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日航ジャンボ機墜落事故から36年 遺族が語った思い

  • 2021年8月12日

国内の航空機事故としては最も多い520人が犠牲になった日航ジャンボ機の墜落事故から12日で36年。墜落現場の群馬県上野村では新型コロナウイルスの影響などにより、ことしも遺族や関係者に限って慰霊の登山が行われました。36年の月日がたつなか、遺族が語った思いを取材しました。

墜落事故から36年 遺族などが慰霊登山

昭和60年8月12日、お盆の帰省客などを乗せた日本航空のジャンボ機が群馬県上野村の山中に墜落し、520人が犠牲になりました。

事故から36年となる12日は、遺族などが墜落現場の「御巣鷹の尾根」を目指して慰霊の登山に訪れました。
例年、8月12日は一般の人も含め、多くの人が慰霊の登山に訪れますが、村などは新型コロナの感染防止などのため去年に続いて、ことしも登れる人を遺族や関係者に限っています。

現場付近や慰霊碑の「昇魂之碑」の前では、訪れた人たちが手を合わせて犠牲者を悼んでいました。

「月日は関係ない・・・」

事故で高校2年生だった長女の知美さん(当時16)と、中学2年生だった次女の薫さん(当時14)の2人の娘を亡くした山岡清子さん(75)は、長男の直樹さん(54)たちと大阪から慰霊の登山に訪れました。

墓標の前に着くと、数年前から、ようやく置けるようになったという娘2人の写真を置き、お菓子などを供えて静かに手を合わせていました。

2人が寂しくならないようにと、墓標のそばにツツジの木の苗を植えました。

清子さん
「ことしは、新型コロナや2月に足を骨折したこともあり、直前まで中止するつもりでしたが、年齢のこともあり、もう来年からは登ることができない可能性もあるので、なんとか娘に会いに来ました。きれいに苗を植えられたので、娘たちも喜んでいると思います」

長男の直樹さん
「『ことしもなんとか母を連れてきたよ』と伝えました。36年という月日がたったが、突然事故で家族を奪われて、年数って関係ない。時間がたったからといって悲しさが減るわけではない。今後も慰霊の登山を続けていきたいです」

「この日に来ないと後悔する。みんな元気だよって伝えた」

事故で兄の栗原崇志さん(当時33)を亡くした栃木県の橋本毅さん(67)は、息子夫婦と愛犬と一緒に慰霊の登山に訪れました。

おととしまでは、月命日の慰霊登山を続けていましたが、去年からは台風で道が崩れた影響や新型コロナのため、登る回数は大きく減ったということです。

橋本さん
「ことしは、新型コロナの感染が拡大しているので、来ていいのかどうか直前まで迷いましたが、やはり、この日に来ないと後悔すると思って来ることにしました。36年は長かったような、あっという間だったかのような感じで『みんな元気だよ』とだけ伝えておきました。この事故はずっと伝え続けていかないといけない」

父へ「みんな幸せに暮らしているよ」

事故で父親の榊原勝さん(当時52)を亡くした横浜市の宮沢淳子さん(62)は、家族6人で、慰霊の登山に訪れ、墓標の前で手を合わせていました。

ことしは初めて宮沢さんの双子の孫も連れてきました。

宮沢さん
「自分の年齢が、亡くなった父を超えた時に『もっと生きたかったよね』と再び悲しみがきました。亡くなった父に孫を会わせたかったので孫と一緒に登ることができてうれしかったです。父には、みんな幸せに暮らしているよと報告しました」

「精いっぱい生きていると報告」

お笑いコンビの相方で、親友でもあった加藤博幸さん(当時21)を亡くした東京都の寺門史明さん(58)は、知人の市川香菜子さん(44)と慰霊の登山に訪れました。

寺門さん
「加藤さんの父が亡くなる前に、事故を風化させないでほしいと言っていたので、関心のある方をよく連れて来ています。加藤さんは遊びも仕事も真剣でした。そんな彼に怒られないように精いっぱい生きていると報告しました」

初めて登山に訪れた市川さん
「記事や本では捉えられないことを、自分の目や耳で確かめたかった。本当にことばにならない。事故で生きたくても生きられなかった人たちがたくさんいるので、精いっぱい自分の人生を力強く生きていきたいと思う。事故を風化させないように、高校生の娘にも感じたことを伝えていきます」

12日は、ふもとにある「慰霊の園」で墜落時刻の午後6時56分にあわせて黙とうを行う追悼慰霊式も去年に続いて規模を縮小し、村や日本航空の関係者など20人ほどで実施することにしています。

事故から36年がたち、高齢や新型コロナを理由にことしも登山を断念した遺族がいると見られ、事故の記憶や教訓をどう伝えていくかが課題となっています。

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