首都圏ネットワーク

10月27日放送
19のいのち「あすへの一歩」 歌で伝えることばに出来ない思い

NHK横浜 竹内 啓貴
NHK横浜
竹内 啓貴
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去年7月、相模原市で起きた障害者施設での殺傷事件から1年余り。
NHKでは、事件を伝え続けるサイト「19のいのち」に、新たなコーナー「あすへの一歩」を立ち上げ、事件を繰り返さないための取り組みを紹介します。

今回は、事件と向きあう中で生まれたひとつのCDと、そこに込められた思いを取材しました。
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CDの作詞を手がけた中瀬香寿子さんと、作曲した桑野聖さん。
著名なアーティストの作品や映画など、幅広く音楽活動に携わってきました。

そのかたわら、施設などで障害のある子どもと接してきた中瀬さんは、事件に衝撃を受け、障害のある子どもの様子や親たちの話をもとに、ことばにできない思いを歌にしようと考えました。
中瀬さんは「相模原の事件があって、あの時ものすごくショックで、本当にショックで。日頃の子どもたちと接している中で、どうしても伝えたいと思い、想像したら気持ちがわかるかもしれないというところを歌詞にしました」とその思いを語ります。
CDに収録されている7曲には、子どもたちの気持ちや、それを見守る思いが歌われています。

そのうちの1曲『いやのうた』。
♪「いやいや いやだよ〜 いやなときは いやと言おう」

また『ありがとうのうた』では、
♪「ありがとう ありがとう 私のそばに来てくれて ありがとう」と歌われています。

障害のある人の、ことばにできない気持ちをくみ取る助けにもなればと考えています。
作曲した桑野さんは「僕は音楽しかできないですけど、ことばの意思疎通じゃなくて お互いの存在を認めるというそのために、障害者かそうじゃないのかとあえて線を引くのならば その両方に聴いてもらえればいいな」と願っています。
このCDのジャケットに描かれているのは、「ペタタン」と名付けられた小さな生きものたちです。
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「ペタタン」を描いたのが、安永航平さん(13)。
自閉症で重い知的障害があります。
ことばで気持ちを伝える事が難しく、母親の紀恵さんにもくみ取れないことがあるといいます。
紀恵さんは「ことばが出るのも遅かったし、言いたいことも言えない。言えないから投げるとか、怒るとか、たたくとか、大変でしたね」と振り返ります。
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そんな航平さんが穏やかに過ごせるのが、絵を描いている時間です。
休みの日は一日中、描いていることもあるといいます。

しかし、紀恵さんはずっと航平さんの絵を受け入れられませんでした。
紀恵さんは「あまり好きな絵ではなかったので。顔から口とか目がはみ出ないような絵を描いてほしいなと思っていました」とその気持ちを説明します。

CDと出会い、いま 紀恵さんの気持ちに変化が生まれています。
実は、航平さんのことを歌った曲があったのです。
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タイトルは『おかあさんのうた』。

♪「ぐるぐる ぐるぐる 白い画用紙 新しいクレヨン
 さっき外で見た女の子
 でも一番 絵に描きたいのは おかあさん おかあさん
 ぼくが描きたいのは おかあさん!」
紀恵さんは「このCDを聴いてから、ことばで出ない分、絵でわかってほしい、今こんな気分なんだよ、こんな気持ちなんだよっていうことを描いているんだと思います。ああこれでもいいんだと思ったら、だんだん私もこの絵が好きになってきて」と話します。

そして「こういう子たちは、こういう思いなんだよっていうことをわかってほしい。音楽だったら、いろんな人に広められるんじゃないかな」と期待を寄せています。

障害のある人とない人をつなぐきっかけにしたい。
1つのCDから始まる「あすへの一歩」です。
NHKのサイトには、事件と向き合う人たちからのメッセージが寄せられています。

14歳の女子中学生「私はまだ中学生ですが、妹が障害を持っている。このような事件が起きている。それをしっかり受け止め、一歩ずつ踏み出さなければ、と思いました」。

神奈川県の20代の大学生「事件直後に知的障害者施設で実習を受け、利用者の方に笑顔と勇気をもらいました。偏見や差別が進まないよう福祉の専門職を目指す1人として、声をあげていきたい」。

20代の大学生の女性「事件を忘れず、胸にとどめ、伝えていく。
それが私たちにできる最大の一歩だと思うのです」。

私たちは、これからもこうした取り組みを伝えていきます。
19のいのち

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