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都立高校の「男女別定員」撤廃の方針 制度見直しでどう変わる?

  • 2021年9月24日

都道府県立の高校で全国で唯一、男女別で定員を設けている都立高校は、今後、段階的に制度を見直し、性別で定員を分けるのをやめることになりました。撤廃の時期は未定ですが、性別によって合格点に差が生じている今の状態を解消する方向にかじを切った形です。これまでの経緯と制度見直しでどう変わるのか、詳しくお伝えします。

全国唯一の男女別定員制

都立高校の一般入試は、内申点を300点満点、5教科の学力検査を700点満点に換算し、合計1000点満点の中で、得点が高い順に合格が決まります。

しかし、東京は全国で唯一、都立高校の全日制普通科の定員が男女別に設けられ、女子のほうが高い点数をとらないと合格できない傾向があります。

都教委 制度見直しへ

24日に開かれた都の教育委員会でこれを段階的に見直し、性別で定員を分けることのない入試に移行することが報告されました。
性別で定員を分けることで今は合格点に差が生じていて、こうした状態を解消する方向にかじを切った形です。

今の制度を撤廃し、性別で定員を分けない制度に完全移行する時期は決まっていませんが、来年度の入試結果を分析するなどして判断するとしていて、藤田裕司教育長は「早期に移行を目指していく」と述べました。

一方、男女の合格点の差を是正するために現在行っている「緩和措置」を徐々に拡大します。この措置は、全体の定員の1割を性別に関係なく得点順で合格者を決めるというもので、これまでは一部の学校でのみ行われています。来年度の入試では109校すべてで実施し、その後は男女合同の定員の割合を2割に増やすということです。

東京都 小池知事
「方針が示されたことは承知している。受験生や中学校の進路指導に与える影響なども実際にあるので、入試の結果などの分析もしっかり行いながらスピード感を持って検討を進めてほしい」

約800人不合格 うち700人は女子

東京都教育委員会は、今年度の都立高校の入試で、男女別に定員が分かれている影響で合格点に差が生じ、およそ800人が不合格になっていたことを明らかにしました。このうちおよそ700人は女子生徒だったということです。

都の教育委員会は男女別に定員を分ける今の制度で行われた今年度の入試について、定員を分けなかった場合に結果がどうなっていたかを分析しました。
その結果、全日制普通科74校では、男女別に定員を分けたことで合格点に差が生じて、786人が不合格になりました。男女合同の定員で、合格点に差がなければ合格になっていたということです。786人のうちおよそ9割の691人は女子生徒で、残りの95人は男子生徒でした。

分析結果に基づいて今後、男女合同の定員に完全移行した場合をシミュレーションしたところ、全体では女子の合格者が今年度よりおよそ600人増え、男子の合格者はおよそ600人減少すると見込まれるということです。

制度見直し求めた教員や専門家は

制度の見直しを求めて署名活動を行い、都の教育委員会に提出した現役の都立高校の教員は、次のように話していました。

署名提出 現役の都立高校教員
「もちろん本来は即刻全廃すべきだろうとは思いますが、いきなり次の入試からとなると、かなり混乱が起きるのですぐに全廃できないのはしかたがない。世の中の動きに合わせて、より多くの生徒たちが報われるような制度の道筋を示してくれた発表だ。今後も注視していきたい」

また、教育現場のジェンダーについて研究してきた日本女性学習財団の村松泰子理事長は次のように指摘しています。

日本女性学習財団 村松泰子理事長
「ようやくここまで来たかと言う感じですよね。メディアや市民が本当に動いたことが、都教委を考えたのかなと思います。そういう意味では一歩前進ですが男女平等の本当の入り口で、機会均等が保障されてなかったので、それを是正するのは当然のことだと思います。緩和措置を慎重に徐々に広げ、各段階ごとに検証していくという感じなので全部で何年かかるのというふうに思いました」

担当記者が語る 問題の経緯と今後

高井アナ

この問題について改めて整理を。

野中記者

男子と女子の定員が別々に設定されていて、同じ学校でも男女によって合格ラインが異なるという問題です。多くの場合、女子の方が高い点数をとらないと合格できないのが実態です。
男女別定員を設けているのは都道府県立では唯一、都立高校の全日制の普通科の入試だけです。
都の担当者は「高校進学を希望する生徒全員が就学できるようにするためには“私立高校”と協調しての受け入れが必要だ」としています。制度がなくなると、都立に行く女子が増えて、都内の私立は女子高が多いため、男子の受け皿がなくなると指摘されてきたのです。

高井アナ

制度見直しでどう変わる?

野中記者

現在、男女の合格点の差を是正するために「緩和措置」というのがあります。
このグラフは緩和措置を進めた場合の男女別の合格者の推移を示しています。

野中記者

この緩和措置は、全体の定員の10%は性別に関係なく得点順で合格者を決めるというもので、今年度は110校のうち42校で行われましたが、来年度の入試では、すべてで実施します。その後、男女合同の定員の割合を20%に増やすということです。

 

措置の割合を増やすに伴って女子の合格者数が増えると想定されています。
最終段階の時期は明らかにされてはいませんが、制度が撤廃されると最終的には女子の合格者が600人増え、反対に男子が600人減ると見られています。

 

社会でジェンダー平等への意識が高まる中で、70年以上続いてきた制度が変革を迫られたという現れのひとつだと感じました。

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