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障害者施設でコロナのクラスター ゾーニングが機能しなかった理由

  • 2021年3月15日

入所者と職員、合わせて53人が新型コロナウイルスに感染した栃木県佐野市の障害者施設では、病床がひっ迫し、入院できない感染者が施設にとどまった結果、感染が拡大しました。原因は感染が起きた場所と、そうでない場所を区分けする“ゾーニング”が機能しなかったことでした。

入所者47人と職員6人が感染 2人が亡くなる

感染拡大のさなかのことし1月、栃木県佐野市の障害者施設「とちのみ学園」の園長は電話でこう訴えました。

高澤茂夫園長
「職員は泣いてやっています。泣きながら、もうやらざるをえないということで。ご家族には万が一の時も入院はできませんと、ここで場合によってはお亡くなりになることもありえますということで理解をしていただいています」

施設で50年以上暮らしてきた、穏やかな性格の60代の女性。

 ちゃめっ気があり演歌が大好きだった70代の男性。

2人が亡くなりました。
施設では、知的障害などのある入所者47人と職員6人に感染が広がりました。

想定外の“入院できない” ゾーニングはしたけれど…

施設でのクラスターはどのようにして起きたのか。
初めて感染が確認されたのは、1月7日でした。当時は病院のベッドがいっぱいで、入院先が見つかりませんでした。

高澤茂夫園長
「感染者が出た場合のシミュレーションはしていたのですが、その中では感染した人は入院する、我々は濃厚接触者になった利用者の対応をどうするかという想定をしていました。なので、入院ができないというのは想定外で、職員もどうしたらいいだろうと一時はパニックになってしまった」

入院できない感染者がとどまることになり、施設は、感染が起きた場所と、そうでない場所を区分けする“ゾーニング”を試みます。
しかし、ここでも、想定外の事態に直面します。

感染した入所者が、ふだん暮らしていた部屋に戻ろうとするなどして施設内を歩き回り、感染を広げてしまったのです。

看護師
「入所者の行動を制御するのは無理ですね。ゾーニングについて職員が分かっていても利用者さんがなぜ行動を制限されているかが分からないので、結果的に重度の障害があって自分で動けない3人を除いて女性は全員陽性になりました」

施設が行った聞き取りで寄せられたのは、職員たちの切実な声でした。

「隔離をすることで対応できると思っていたが、甘かった」
「自分も陽性となり重症化するかもしれないという恐怖不安とともに過ごしていた」

職員
「とちのみ学園でも亡くなってしまった方もいるので、思い出すとすごく悔しい気持ちになったりだとか、すごく悲しくなりました」

園長は、こうした施設では、ゾーニングが機能しないことを前提に新たな対応策を検討する必要があるとしています。

高澤茂夫園長
「障害者施設の特性として、注意点などを理解できない人もいる中で、ここはレッドゾーン、ここはホワイトゾーンという安易なゾーン区分は難しい。感染症という目に見えない未知のものへの対応はやっぱり想定とは違うと実感している」

施設でのクラスターは各地で相次いでいて、大きな課題になっています。栃木県では、こうした施設に直接、医師を派遣して治療を行うなど、感染後も入院できないことも前提にした対策を進めています。 

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