新型コロナ対策のまん延防止等重点措置について、政府は、3月21日の期限をもって関東地方の1都6県など、適用されているすべての地域で解除することを決めました。感染再拡大の防止と社会経済活動の回復の両立が焦点となる中で、厳しい状況が続く医療や介護の現場は解除についてどう見ているのでしょうか。変更された基本的対処方針と医療や介護の現場の声をまとめました。
関東地方の1都6県など18都道府県に適用されている新型コロナ対策のまん延防止等重点措置について、専門家でつくる政府の分科会は、すべての地域で3月21日の期限をもって解除する方針を了承し、政府は17日夜、解除を決めました。
また、社会経済活動を維持するため、地域の感染状況や保健所の体制などによっては、感染リスクが低い一般の事業所などでは濃厚接触者の特定を求めず、一律の出勤制限を行わないとすることなども決定しました。
どの地域にも重点措置が出されていない状況となるのは、ことし1月8日以来、およそ2か月半ぶりとなります。
重点措置の解除について、新型コロナ患者の治療にあたる病院からは感染者は十分に減っておらず医療現場の負担は続いているという声があがっています。
埼玉県川口市の埼玉協同病院では、軽症から中等症までの新型コロナの患者の入院を受け入れているほか、発熱外来を設けてPCR検査などを行っています。
コロナ患者向けの15床の入院病床は、定員超えが続いていた2月からはいくぶん落ち着いたものの、現在も満床に近い状態が続いているということです。
また、心不全や脳梗塞などで入院するために検査を受けた人に感染が確認され、コロナと並行して治療しなければならないことも少なくないということです。
このため緊急性がない手術を延期しなければならないケースが出るなど、コロナ以外の一般医療への影響も続いているということです。また、救急車の受け入れを要請されても現在も3割程度しか受け入れることができていない状態が継続しているということです。
埼玉協同病院 守谷能和医師
「現在も発熱外来で検査を受ける人の5割から6割が陽性になり、陽性率の高い状態が続いている。入院患者の状況がいま一番大変で、高齢の患者が多いため、重症化しなくても心不全になったり、動けなくなったりして、退院までに非常に時間がかかってしまう。
感染者が増えても病床や医療従事者の数は限られているので、今後、感染の波が高くなっても対応には限界がある。現在は感染者が十分に減っている状況ではなく、これ以上の波が来ると太刀打ちできない」
また、高齢者を支える介護現場からは戸惑いの声があがっています。厚生労働省のまとめによりますと、14日までの1週間に高齢者施設で発生したクラスターなどの数は341件と過去最多となった前の週から168件減ったものの、今も高い水準が続いています。
クラスターを経験した高齢者施設のひとつ千葉県柏市の特別養護老人ホームでは、1月から2月末にかけて入所する高齢者と職員あわせて22人が感染しました。
感染した高齢者1人は死亡し、1人は今も入院しています。
施設では検査キットなどの資材も十分ではない中、手探りで対応を続けましたが職員は次々と感染して人手が足りなくなり、管理職が連日、夜勤などをしてしのぎました。現在は、感染は収まっているものの、対応を続けてきた職員は心身ともに疲弊しているということで、中には退職を申し出る人も出ているといいます。
また、近くの施設では今もクラスターが相次いでいるということで、まん延防止等重点措置が解除されても、入所者と家族の対面での面会制限を継続するほか、外出を控えることも続けざるをえない状態で、入所者の身体機能や認知機能の低下が懸念されるとしています。
特別養護老人ホーム 宇佐見さくら施設長
「オミクロン株は感染力が強くひとたび感染するとあっという間に広がってしまった。現在も施設内にウイルスを持ち込まないよう細心の注意を払っているが、市中で感染が広がってしまうと防ぎようがない。まん延防止等重点措置が解除されることによって、人流が増加して再び感染が増えないか心配だ。
早く入所者の日常生活を取り戻したいが、感染が広がっている限り、命を守るために対策を緩めることができず板挟みだ。措置が解除されても再び感染が広がらないようリスクの高い行動は控えて欲しい。行政には再び感染が増えた時に備えて検査体制の整備や介護人材の応援、金銭的な支援策などを整えてほしい」
政府は、新型コロナ対策の基本的対処方針を変更しました。方針では、地域の感染状況や保健所の体制などによって、自治体は感染リスクが高い家庭内、それに医療機関や高齢者施設などで、濃厚接触者の特定を行うとしています。
一方、感染リスクが低い一般の事業所などでは濃厚接触者の特定を求めず、一律の出勤制限は行わないとしています。そのうえで、濃厚接触者の待機期間について、家庭内で感染があった場合を含め、4日目と5日目の検査が陰性であれば5日目に待機を解除できるようにし、医療機関や高齢者施設、保育所などで働く人は、毎日の検査で陰性であれば、その日の業務を行えるようにするとしています。
ワクチンの4回目接種については、海外の動向や3回目接種の効果がどのくらい持続するかといった最新の知見を踏まえて検討するとともに、接種の実施を視野に入れ、必要なワクチンを確保するとしています。
また、12歳から17歳までを対象にした3回目接種については、予防接種法に基づく予防接種として位置づけられれば、来月から接種を始められるよう、自治体で準備を進めるとしています。
さらに、飲食やイベント、旅行などの際に、ワクチンの接種歴や陰性の検査結果を確認する取り組みを推奨し、イベントの開催にあたっては、まん延防止等重点措置の対象地域では、感染防止のための計画を作り、都道府県による確認を受ければ、これまで2万人に設定していた収容人数の上限を、定員まで認めるとしています。