スマートフォンの登場で、従来の携帯電話にはなかった新しいサービスが、次々と生まれています。。画面に手話の映像が出て観光案内をするという全国初のスマートフォン向けのソフト、いわゆるアプリが開発されました。このアプリで案内されている、神奈川県鎌倉市で取材しました。

今回開発されたアプリは、鎌倉大仏や鶴岡八幡宮など、鎌倉市内の見どころおよそ20か所を手話で紹介しています。

アプリを開発した大木洵人さんは手話通訳のサービスなどを手がける神奈川県藤沢市のベンチャー企業の社長です。
大木さんは「旅行に行かれる聴覚障害者の方も多い。障害者の方が行った先で楽しむツールがあるのはいいことなので、アプリで楽しんでほしいと思います」と話しています。
大木さんは大学1年生のとき、友人に誘われて手話を学び始めました。聴覚障害者がさまざまな不便を感じていることに気づき、本気で支援をしようと、在学中に会社を立ち上げました。

大木さんはこれまで、インターネットを通じた病院などへの手話通訳の提供や、手話によるバラエティ番組の制作や配信などを行ってきました。
手話通訳のアプリを作成したのは、聴覚障害者からの意見がきっかけでした。
大木さんは「聴覚障害の方の中には、文字を読むことで疲れる方や理解が難しい方もいらっしゃいます。せっかく旅行に行っているのに、集中して文字を読んでガイドを受けるぐらいなら、ガイドはいらないという声があったのです。手話の映像だったら気軽に楽しみながら旅行ができますね」と話しています。

大木さんは、地元の人たちや寺や神社などとおよそ1年間にわたって内容を練り上げ、鎌倉の名所を手話で案内する無料のアプリを完成させました。
聴覚障害者以外にも利用できるようにと、手話に加えて文字や音声による紹介も取り入れました。

今月15日、大木さんは開発にも協力してもらった地元の聴覚障害者の男性にアプリを初めて体験してもらいました。
この男性はこれまで、旅行先でガイドから説明を受けても、手話通訳がないため半分くらいしか内容が分からなかったと言います。
男性は手話で「本当に便利ですね。いつ作られたのかなどいろいろ説明があることで、楽しみが増えます」と話しています。

アプリには携帯電話のGPS機能を利用して、目的地へのルートを表示する機能も付けました。画面上で目的地をタッチすると、現在地からのルートが赤い線で示されます。

トイレの場所もボタン1つで表示されるようにしました。筆談などで場所を尋ねるのは時間もかかり、気を遣うという意見を反映させました。さらにアプリには災害時に避難場所を示す機能も備わっています。
男性は「本当にここまで作っていただいて、うれしく思います。ぜひこれを耳の聞こえない人たちが使ってほしいなと思います」と感謝のことばを述べています。
アプリを開発した大木さんは今後、利用者の意見を基に、アプリの改良を行うとともに、全国にこの取り組みを広げていきたいと考えています。
大木さんは「聴覚障害者の方がさまざまな情報を得られて行動範囲がどんどん広がり、全く不自由を感じない社会を作っていくのが目標です。ぜひ多くの方に使っていただいて、本当に便利だねといっていただけるように、これからも頑張っていきたいと思います」と意欲を見せています。
アプリの名称は「手話で巡る鎌倉世界遺産候補地」で、ダウンロードの際の通信料はかかりますが、アプリ自体は無料だということです。
現在、このアプリを利用できるのは「アンドロイド」という基本ソフトを使っているスマートフォンです。アップルの「iPhone」での利用は5月ごろからを予定しているということです。
大木さんは国内を訪れる外国人向けに、「国際手話」を使ったアプリの制作も検討しているほか、将来的には公共施設などへの普及を目指すということです。