首都圏ネットワーク

10月19日放送
味も見た目も◎“こだわり介護食”

リポーター 勝田 真季
リポーター
勝田 真季
介護食といいますと、流動食だったり、歯応えがなかったり、何となく味気ないイメージがありますが、今、味はもちろん、見た目にもこだわった介護食が注目を集めています。
写真 写真
色鮮やかな魚介のタルタル。
ふわふわの鶏団子の煮物。
しっとりやわらかなフレンチトースト。
実はこれ、すべて介護食なんです。
一見、普通のとんかつも、すっと箸が入る軟らかさ。
写真 写真
こうした介護食について、口腔(くう)がんを経験した人たちは「形あるものを食べられるというのは、とてもいいと思います」「食べる力とか、食べる気力とか、食べる喜びがもっとわくんじゃないかと思うので」と高く評価していました。
この介護食を開発したのは、料理研究家のクリコさんです。
写真 写真
去年からインターネットを通してレシピを公開。
3か月前に出版したレシピ本は、1万部を売り上げる人気ぶりです。
クリコさんは「介護食は苦しいことじゃなくて、楽しいこと。いかに簡単に楽しく作れるか、参考にしていただきたいです」と話します。
写真 写真
クリコさんが介護食作りを始めたきっかけは、夫のアキオさんが口腔がんを患ったことでした。
手術のあと、かむ機能に大きな障害が残ったアキオさん。
流動食中心の食事に、食べる意欲を失っていきました。
さらに食道がんを併発。
再手術に耐えうる体力をつけることが急務だったのです。
「一食一食がものすごく大事だったんですね。私の料理に、彼の命がかかっているっていう責任。毎日生きた心地がしないっていう感じですね」。
食べてもらうためには、見た目も味もいい介護食を作らなければ。
クリコさんは、食材を細かくすりつぶし、ゆでる時間も食材ごとに変えて、一日中キッチンに立ち続けました。
写真 写真
そんなある朝。
アキオさんがおかゆの水分をいつもと変えてほしいと頼んできました。
クリコさんが返したことばは、「なんでそんなわがまま言うの?」「きのうまで食べられていたじゃない」。
「結構どなっていたかもしれないです」と振り返るクリコさん。
するとアキオさんは、申し訳なさそうに言いました。
「その日の口の状態で食べられるものが変化するのだ」。
「私が主人の口の中を全く想像できていなかったことに、すごくショックを受けて、猛烈に反省しました。ちゃんと想像してあげるということが大事なんだというのをそのときに気づきましたね」。
写真 写真
夫の立場に立って作ってみよう。
好物のシチューで挑戦しました。
野菜の形を残しつつ、とろとろになるまで煮込み、食材を舌だけで潰せるか何度も確認。
写真 写真
食べたアキオさんの反応をクリコさんは「『すごいおいしい、90点!』って言われたんで、『え、なんで100点じゃないの?』って。『もっとおいしいものが出てきたときに100点はとっておくね』って。え、もうやった!って、うれしかったです」と話してくれました。
写真 写真
気持ちが前向きになったクリコさん。
介護食のアイデアも次々とひらめくようになりました。
アキオさんには笑顔が戻り、体重も増加。
無事、再手術にこぎ着けました。
しかしその後、がんが再発。
10か月後、アキオさんは亡くなりました。
葬儀のあと、友人が1通のメールを見せてくれました。
そこには、アキオさんの感謝の気持ちがつづられていました。
「病院では絶対に食えない病人食。西京焼きの魚のほぐしたもの、刻んだハムと粉チーズ入りのイタリアン雑炊…。とにかく、食うおかずの量が自然に増えていくのだ」。
メールを読んだクリコさんは「いやもう、本当に涙が出ましたね。やっぱり、一生懸命やってよかったって。彼の回復を願って精いっぱいできたというのは、よかったと思います」と話します。
写真 写真
3年半、夫の闘病生活を支えた介護食。
今度は同じ境遇の人にレシピを伝えたいと、クリコさんは介護食アドバイザーとして活動を始めました。
写真 写真
クリコさんの介護食は今、医療業界からも注目されています。
大学病院から依頼された試食会で作ったのは、アキオさんが大好きだったエビフライ。
すり身をエビの形に搾り出していきます。
写真 写真
エビフライにスープ、デザートまでそろった介護食。
試食した歯科医師たちからは、「すごいやわらかい」「従来の介護食とはまた違って、素材の味がしっかり出ている」と驚きの声が聞かれました。
「楽しく、介護、介護食生活を過ごしていただくために、より簡単に、楽しくできる介護食をこれからもご提案していきたいと思っています」。
クリコさんの思いです。

内容 問い合わせ先
※問い合わせ先の掲載は、最新のものから5日分のみです。

ページ上部へ

これまでの放送内容

読み込み中です。NHK @首都圏のサイトではJavascriptを使用しています。コンテンツをご覧になるにはJavascriptを有効にしてください。