東京都内で新型コロナウイルスの新規感染者の減少が鈍化しているのはなぜなのでしょうか。集団感染の分析や年代別などの感染状況、保健所や専門家の指摘をまとめました。
東京都内で発生した新型コロナウイルスの集団感染のうち、2月は21日までで「高齢者施設」と「医療機関」での感染が全体の8割あまりを占めていたことが都の分析で分かりました。
それによりますと、都内で起きた3人以上の集団感染は、感染が急拡大したことし1月には139件、先月は21日までで58件でした。
施設別でみてみます。
●1月
高齢者施設…63件 45%
医療機関…38件 27%
学校・教育施設…15件 11%
●2月
高齢者施設…32件 55%
医療機関…15件 26%
企業…5件 9%
2月は「高齢者施設」と「医療機関」をあわせると集団感染全体の81%を占め、この割合は1月の73%より上昇しています。
都によりますと、高齢者施設などでの感染は、職員をきっかけに広がったケースや、数人の感染が分かって入所者に検査を行うとほぼ全員が感染していたケースなどがあったということです。
都は、「高齢者施設や医療機関で感染が広がると重症化リスクが高い高齢者の感染につながる。こうした施設での感染防止を徹底する必要がある」としています。
また、都内では、新型コロナウイルスの感染確認が減少する一方、20代や30代を中心に若い世代の感染が依然、多くなっています。
都内では、2月の1か月間であわせて1万997人の感染が確認されました。
●年代別
20代…2091人 全体の19.0%
30代…1787人 16.2%
40代…1553人 14.1%
若い世代の感染が依然、多くなっています。
●感染経路がわかっている人
家庭内 44.7%
施設内 37.1%
職場内 6.7%
会食 2.9%
家庭内での感染が多い傾向は第2波が来ていた去年夏ごろから続いていて、都の専門家は、職場や会食などで感染した人が家庭にウイルスを持ち込んで広がっていると考えられるとしています。
一方、全体からみた割合は小さいものの、会食や職場で感染するケースは若い世代ほど目立っています。このうち会食では、全体の159人のうち、20代が56人で35.2%、30代が36人で22.6%と、20代と30代でおよそ6割を占めています。
都は、感染経路がわかっていない人の中にも、会食を通じた感染が疑われるケースが一定程度あり、実際の人数はさらに多い可能性があるとみています。都は、活発に活動する若い世代による感染の広がりを防ぐ必要があるとして、対策の徹底を呼びかけています。
東京都は、感染確認の7日間平均を前の週の7割以下に抑えることを目安にしていますが、1日時点で12日連続でこの目安を超えています。
小池知事は、都庁で記者団に対し「日曜日にいたっては下げ止まりどころか1週間前より増えている。7日間平均を前の週の7割以下に減らすことをずっと目安にしてきたが、だいたい8割、9割に近い」と述べました。
そのうえで、「もう一段、対策のギアを上げないと間に合わない事態が生じているのではないかという分析がある。1都3県で連携しながら、どういう方法がいいかまとめていくことが必要だ」と述べ、感染状況などのさらなる改善が見られなければ緊急事態宣言を解除できない可能性もあるとする考えを示唆しました。
都内ではなぜ、新型コロナウイルスの新規感染者の減少が鈍化しているのか。保健所からは、介護施設や医療機関で高齢者の感染が相次いでいることに加え、会食など飲食に関連した感染が続いていることも要因として指摘する声があがっています。
東京・北区では、ことし1月に新規感染者が大幅に増加しあわせて944人にのぼりましたが、その後、減少に転じて2月は263人と、3分の1以下に減りました。しかし、先月中旬以降は下げ止まりとなっています。先月12日までの1週間は新規感染者が43人でしたが、その翌週は62人と増加に転じています。
この要因について、北区保健所は、介護施設や医療機関で高齢者の感染が相次いでいることや、会食など飲食に関連した感染が続いていることなどを指摘しています。
感染経路の内訳を見ると、1月23日から先月5日までの2週間は家庭内感染の疑いが59人にのぼり、会食した人や飲食店の従業員などの飲食関連は7人でしたが、先月6日から19日までの2週間では家庭内感染の疑いは34人に減少した一方で、飲食関連は19人に増加しました。取引先や家族、それに友人などと会食して感染するケースや、飲食店の従業員が感染するケースも相次いでいるといいます。
北区保健所の前田秀雄所長
「飲食店では、夜に限らず昼間であっても、お酒を飲んでいなくても、マスクをつけず、十分な距離をとらないまま会話をすると感染してしまう。割合的には家庭内感染が多いが、その経路をたどると飲食関係で感染した人がウイルスを家庭に持ち込むケースも多い。また区内でも最近は外出する人が増えてきていて、感染者数の下げ止まり感が強い。このままでは感染者数が大きく減っていかない可能性があるので、宣言を解除するしないに関わらず、対策を強化していくべきだ」
感染症に詳しい東京医科大学の濱田篤郎教授は以下のように指摘します。
●首都圏で感染者数の下げ止まりの傾向が見える背景
「最近になって、再び飲み会や会食でクラスターが発生するケースが増え始めていると聞く。他の地域で緊急事態宣言が先行して解除されたり、感染者数も減少したりして、人々の警戒感が緩んできていることがあるのではないか」
●現在の感染状況について
「感染者の数は年末年始の時期に比べ減少したとは言え、最近は大きな減少が見られず、千葉県など逆にリバウンドの兆しが見られる地域も出てきている。また、現在の東京都の1日300人前後という感染者数は去年夏の第2波のピークとあまり変わらない水準だ。先週までの都のモニタリング会議の評価も感染状況、医療の状況ともに最も高い『赤』のレベルのままで、まだ強い危機感を持たねばならない状態が続いていると考えるべきだ」
「感染力が強いとされる変異株が確実に広がってきていることや、ワクチン接種を担う医療機関の負担を少しでも減らさねばならないことを考えると、現状よりもさらに感染者数を減らす必要がある。いまのままの状態で首都圏で緊急事態宣言が解除され、さらに人の流れが増加すれば、早い段階で再び感染者数が大きく増加してしまう懸念もある。宣言の解除は、もう少し感染者数が減った状態で行うべきではないか。感染者をさらに減らすためにも、これからの人事異動や卒業のシーズンでも会食を避けてもらうことが必要だ」