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企画ニュース

土地売買の悪質商法 新たな手口 8月29日

NHK千葉

佐野 豊

山林や原野など価格が低い土地を所有し、売れずに困っている高齢者を狙った悪質な商法が、今、各地で問題になっています。その新たな手口を取材しました。

 

関東地方に住む80代の夫婦です。

おととし、都内の不動産会社の社員を名乗る男から、栃木県の那須の別荘地に所有する土地の売却を持ちかけられました。広さ120坪の土地で、20年以上前に購入しましたが大きく値下がりし、別荘も建てることなく、長年、塩漬けになっていました。

夫は「電話をかけてきたのが『600万円で買います、売ってください』と。はじめに買った値段が860万円で、実際に売るとなると200万円、300万円。そうするとえらい差があるものですから、塩漬けにしとこうという発想だったんですけどね。600万円で買ってくれるなら、好条件に見えたんですね」といきさつを話します。

 

男からは、夫婦の土地を山林から宅地に換えて、民泊用の施設を作りたいと説明を受けました。

「『民泊』という言葉にだいぶつられちゃったんですけれどね。あんなところで民泊がはやるのかなと思って。外国人、中国人がいっぱい来ると想定してやっているのかなと」。

 

その後、「査定で値段が上がった」などと言われ、3回にわたって売却価格が引き上げられ、最終的には1200万円になりました。

一方で、「税金対策として金を預けてほしい。後日返済する」などと言われ、夫婦は合わせて1000万円を渡しました。

 

ところが土地の売却話を進めていた矢先、夫婦が別の土地を業者から買い取ったとする書類が自宅に届きました。

静岡県の伊豆にある原野を2200万円で買ったとする内容で、所有権も夫婦に移されていました。契約書には夫婦のサインもありましたが、全く身に覚えがありませんでした。

 

実は、このとき夫婦は「長年持っていた土地の売却」の話を入り口に、「新しい土地」を高く買わされる「下取り型」と呼ばれる手口の被害に遭っていたのです。

夫婦の土地の売却価格は1200万円でした。一方で、身に覚えの無い契約で伊豆の原野を夫婦が買い取ったとされた価格は2200万円で、2つの土地の差額は1000万円でした。

夫婦が税金対策などの名目で事前に預けた金額と一致します。この現金を返す必要はないと主張するため、業者側は2つの取り引きで差額が発生したように装ったのです。

その後、この取り引きなどを巡って男ら6人が組織的詐欺の罪で起訴されましたが、夫婦に1000万円は戻らず、ほとんど価値の無い伊豆の原野だげが残りました。

夫は「私どもの感覚としては、伊豆の土地を買うためのサインをした記憶はないんですよ。変だというか、ビックリしましたね。契約書が何でそんなになっちゃうんだろうと思って」と憤りを隠せません。

 

国民生活センターは、正当な取り引きだったと主張し被害者からの追及を受けにくくするための悪質な手口だとして、注意を呼びかけています。

国民生活センター相談情報部の加藤良太主査は「『あなたの土地を高値で買いますよ、原野を高値で買いますよ』と、売却勧誘の話から始まります。その背後には、土地の新たな購入契約というものがあるんですけども、そういった詳細な説明をせずに購入契約を結ばせる。契約書面上は、2つの土地取引の契約になっているので、そこから詐欺とは直ちに言いづらい。捜査をかく乱させる1つの手法になっている可能性はあったのではないのかなと考えています」と指摘しています。

 

なぜ夫婦は、新しい土地を買わされることになってしまったのでしょうか。取材にあたった千葉放送局の佐野豊記者は、次のように話しています。

 

「今回取材した夫婦は、業者から詳しい説明を受けずに複数の書類にサインしてしまっていたそうです。取材の過程で、別の被害者から同じ業者が作った契約書類を入手しました。小さく、2つの土地の売買代金を「相殺する」と書かれていましたが、業者から、新しい土地についての説明はなかったということです。

業者のセールストークには、タイムリーで大きな話題がよく使われます。かつてもリゾート開発があるとか、新幹線や高速道路の建設計画に絡めて、土地の値上がりが確実と信じ込ませる手口で被害が多発しました。国民生活センターは、2年後の東京オリンピック・パラリンピックに便乗した悪質な勧誘が増えるおそれがあるとして、注意を呼びかけています」。