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東京五輪・パラ 海外選手の事前合宿 関東では14の自治体で中止

  • 2021年5月18日

東京オリンピック・パラリンピックで予定されている海外選手の事前合宿について、関東地方の1都6県では、国内の感染拡大への懸念などから14の自治体で受け入れが中止されたことがNHKのまとめでわかりました。専門家は、事前合宿の相次ぐ中止は国際交流という大会の意義が薄れるだけでなく、大会に向けた選手の調整に大きな差が生じるため競技の平等性でも問題があると指摘しています。

千葉6 栃木3 埼玉3 東京2の計14自治体で中止

東京オリンピック・パラリンピックでは、海外選手の事前合宿や交流を行うホストタウン事業に全国の528の自治体が登録し、そのほかにも事前合宿を個別に予定している自治体もあります。国の感染対策の指針では受け入れ側の自治体に対し、選手や自治体側の関係者を原則、毎日検査する体制を整えることや、移動にはチャーター機や貸し切りの新幹線を手配することなどを求めています。
こうした中、NHKが関東の1都6県に取材したところ、事前合宿を中止した国や地域がある自治体は、千葉県の6つの市と町、栃木県と埼玉県のそれぞれ3つの市と町、東京都の2つの市であわせて14自治体となっています。

事前合宿 中止を決めた自治体 国・地域 競技
栃木県 高根沢町

レソト王国

陸上・ボクシングなど

  矢板市

ハンガリー

自転車・ゴルフ

  小山市

ハンガリー

体操

埼玉県 上尾市

オーストラリア

柔道

  伊奈町

オーストラリア

柔道

  東松山市

キューバ

レスリング・テコンドーなど

千葉県 成田市

アメリカ

陸上

  佐倉市 アメリカ

陸上

  印西市 アメリカ

陸上

  浦安市

イギリス

車いすバスケ

  横芝光町

ペリーズ

陸上など

  長柄町

ロシア

フェンシング

東京都 多摩市

台湾

バドミントン

  国分寺市

ベトナム

パラ水泳


このほか、茨城県の2つの市と町では事前合宿の中止を打診され最終調整中だということです。全体としては、相手国側から感染拡大が収束しない中、選手の安全面が懸念されるなどとして、中止の打診があったケースが多く13自治体、自治体側からは、医療体制や練習場の課題などから中止を申し出たケースも3自治体ありました。
内閣官房によりますと、各自治体は国の指針にもとづき相手国側と協議を進めていますが、現時点で正式に受け入れの日程が決まったという自治体からの報告はなく、専門家は中止の動きはさらに広がる可能性があると指摘しています。

中止の理由は

中止の理由
相手側からの申し出

千葉県(成田市・佐倉市・印西市)
東京都(国分寺市)

自治体側からの申し出

栃木県(高根沢町)
埼玉県(東松山市)など


これまでに海外選手の事前合宿などの受け入れを中止した自治体の8割余りが、相手の国や地域からの申し出によるもので、関東地方では、世界的なトップ選手が所属するアメリカの陸上チームも千葉県の成田市、佐倉市、印西市で予定していた事前合宿を、選手の安全面への懸念から中止を決めています。
5月5日には、ベトナムが、東京・国分寺市などで予定していた事前合宿について、「世界的な感染状況を重く見て、合宿は行わない」などとして、自治体側に取りやめを連絡しています。

一方、自治体の側から中止を申し出たケースとしては、栃木県高根沢町はアフリカのレソト王国の陸上やボクシングなどの事前合宿を受け入れる予定でしたが、練習場となる体育館をワクチンの集団接種の会場に使用することなり、練習場が確保できないとして、受け入れを中止する意向を伝えたということです。

高根沢町 練習場はワクチンの集団接種会場に

また、埼玉県東松山市はキューバのテコンドーやレスリングチームが市内の大学の施設で練習などを予定していましたが、大学側から学生の支援を優先するため辞退したいと連絡があり、代替施設の調整がつかなかったため、5月12日に事前合宿の受け入れの中止を決めました。

千葉県横芝光町 “ワクチン接種との両立難しい”

中米・ベリーズのホストタウン、千葉県横芝光町は、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中ワクチン接種との両立が難しいうえ、選手の安全を確保できないなどとして事前合宿の受け入れ中止を決めました。

千葉県北東部にある横芝光町は、成田空港に近いことから子どもたちの国際教育につなげようと、3年前、中米・ベリーズのホストタウンの登録を受け、これまで町内の学校に現地の打楽器の楽団を招いて演奏会を開くなど交流を深めてきました。

大会期間中、陸上やカヌーの選手団10人程度を受け入れ宿泊場所や練習場を提供する予定でした。

ベリーズの陸上選手団が使用する予定だった競技場

しかし、準備にあたってきた町役場の担当職員4人のうち1人は、ワクチン接種の準備の担当にもなりその業務にほぼかかりきりとなった上、5月下旬から高齢者への集団接種が始まれば、さらに人手をさかれて受け入れ準備との両立が難しくなる見通しとなりました。

また、国の指針に沿ってコロナの感染拡大を踏まえた受け入れ計画を作成する中で、町内に唯一ある病院でもコロナの患者は受け入れていないため、万が一、選手が感染したりけがをしたりした場合に安全を確保できるかや、専用車両の運転手など選手団に接触する関係者にどれほどの行動管理を求めればいいのかなど、次々に不安な点が明らかになっていきました。

そしてベリーズ側とも協議を重ねた上、4月28日、事前合宿と大会後の交流事業の中止を決断しました。

佐藤晴彦町長
「コロナ対策のハードルが非常に高く、直接選手村に入ってもらったほうが選手にとってもいいし、町にとってもそこにかけるエネルギーははかりしれない。ワクチン接種という一大事業を最優先で進めながら、事前合宿を受け入れるのは極めて困難だった」

一方で、町は交流は途絶えさせたくないとしていて、17日も青年海外協力隊員としてベリーズで活動した経験がある町の職員が町内の高校に出向き、新入生を対象にベリーズについて学ぶ授業を行いました。

生徒
「ベリーズのことを学び、身近に感じることができたのでオリンピックでは日本と同じくらいベリーズを応援したいです」

町では、子どもたちから選手団に向けた応援動画を贈ることを計画しています。

自治体に求められる感染対策は

東京オリンピック・パラリンピックのホストタウンは、海外から多くの選手や観客が来日すると見込んで、各地で事前合宿の受け入れや国際交流を行い地域活性化を図ろうと国が初めて設けた制度です。
ホストタウンに登録した自治体は、交流事業の費用の半分を国が補助するかわりに、交流で得られた効果を東京大会の遺産=レガシーにするために大会後も含めて交流を継続することが求められています。

現在は全国の自治体のおよそ3割にあたる528の自治体が登録し、大会前の選手の事前合宿の受け入れや、選手と住民の交流を計画しています。

しかし、去年12月に国が示した感染対策の指針では自治体に一定の受け入れ責任が生じると明記され、大会前の交流はオンラインで行うなど選手と直接接触しないよう求めました。
また、変異したウイルスの流行を受けて4月、改定された指針では選手や選手と接触する可能性がある自治体側の関係者を原則として毎日検査することが新たに定められ、自治体は県などと連携して検査態勢を確保することが必要になりました。

さらに、空港や選手村から遠いホストタウンへの移動には、自治体の責任で通常の公共交通機関ではなくチャーター機や貸し切りの新幹線などを手配することを求めています。

国は指針の中で「直接の交流ができない中でも、お互いを励まし合い、大会への機運を高めていく取り組みが重要だ」と説明していますが、自治体からは交流の制約が厳しく対策の負担も大きいと戸惑いの声もあがっていました。

ホストタウンの事務局を務める内閣官房によりますと、各自治体は指針にもとづき相手国側と受け入れに向けた協議を進めていますが、現時点で正式に受け入れの日程が決まったという自治体からの報告はないということです。

専門家「大会の意義薄れるだけでなく、競技の平等性も問題」

スポーツ社会学が専門で東京女子体育大学の笹生心太准教授は、事前合宿の相次ぐ中止は国際交流という大会の意義が薄れるだけでなく、大会に向けた選手の調整に大きな差が生じるため競技の平等性でも問題があると指摘しています。

●NHKの調査結果について
「相手が中止したいといってきたケースが多く、受け入れる日本側の医療体制がしっかりしないと事前合宿もオリンピックも十分な形で開けないと感じた」

●自治体側が中止を決めたケースについて
「自治体は地域の医療体制がひっ迫して手が回らない。万が一感染している人が事前合宿に関わり、相手に感染させてしまったら取り返しがつかないと懸念する自治体も多いのではないか」

●事前合宿の中止の広がりと大会の開催について
「今後も中止の動きが広がる可能性がある。事前合宿が全て中止され、海外の選手団が選手村に直行して自国に直帰するぐらいでないと大会は開催できないのではないか」

●事前合宿の中止が大会に与える影響
「オリンピックの基本理念は国際交流を通じて世界平和に貢献することで、ホストタウンは一番、真ん中の事業だった。コロナ禍が起きたせいで直接の交流ができなくなったのは、かなりのマイナスだ。競技に対しても、大会前の調整は選手にとって大きなインパクトがあり、それがダメになるなら不利が大きすぎる。日本に近く時差の少ない国が有利になることが起きうるので競技の平等性に問題が生じる。世界最高の競技を見せることができないと思われて、大会への期待感がさらにしぼむ事態も十分ありうる」

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