19のいのち 障害のある姉と向き合う妹

  • 2019年3月26日

きょうだいに障害があったら、どう向き合っていけばいいのか。障害のある姉との関係に悩んできた女性が、この春、新たな一歩を踏み出そうとしています。《田中徳絵記者》

■受け入れられなかった姉の行動

高橋梨佳さん(24)。3月に都内の大学院を卒業しました。大学院では、障害のある人の芸術表現やその家族について研究を続けてきました。大学院生活について、梨佳さんは「早かったなっていう思いもありつつ、でもやっぱり本当にいろんなことがあって、濃い時間を過ごしたなとしみじみ実感しています」と語りました。梨佳さんは、大学院の修了式の日を迎えるまでに、自身の姉の存在が大きく影響していたと言います。

静岡県にある実家に帰った梨佳さん。3歳年上の姉、舞さんとくつろぎます。舞さんは自閉症で知的障害があります。

幼いころは、仲が良く、いつも一緒だった2人。しかし、梨佳さんは、次第に舞さんを理解できなくなっていきました。

舞さんは、興味を持ったものには、何でもテープを貼り付けてしまいます。この日は、だるまに色とりどりのテープを貼っていました。強いこだわりがある舞さん。うまく貼れないと暴れてしまうこともあったといいます。

梨佳さん
「やっかいなものっていうふうに見ていました。友達が家に来るときに姉に会わせないように母に姉を隠してもらってたりとか。やっぱどこかなんか姉自体を受け入れられなかったところはあるかもしれない」

梨佳さんは、姉から離れたいと、実家のある静岡を出て、東京の大学へ進学しました。

■1人の人として向き合えるように

1年がたったころ、母親から思いがけない知らせが届きます。姉の舞さんがテープを貼って作ったものが、障害のある人もない人も参加した作品展で入選したというのです。

木彫りの熊の置物に貼り付けられた、色鮮やかなテープ。梨佳さんが、やっかいだと見なしてきたものが「作品」として認められ、姉の見方が一変しました。

梨佳さん
「自分の中にあった価値観がガラガラ崩れていく感じがして。ちょっと違うふうに捉えてみようとか、別の視点を持とうとはしなかったので」

姉との向き合い方を、さらに考えるきっかけとなったのが、2016年7月に相模原市にある知的障害者施設で19人が死亡、27人が重軽傷を負った事件でした。

匿名で発表された犠牲者、そしてその家族。周囲に姉のことを伝えられなかった自分と犠牲者の家族の姿が重なって見えたといいます。

障害のある人のことをもっと社会に伝えていきたい。大学院で専攻を変え、障害者と家族の関係を学んだ梨佳さん。2018年12月、初めて自分が企画して姉の舞さんと一緒に個展を開催しました。会場に並べたのは、かつてはやっかいだと感じていたものばかり。訪れた人は、色とりどりの「作品」に見入っていました。

梨佳さんは、訪れた人に積極的に声をかけ、姉との向き合い方に悩んできた自分の弱さも、ありのままに伝えました。

梨佳さん
「障害者の姉っていうところに、障害者のっていうところにこだわってたかっていう・・・。障害者の姉じゃなくて1人の人として、姉として見られているような気がするので」

来場者
「言う方も聞く方ももうちょっとなんかね、壁がなくなったらええっていうか、なくなったらもっと生きやすくなるんかなあって思いました」

■社会と障害者とその家族をつなぐ

梨佳さんは、4月から仙台市でギャラリーなどが入る文化施設で働き、障害のある人も楽しめるイベントの企画などに携わります。仙台への出発を前に、梨佳さんは実家に帰り、舞さんに、あるお願いをしました。

「舞ちゃん、これにさ、今からちょっと貼ってくれない?」

舞さんは、旅立つ梨佳さんへのプレゼントに、テープを貼った「作品」を作ってくれました。

Q:誰のために作ってるんですか?
舞さん「梨佳ちゃんのお祝い。好きだから」

梨佳さんは舞さんがテープを貼る様子をじっと見つめていました。

障害のある姉がいる自分だからこそ、社会と障害者、そしてその家族をつなぐ役割を担いたい。梨佳さんはこの春、一歩を踏み出します。

梨佳さん
「まだまだ姉のことは理解し切れてないことがたくさんあります。これからも悪戦苦闘しながら、姉とも向き合いつつ、みんなが理解しあって生活できるようなところで自分が何か役に立てたらなと思っています」

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