「本にしおりを挟むのと同じように、また物語を再開するため必要なステップ」
建て替えられることになった「三省堂書店」神保町本店。現在の建物での最後の営業日に亀井崇雄社長はあいさつしました。本の街のランドマークに親しんできた人はどのようなことを感じたのでしょうか。また、次の世代の書店への思いは。その声を集めました。
三省堂書店は創業141年の歴史を持つ老舗の書店です。売り場面積およそ1000坪、取り扱い書籍は140万冊に上る神保町本店ビルは、1981年に完成しました。
神保町本店ビルは、書店や古書店が集まる世界有数の本の街、東京・神田のランドマークとして親しまれてきましたが、施設の老朽化を理由に建て替えることが決まり、店舗を一時閉じることになりました。
現在の店舗での最後の営業日となった8日、利用客が次々と店を訪れ、建物を背景に写真を撮るなど別れを惜しむ姿が見られました。
子どもの本はいつもこの店に来て買っていたので、慣れ親しんだ空間がなくなってしまうことに寂しさがあります。最後の日に子どもと来ることができてよかったです。
学生時代とかよく通っていました。なくなるわけではないのでまた新しい店舗に来たい。ただ。昭和の感じがなくなってしまう。この街もそうなっていくのがちょっと寂しい。
営業終了後のセレモニーで、三省堂書店の亀井崇雄社長は「神保町本店は一時閉店をさせていただきますが、あくまで1つの区切りだと考えています。 本にしおりを挟むのと同じように、また物語を再開するため必要なステップです。 わたしたちは、この時代の大転換期に第2の創業のつもりで次世代の新しい書店を目指す挑戦をすることを決意いたしました」などとあいさつしました。
亀井崇雄社長
「建て替えは何年もかけて計画してきましたが、世の中を一変させてしまったコロナ禍とタイミングが重なってしまいました。かつて経験したことのない混迷の時を迎えています。 お客様の買い物に対する価値観も少しずつ変わってしまいました。また生活様式も変化し、情報伝達技術も発達した中で、大型書店の存在意義というところも揺らいでいるのかもしれません。これからの時代に書店が世の中にどういうことが貢献できるのかということを改めて模索し、提案できるような形に持っていきたいと考えています」
三省堂の神保町本店は、6月1日から場所を移して仮店舗での営業を行い、ビルの建て替え後の新店舗での営業再開は2025年を予定しています。
元書店員の母袋幸代さん
「この建物の独特のにおいというものを神保町に来るとまず感じます。木や紙、ほこりが混じったようなにおいがあって、この建物で30年間働いていたので、ここに来ると安心感と本と一緒にいられる気持ちになります。それがなくなってしまうことがすごく寂しい。
思い出を作ってくれてありがたいのですが、新しい建物になって、いろいろな人の新しい思い出になってほしいという思いでいっぱいです」