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企画ニュース

広がるか 寄付文化 5月1日

NHKさいたま

山下 由起子

病気の治療法の研究や子育て支援といった社会的な課題を解決するため、さまざまな手法で寄付を集めて問題解決につなげようという

新たな動きが出ています。

 

東京・練馬区にある中高一貫校、学芸大附属国際中等教育学校のボランティア部です。寄付をもっと普及させようと、さまざまな手法を生徒みずから考えています。

 

顧問の藤木正史先生が生徒たちに声をかけました。

「今回は絵本を作成するための資金集めのアイデア出しという大きなテーマです。よーい、スタート」。

 

昨年度は、LINEで120円で購入すると30円が寄付されるスタンプを販売し、集まった1万8000円余りを途上国支援のNPOなどに寄付しました。今年度はさらに寄付額を増やし、子ども向けの絵本を作ろうと考えています。出てきたアイデアは、子どもたちがトランポリンで遊んだ回数にあわせ、保護者から寄付を募る募金です。

 

「1分間で何回跳べるかで、その人の親が何回分のお金を募金する」と生徒が提案すると、藤木先生が「1分間でトランポリンを50回跳べたら親御さんが50回×10円みたいな形で」と確認。生徒は「親が1回何円って決めて、いっぱい跳んできてみたいな」。

 

藤木先生は「ファンドレイザー」という寄付金集めの専門の資格を持っています。寄付を募るには、「自分事」として捉えてもらうことが大事だとアドバイスしました。

「何かそこで縁のあるとか関係性のあるところをつないで共感を広げていくというのが、ファンドレイズするときに非常に重要かなと」。

 

ファンドレイザーとは。

「社会のために役に立ちたい」という人と「社会の課題解決に取り組む団体」をつなぐ、寄付集めの専門家です。税や助成金制度、それに企業の社会貢献活動に詳しく、より多くの寄付金を集めるためのアイディアを考えます。

 

ファンドレイザーを育成する団体が開いた研修会です。ここ数年で参加人数は増加し、企業やNPO、それに自治体の職員などが寄付を集める専門の知識を学んでいます。

講師は「言い方悪いんですけど、人の財布から、財布を開かせてお金を取らせて、寄付していただくという行動をさせないといけないんですね」とその難しさを強調。

 

参加した自治体職員は「行政もやっていかないといけない部分だなと思っていまして、知識を高めて活用していきたいなあ」。

民間企業の社員は「いろんなやり方でお金を集めて、そうすると賛同してくれる人も増えていくのかなというところで勉強になりました」と話しています。

 

日本の個人による寄付額は、アメリカの3%程度、年間およそ7700億円にとどまっているといいます。日本ファンドレイジング協会の大石俊輔さんは「寄付を集めるということに対するノウハウがあまり蓄積されている状況では必ずしもなかったので、欧米と比べるとここはまだまだ伸びしろがあると思っております」と期待を寄せています。

 

ファンドレイザーの知識を活用して、多くの寄付を集めた団体も出てきています。佐賀県にある糖尿病治療の研究を支援するNPOです。

事務局長の岩永幸三さんは、治療の研究に使う資金などを寄付で募ろうと、これまでTシャツの販売のほか直接企業に依頼しましたが、ほとんど協力が得られませんでした。

 

その理由について岩永さんは「我々の団体が何をやる団体なんだと、寄付を出す側にとって安心できる団体ではなかったんじゃないか」と話します。

こうした状況を改善したのは、ファンドレイザーからのアドバイスでした。

 

方法は、佐賀県の「ふるさと納税」の活用です。寄付を集める仕組みとしてよく知られ、意図や目的を明確にすれば多くの寄付が集まると考えました。

佐賀県と交渉して実現し、ホームページには、糖尿病の治療をする子どもたちの写真やメッセージを掲載。お礼の手紙を書いたり研究の進捗(しんちょく)も逐一報告したりして、寄付によって生まれる成果を知らせました。

 

すると、これまで100万円余りだった寄付金の額が、最高で年間1億円を超えるまでに増加したのです。

「9割の方が患者家族ではない方、つまりこの病気を全く知らなかった方なんですね。かなりの驚きを持っていますね」と岩永さん。

 

こうして集まった寄付金は、糖尿病の最新の研究に生かされています。多くの人の寄付が形を変え、治療に必要な医療機器の開発につながっています。

 

東京医科歯科大学の三林浩二教授は「寄付いただいた方は患者さん、ご家族のほかに、こういう研究を支援したいという一般の方からも支援をいただいています。いろいろな手法で、糖尿病という疾患に取り組んでいきたいと考えています」と話しています。

ファンドレイザーが関わることで社会的な課題の解決に向けて動き出した例を見てきましたが、このファンドレイザー、日本ではまだなじみがありません。一方、国などの調査では日本人には社会のために役に立ちたいと思う人の割合が高いという結果もあり、寄付文化が広がる環境にはあると思います。社会のために役に立ちたいという思いを具体的にどうつなげていくのか、ファンドレイザーの役割が注目されます。

また日本ファンドレイジング協会によりますと、寄付する団体を選ぶときには、活動の実態がわかるよう最新状況の発信や決算内容の公表などに取り組んでいるか、注意してみる必要があります。