首都圏ネットワーク

9月21日放送
超単身時代(3)希望に沿った最期を 周りで支える

NHK千葉 山本 未果
NHK千葉
山本 未果
独り暮らしの高齢者は、今後、ますます増えるとされています。
しかし独り暮らしの場合、最期を病院で過ごしたいか、それとも自宅で迎えたいのか、その意思を確認しづらいのが現状です。

周りがサポートすることで、本人の希望に沿った最期を迎えてもらうための取り組みが、今、始まっています。
千葉県船橋市に住む藤原はなさん(90)です。
20年前に夫を亡くして以来、1人の暮らしを続けてきました。
思い出が詰まった自宅を離れる気持ちにはならなかったといいます。
「私にしたら、ここが長く一緒にいたところですから、主人と。さらにこの町会、ご近所、皆さんいい方なもんですから」と愛着を語ります。
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しかし、体が衰えるにつれて、迷う気持ちが出てきました。
自宅での生活にこだわることでヘルパーなどに負担をかけてしまうのではないかと、不安になり始めました。
「こんなに長生きするとは思わなかったんですよ。ここで一生、全うしたいなというのが半分、みんなに迷惑かけたくないなあというのが半分。やっぱり常に揺れ動いてます」。
自分の最期をどう迎えたいのか。
本当の意思を伝えられないまま、病院で亡くなる人も少なくありません。
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船橋市の総合病院、板倉病院の院長、梶原崇弘さんです。
病院にとって、運ばれてくる人の意思がわからないまま対応せざるをえないケースが増えていると感じています。
中には、あとになって遠方から駆けつけた家族の話で、本人が自宅で最期を迎えたいと言っていたことがわかった事例もありました。
梶原院長は「その方がどんな最期を迎えたいのか、または、どういう治療を希望しているかがわからないまま救急で到着されますので、『はてな』という気持ちで救急処置をやることはありますね。本人の幸せを考えると、希望をかなえるという意味では、なるべくそれが減っていくのがいいのかなと思います」と説明します。
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こうした事態を受け、梶原さんたちは新たな取り組みを始めました。
医師やヘルパー、それにケアマネージャーなど、在宅医療に携わる人たちで立ち上げたのが「ひまわりネットワーク」です。
独り暮らしの高齢者の意思を確認し、その情報を共有する仕組みを去年作りました。
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取り組みの柱になるのが「ひまわりシート」です。
緊急時の連絡先だけでなく、万が一のときにどんな対処をしてほしいか、自分の意思を書き込んでもらうことにしました。
それを基に、周囲は本人の意思を尊重しながらサポートの方法を考えます。
シートはどの家庭にもある冷蔵庫の中に保管し、駆けつけた人が高齢者の意思を確認できるようにしました。
梶原さんは「1人暮らしで、その人らしい最期を考えたときには、その人の考えが伝わらないと。意識がないときに、その人らしさをくみ取ることはできないので、ふだんからそういうときはどうするか考えておいて、それを皆で共有する」と活動の狙いを説明します。
ひまわりネットワークのメンバーで、ケアマネージャーの村山みよ子さんです。
訪ねたのは山本和郎さん(90)です。
去年、悪性リンパ腫が見つかりましたが、医師などの訪問診療を受けながら在宅での療養を続けています。
この日、担当の看護師も同席して、山本さんに、ひまわりシートの記入を提案しました。
村山さんが一つ一つ、その考え方を確認していきます。
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「例えば、熱が高いときとか、痛みがあって体が動かないときはどんなふうにしてほしいか…」。
山本さんも「意識がなくなった場合…? どうしよう」と考えます。
記入するのは、山本さん自身です。
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「自宅で処置できるのであれば、自宅でしましょうと。こういうふうに、ここで主治医が決定すると思うんです。希望としては『自宅』」。
山本さんは、できるかぎり自宅で過ごしたいと伝えました。
ここまで具体的に自分の意思を示したのは初めてだといいます。
緊急の場合は、村山さんたちと主治医が連携し、自宅での療養を支援することを確認しました。
山本さんは「ざっくらばらんに本心まで話したことは今までなかったんですよ。今からの考え方もここではっきりできたし、非常によかったと思います」と安心した様子です。
村山さんは「今までいろんな話をしていた中で、確認できなかった部分というのが、きょう、はっきりわかりましたね。それに沿ったことを一緒に考えていきたいなと思います」と話しています。
意思を共有することで独り暮らしの高齢者を支えたい。
本人が望むサポートにつなげるための取り組みが始まっています。
「ひまわりシート」は、いったん記入したあと、何度も見直し書き換えることが可能です。
ネットワークでは、その際に高齢者と周りで支える人たちがしっかりと話し合うことで、さらに意思の疎通を図ることが重要だと位置づけています。

高齢者の事前の意思表示についてどのように考えるのか。
国の検討会も8月から始まり、今後、議論を深めることにしています。

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