変わりたいと思っているけど、親の同意が必要となると、親が理解あるなら簡単にできちゃうかもしれませんが、やっぱり親と私みたいな関係の人は無理なんです。
リストカットは、跡になってもう消えないだろうって…。痛いんですよ。何が痛いって心も痛いし腕も痛いし。ただそうしないと自分の心の痛みがわからないからそうしてしまう。
母親から殴られた傷とか傷つけられた傷は、表面上はすぐ治るんですけど心の傷は治らないんですよ」

大人に伝えたいこと“子どものサインを拾って”

おとさんに大人に伝えたいことを改めて聞きました。

おとさん
「学校の先生など近くにいる周りの大人には子どもの少しの変化でも気づいてほしい。“苦しいから助けて”と言えない子の方が多いと思う。でも本当につらくなったときに、ぽろっと本音を言うことがある。なんとなく笑って話しながらかもしれない。それに気づいてほしいというのがいちばんですね。私の場合は司書の先生がいたからスクールカウンセリングという居場所につながった。人とのつながりがあるから、死にたいけど死にたくないんです」

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