ページトップへ

企画ニュース

19のいのち「あすへの一歩」広がるメッセージ“障害者と一緒に生きたほうがいい” 8月28日

社会部

間野 まりえ

障害者殺傷事件を乗り越える取り組みを見つめるコーナーです。

「障害者は不幸をつくる」と主張した植松被告を真っ向から否定し、「障害のある人とは一緒に生きていったほうがいい」とメッセージを発信し続ける人がいます。

そのメッセージが少しずつ広がり、次の一歩につながり始めています。

 

楽しそうにダンスをする人。

絵を描くのに集中している人。

実はこれ、知的障害のある人が働く横浜市のパン屋の日常風景です。

 

パン屋を営む高崎明さん。

高崎さんは、障害のある人たちが伸び伸びと楽しそうに働く姿を発信してきました。

 

「この人は寝てる写真でお客さんファンをつくっているから、寝ながら働いてることになるじゃん」と話す高崎さん。

彼らと過ごすことで心が豊かになり、必要な存在なんだと知ってもらいたいと考えています。

「相模原事件を考えると“障害者はいないほうがいいではなくて、いたほうがいい”という言葉だけじゃなくて、一緒に生きていくとこんなに楽しいことがあるよって事実を通して伝えている」。

 

その高崎さんのメッセージが、障害者と関わりのなかった人たちを動かし始めています。

この日、立教大学の学生たちが障害のある人と対話したいと店を訪れました。

 

しかし、はじめは何を話せばいいのかわからず、緊張気味の学生たち。

障害のある人がどんどん話し始めます。

「おいしい食べ物とかあれば“これ食べたいな”というのを聞きたいです」「板に動物の絵を描いたり」。

 

高崎さんがフェイスブックで発信していた男性は、この日も途中で輪から外れて寝てしまいました。

初対面でも飾ることなく自由に過ごす姿に、場の空気も徐々にほぐれます。

 

「鉄道の絵を見て描きます」と話す男性に対して「見るのが好きですか、形が好きなのか、乗るのが好きですか」と、学生たちも自然と話しかけられるようになります。

障害者と健常者という立場を超えた関係を築けるのではないかと、高崎さんは感じていました。

「彼らとこうやってフラットな関係でお話しにきた人って初めてだったので、すごくおもしろかったです」。

 

参加した学生からは「実際に対話をしてみると言葉の表現が素直で温かくて」とか、「障害とはこういうものなんだって考えるのではなくて、そこにいる人たちと関係性をどう築いていくかを考えないといけない」といった感想が聞かれました。

 

さらに、高崎さんのメッセージがきっかけで、同じような活動を始めようと動き出した人もいます。

北九州市の西山典子さんです。

 

息子の壮馬さんは脳性まひで障害があり、どう接すればいいのか悩んでいた時期がありました。

「障害を抱えさせてしまったという責めと、うまく子育てができない自分を責めるばっかりでね」。

 

そんな時、高崎さんのブログに出会い、家族で店を訪れました。

「笑っているし、楽しそうだし、みんな集まってくるし、声をかけてくれるし。あそこに行ったことで自分を責めていたことを全部ぬぐいとってもらったというか、そんな感じでした」と当時を振り返る西山さん。

 

自分の地域でも障害のある人が生き生きと暮らせるようにしたい。

そこで西山さんが作ったのが、同じように障害のある子どもがいる親と悩みを共有し、希望を見つけ出そうとする場でした。

 

「できたら障害者が働くカフェが作りたい。垣根がないというか、普通に客が来たかったから来たというカフェを作りたい」と話す女性に対して、西山さんは「自分のお子さんのことだけじゃなくて、いろんな方を受け入れたいっていう思いに私はすごいなあって思いました」と応えていました。

みずから動きだそうとする親も出てきて、西山さんも応援することになりました。

「お話し会でおすそわけした種が、またどこかの誰かにつながって誰かの希望になっているというのが、私なりの種まきができているのかなと思っています」。

メッセージの発信が次の誰かの一歩につながるように。地道な取り組みはこれからも続いていきます。

 

高崎さんは「きょうもあしたもあさってもずっと彼らと一緒に生きていると、いろんなおもしろいことがあって、そのことをみんなに伝えたい。ひとりでもたくさんの人が“彼らと一緒に生きていくっていいよね、楽しいよね”と思ってくれたらいいなと思っています」と話していました。