「N501Y」と呼ばれる変異がある新型コロナのウイルスの感染が東京都などでも広がっています。このウイルスは感染力が強いとされ、従来型のウイルスと置き換わっていくとされています。このウイルスの特徴や、予想される感染拡大の規模、生活への影響などについて、感染症に詳しい国際医療福祉大学の松本哲哉教授に聞きました。
〇なぜ感染力が強いのか
N501Yの変異を持っているウイルスは、ヒトの細胞にくっつきやすいということと、体の中で増殖しやすいという特徴があると思います。そうすると、ひとりの体の中に持っているウイルスの量もかなりの量になります。それで、ほかの人にもウイルスが、ばらまかれてしまって、受けた方も多くの数のウイルスを吸い込んでしまうことになりますので、そうすると感染しやすいということになります。
〇ウイルス量が多く子どもも注意
従来のウイルスに比べて吐き出されるウイルス量が多くなりますと、若い人も同じように感染するし、まして子どもさんですね。従来は、10歳未満は、あまり感染が広がりやすい対象ではなかったのですね。ところが10歳未満のお子さんでも、それなりの割合で感染者数が出ています。そういう意味では子どもでも感染するということ、これは非常に重要な点だと思います。
〇基本的な症状は同じだが…
症状そのものは、発熱とかけん怠感とかそういったところから始まって、肺炎を起こせば咳や呼吸困難など、そういったことに関しては基本的には同じです。重要なのは、重症化するリスクですね。これが変異ウイルスの場合は高くなっていると考えられます。
〇若い人の場合は?
従来型のウイルスによるのであれば、基本的には若い方は、何らかの基礎疾患を持ってる方でなければ、重症化することはあまり考えなくてよかったわけですが、その変異ウイルスの場合は必ずしもそうとは言い切れない。明らかな基礎疾患などもっておられない方でも、一部には重症化しておられる方もいるようです。そういう意味でやはり、十分注意しなければいけないウイルスだと思います。
学校でも、クラスターがいろんなところで起こってくると思います。そして、特に小さいお子さんたちですね。保育園だとか幼稚園あるいは小学校の低学年ですとか、そういったところでクラスターが起きると、そこから家庭に持ち込む。すなわち、お子さんをきっかけとした家庭内感染での拡大ですね。こういう今までになかったような感染経路がどんどん増えてくる可能性もあります。これからは、子どもも十分な検査もしなければ、警戒もしていかなければ、感染は抑えられないような状況になるとは思います。
医療現場はかなり深刻な状況になると思います。緊急事態宣言が解除されてから、今後医療体制をしっかり整えようという対応を進めようとしていた矢先に、急激にまた感染者数が増加していけば、ベッド数を増やす準備だとか、そういうものはもう間に合わない中での、感染拡大ですので。医療の連携にしても、もうちょっとできれば時間が欲しかった。
結局、第3波の時の状況とあまり変わらない医療体制で大きな波を迎えて、かつ第3波よりもさらに深刻な状況になるとすれば、いわゆる医療逼迫、医療崩壊という言葉が、同じように叫ばれるようなことになってしまうのではないかと思います。辛くもう本当に、厳しい状況になり得ると思います。
今の状況を考えますと、東京でも変異ウイルスによる感染拡大はもう確実だと思います。従来型のウイルスのみであれば、恐らく5月には東京でも1000人、その辺で、さらに強い策を講じれば、少しずつ減少する傾向になるかなと思っていました。ところが、変異ウイルスが確実に都内でも割合として増えてきていますので、そうすると、そのシナリオではなくて、このあと変異ウイルスがだんだん数として出てきますので、5月6月で確実に2000人、3000人くらいの、第3波と同じかあるいはそれを超えるぐらいの勢いの感染者数になってくるのではないかと思います。
〇効果的なのはワクチンだが
本来であれば、一番効果がでるのはワクチンです。これがスケジュール通りに広く行き渡っていけば、それなりの効果を出せると思います。ただ、残念ながら今のところ、どこまで予定通り、接種ができるかどうか、不透明な状況です。あとは、個人個人がなるべく感染しないように気をつけながら行動するしかないので、今までの感染対策を徹底していただくことしかないと思います。
〇“接触を減らす政策を” 状況を変えるには
あとは社会全体として、とにかく接触の頻度を減らすような政策を、国や自治体でやっていただかないと。緩い対策のままだと、結局は、長く時間もかかったり感染が減らせなかったりということになりますから。
国や自治体としての政策あるいは、個人個人で頑張ること、あとはもうとにかくワクチン接種が広がっていくこと。こういったことがいろんな状況で相まって、感染の拡大の状況が変わってくるんだろうと思います。
〇大型連休 “慎重な行動を”
ゴールデンウイークも含め、休みの計画もたてて、いろんな事をやりたいと、思われている方がおられるとは思うのですが、その時の感染の状況はわかりませんけれども、少なくとも今よりもかなり深刻な状況になっているだろうと推測されます。
リスクが高いような行動を取られてしまうと、そういったことがきっかけになってさらなる感染の拡大になっていくわけですね。残念ながら、あまり大胆な、あるいは、むちゃなことをやらないで過ごしていただきたいと思います。慎重な行動をとっていただく必要があると思います。