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那須サファリパーク 飼育員はなぜトラに襲われたのか これまでわかっていること

  • 2022年1月8日

栃木県の「那須サファリパーク」で5日、飼育員3人がトラに襲われてけがをし、このうち1人は右手首から先を失いました。この事故は、本来トラがいるはずのなかった場所で起きており、7日には警察が業務上過失傷害の疑いで施設の捜索を行いました。
8日に掲載した記事に、その後の情報を追記し、わかっていることをまとめています。

本来いないはずの通路で…

5日午前、栃木県那須町の那須サファリパークで飼育員の男女3人がトラに襲われ、このうち22歳の女性飼育員は右手首から先を失う大けがをしました。

奥の建物が飼育施設

当時は、26歳の女性飼育員が、開園に向けて屋内の飼育施設から屋外に移動させる準備をしていて本来、トラがいないはずの移動用の通路付近で鉢合わせして襲われたとみられるということです。そして悲鳴を聞いて駆けつけた2人の飼育員も相次いで襲われたということです。

開演前のわずか10分足らずで

3人の飼育員がトラに襲われたのは開園前の10分足らずのあいだでした。施設への取材から当時の状況が次第に明らかになってきました。
事故が起きた屋内の飼育施設は、夜に過ごす小部屋と、屋外の放し飼いスペースにつながる「通路」に分かれています。

施設では朝、動物を外に出す前に、飼育員が外側から周辺に危険がないか点検します。
ところが、5日は点検の際に通る通路が凍結していました。このため、トラ担当の26歳の女性飼育員が空いている小部屋と通路を通って外に出ようとしたところ、本来、トラがいるはずのない通路で鉢合わせしたとみられています。
5日、報道陣の取材に対して、那須サファリパーク 葛原直人支配人は上記の施設の図面を示しながら以下のように答えています。

 葛原直人支配人
「トラを展示するスペースに出すときに、そのスペースの安全確認をして、その後に動物を出すという作業に入りますが、そのトラを出す前の段階での安全確認のときに起きた事故です。
最初に被害に遭った女性飼育員に関しては、そこにトラがいないと思っていたところに扉を開けてしまって、自分のいるスペースにトラが来てしまったということです。ほかの2名に関しましては女性の社員を助けようとして後から入っていったということです。
動物を展示スペースに放つ時には2名体制というのが原則で徹底をしているのですが、今回は安全確認のための作業のため1人でした。トラが本来いない獣舎を通って外に出ようとしたところにトラがいてしまったために起きてしまった事故だと、今のところは推定しております。
本当に詳細の当時の状況がまだわからないで、徹底的に事故の原因を調べ再び事故を起こさないようにできるかぎりの対策をとってまいりたいと思っております」

襲ったのは人気ランク1位のトラ

施設によりますと、飼育員を襲ったのは、「ボルタ」という愛称の11歳のオスのベンガルトラです。体長2メートル、体重が150キロほどあり、世界で30頭ほどしか飼育されていないとされる金色の毛並みが特徴だということです。

ボルタ(右)

施設では、とら年にちなんで、1月2日に動画投稿サイトのYouTubeで特集動画を公開していました。動画では、全国のサファリパークや動物園が参加する「推し虎グランプリ」という来園者の人気投票のランキングで現在、1位になっていることを紹介しています。施設によりますと、「ボルタ」は表情が癒やし系だとして施設の動物の中で人気があるということです。

「那須サファリパーク」は、トラやホワイトライオンなど70種類、700頭の動物が放し飼いされ、来園者が車で移動して動物の様子を楽しむ施設ですが、事故を受けて当面、休園するとしています。
この施設では、平成9年と平成12年にも飼育員などがライオンにかまれて大けがをする事故が起きています。
 

トラは前夜 獣舎に戻っていなかった?

今回の事故では、施設のマニュアルに反し、前日の夜にトラが獣舎に戻されていなかった疑いがあることが施設側の調査でわかりました。
施設のマニュアルでは、夜間、トラを鍵のかかる獣舎に戻すことが定められています。ところが前日の夜、担当した別の飼育員はマニュアルに反し、トラが獣舎に入ったのを確認していなかったということです。トラは一晩中、獣舎の外の飼育員を襲った通路にいた疑いがあるということです。

この事故を受けて、動物園などで作る日本動物園水族館協会が再発防止策を検討するため10日、現地調査を行ったことが関係者への取材でわかりました。
今回の現地調査の結果、前日の担当飼育員2人は、当時、おりのある建物周辺に雪が積もっていたため業務マニュアルの手順にない雪かきを行っていたことが新たにわかったということです。
日本動物園水族館協会は、普段行わない除雪作業に追われてトラがおりにはいったかどうか確認が不十分になったとみて、事故原因と再発防止の指針を近くまとめ、全国の動物園やサファリパークに注意喚起する方針です。 

那須サファリパークの広報担当者は、NHKの取材に対し、日本動物園水族館協会の現地調査に協力したことを認めたうえで、「飼育員がどういう行動をとったかは調査中なので公表できる段階にない」と話しています。

専門家 “同じ空間には入らない”徹底を

今回の事故について、専門家は次のように指摘しています。

日本動物園水族館協会 成島悦雄専務理事
「動物が居住スペースに入りたくないなどのケースはある。何らかの事情で前の晩に飼育員がトラを通路に置き去りにしたのであれば、そのことを別の飼育員に伝えるなど連絡を怠ったことが問題だ。襲われた女性の飼育員もトラが居住スペースにいるだろうという『思い込み』が悲劇につながった。トラはネコの大きなぬいぐるみのように見られがちだが、猛獣なので、『同じ空間には入らない』ということを徹底することが重要だ」

警察も本格捜査

警察は安全管理に問題がなかったか調べるため7日、業務上過失傷害の疑いで施設の捜索を行いました。午前9時半ごろに栃木県警の捜査員およそ20人が施設に入りました。

捜索に入る栃木県警 7日

施設によりますと、マニュアルでは夜間、トラを鍵のかかる獣舎に戻すことが定められていますが、トラは一晩中、獣舎の外の飼育員を襲った通路にいたとみられています。前日の夜に担当した別の飼育員は獣舎に戻したかどうかはっきり覚えていないなどと話しているということです。
これまでのところ、獣舎の扉などに不具合は見つかっていないということで、警察は、施設側の安全管理に問題がなかったか、押収した資料を分析するなどして業務上過失傷害の疑いで調べることにしています。

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