首都圏ネットワーク

5月1日放送
賃貸住宅に入居できない高齢者 大家の不安をどう和らげるか

首都圏放送センター 飯田 耕太
首都圏放送センター
飯田 耕太
賃貸住宅に入居できない高齢者が多いことをご存じでしょうか。
高齢者の入居に拒否感があると回答した賃貸住宅の大家の割合は60%余りに上り、徐々に増えていることが、日本賃貸住宅管理協会の調査でわかりました。

高齢者の入居を断る貸し渋り。
大家が抱える不安をどうやって和らげるのか、課題となっています。
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高齢者専門の賃貸住宅を仲介するベンチャー企業「R65不動産」を経営する山本遼さんです。
“住み慣れた街に戻りたい”と、この日、引っ越した83歳の男性。
複数の不動産会社に断られた末に、山本さんが紹介する物件に入居できました。
男性は「道を歩いて、飛び込みで不動産会社に入ったら、案の定、全然。年を聞いただけでね、80過ぎてんじゃ、もう無理ですねって」と実情を話します。
おととしまで別の不動産会社に勤めていた山本さん。
賃貸住宅への入居を断られる高齢者の、あまりの多さから事業を始めました。
「80代の女性の方が来られて『この会社、ここで5件目なんです』と言われたのがきっかけで、それがすごいショックだったんですね」と話す山本さん。
「実家が老朽化した」。
「病院の近くや階段のない1階に住みたい」。
高齢者ならではの事情があり、依頼のメールが後を絶ちません。
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物件を探すサイトには「高齢者相談」の文字がありますが、実際に山本さんが電話をかけてみると…。
「80代のご夫婦なんですけれども…無理? 娘さんが契約者でも難しい? …わかりました」。
年齢を告げた瞬間、門前払いでした。

電話を切った山本さんは「無理ですね。もうはなから無理って感じで。こういうケースは結構多いですね」と打ち明けます。
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全国には820万戸もの空き家があります。
それなのに、なぜ大家は入居を断るのか。
4月29日、山本さんは知り合いの大家などに集まってもらい意見を聞きました。
大家の1人は「うちの場合は、認知症があって料金の滞納が起きたりとか、そういったことが何件か起きて」と事情を説明します。
集まったのは高齢者の入居に前向きな大家たちでしたが、それでもトラブルを恐れる声が聞かれました。
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「高齢者って、どういうリスクがあるかと仲介業者に聞いたら、孤独死だと。発見が遅れたりとかすると非常に大変なことになる」「正直なところ年寄りは嫌だな、若い人が入ってもらえればなと思いました。リスクを減らすとか、無くす。そういう仕組みを作ったらどうだろうかなと」。
不安が大きかったのは独り暮らしの高齢者、特に「孤独死」のリスクでした。
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どうすればその不安を和らげ、高齢者の入居につなげることができるのか。
山本さんがまず注目したのは、ITの活用です。
電気メーカーと共同で開発しているものがあります。
「住宅設備として、あらかじめ照明が付いているというものでやってみたらどうかと」。
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それが「通知」機能を備えた新たな照明器具です。
明かりがついたり消えたりすれば、自動で大家のタブレット端末などに送られる仕組みで、孤独死を防ぐのが狙いです。
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さらに頼りにしたいと考えているのが、近所のお年寄りたちのネットワーク、使うのはSNSです。
東京・巣鴨のタブレット端末の教室に通う高齢者たち。
SNSで日々の出来事を共有し、互いの異変にすぐに気が付くと言います。
4月、1人の女性が急きょ入院したのを知り、みんなで励ましました。
教室に通う高齢者は「たまに連絡がないと、こっちからメールとかして『何している?』って言うと、『元気よ』って返事が来るから」と、やり取りを紹介してくれました。
山本さんは、見守り合うこうした取り組みが広がれば、大家の負担を減らせるのではないかと考えています。
「高齢者が嫌だというところも、理由はさまざまあると思うんですが、不安の要素というものをしっかり突き詰めて一緒に考えていきたい。借りられない人が無くなっていく、少なくなっていくというのが、すごい理想ですね」。
取材にあたった首都圏放送センターの飯田耕太記者は、次のように話しています。

「大家さんからすれば、いったん孤独死が起きてしまうと、物件の資産価値が下がるとか、誰が供養するのかといった不安があり、問題は簡単ではないと感じました。一方で、高齢者からすれば、年齢が高くなればなるほど入居が難しくなっていて、政府も動き出しています。この秋からは、入居を拒まない空き家などを自治体が登録して活用する制度をスタートさせることにしています。
国土交通省安心居住推進課の大島敦仁企画専門官は『大家さんの高齢者に対する入居の拒否感は横ばいで推移していますけど、依然として高い状況と考えています。住宅の確保に配慮を要する方々が入居しやすい住宅を増やしていくことが重要だろうと考えています』と説明しています。

こうした制度について、取材中、何件も電話していた山本さんは、住宅を見つけやすくなるのではないかと期待していました。
一方で大家さんの6割以上に拒否感がある中で、協力をどう取り付けるのか、課題は残ります。
VTRで紹介した大家さんの中には、空いている部屋があるのならば、まずは一部屋からでいいので貸し出そうと周りに呼びかけを始めた人もいます。

今後、高齢化や若者の減少は避けて通れませんから、大家さんたちだけでなく、社会全体で知恵を出し合って、この問題に向き合っていくことが重要だと感じました」。

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