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「11ぴきのねこ」馬場のぼるさん デビュー前の未発表作品発見

  • 2021年7月22日

絵本「11ぴきのねこ」で知られる馬場のぼるさんが、昭和20年、デビュー前の18歳のころに描いた未発表の2つの漫画作品が見つかりました。馬場さんが長年住んでいた東京・練馬区の区立美術館などの調査で発見されたということです。

その作品や馬場さんについて、かつての担当編集者だった関谷裕子さんに詳しく聞きました。

未発表の漫画作品 没後20年で発見

未発表の漫画作品は、馬場さんの没後20年にあたることし、馬場さんが長年住んでいた東京・練馬区にある練馬区立美術館などが調査を進めていたところ、新たに見つかりました。

馬場さんの担当編集者だったこぐま社の関谷裕子編集長
「あまりにも細くきれいに、書き損じもなくて本当にびっくりしました。描きたいという思いが、(終戦後に)爆発した感じがしました。
18歳になるころですかね。素人なわけですよね、言ってみれば。迷いがないというか、文字の行がたくさんあっても最後の方で詰まってしまうこともなければ、絵もきちんと収まっていて、何度も直したかどうか分かりませんが、18歳の少年が描いたというのは信じられない」

「11ぴきのねこ」ベストセラーの原点は

馬場のぼるさんは昭和23年に漫画家としてデビューしました。11匹の猫が繰り広げるさまざまな冒険を描いた絵本「11ぴきのねこ」シリーズは、累計でおよそ460万部となるベストセラーとなっています。
今回は「11ぴきのねこ」のもとになったとみられる、おなかをすかせた猫が魚と間違えて城のシャチホコを食べに行く様子を描いた「ニャンニャン曼陀羅」という作品が掲載された雑誌も見つかりました。

関谷裕子編集長
「『11ぴきのねこ』という50年以上のロングセラーのシリーズのもとになった作品だと思います。話としては聞いていましたが、その漫画自体は誰も見たことがなかったものですから、これが言われていた漫画なのだと。目にしたのは今回が初めてです。
顔が白くてお腹と手足の先が白いという猫の形がちゃんとできていますし、モチーフとして、おなかをすかせた猫の集団が巨大な魚を取りに行くという、2つのことがきちんと描かれています。あのテーマが描きたかった、集団の猫と大きな魚と言うものを書きたかったのだなというのがはっきりわかりました。
世代を超えて『11ぴきのねこ』はファンが多い絵本なので、こんなところから始まったということ、そして馬場さんは漫画家なんだなということも含めて見ていただけたらすごくいいなと思います」

“漫画家しか描けない絵本を”

また、「宮本武蔵」と「龍虎の壷」という2つの未発表の漫画作品は、デビューする前の18歳のころ、終戦後間もない昭和20年10月に制作されたものです。

それぞれ、馬場さん自身が製本したとみられ、表情豊かな登場人物や背景も含めた細かい書き込みなど、デビュー前の段階から高度な技術を持っていたことがわかります。

関谷裕子編集長
「キャラクターがユーモラスに作ってあり、うまいというよりも、やはり漫画家なんだなぁと思いました。馬場さんは、漫画家が絵本を描いている、漫画家にしか描けない絵本を、絵でストーリーを語っている絵本を描きたいと話していました。児童漫画から出発して、大人の漫画も描くようになり、絵本の世界へ軸足を移していったわけで、自分の1番描きたいものをかける舞台はどこなのかを考えていた方なのかなと思います」

絵本や漫画 馬場さんをまるごと知る

今回見つかった資料は、今月25日から練馬区立美術館で行われる「まるごと馬場のぼる展」に展示されるということです。

練馬区立美術館
真子みほ学芸員

馬場さんの、絵本から漫画、スケッチブックなど、たくさんの資料を紹介する展覧会になります。馬場さんと言うと多くの方が「11ぴきのねこ」を思い浮かべると思いますが、それ以前の漫画家としての仕事と、仕事とは離れたところでの作品が登場しますので、いろいろな側面から馬場さんを知っていただく機会になると思います。

 

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