MIRAIMAGINE

Menuメニュー
Clip

メニューを開きます

MIRAIMAGINE

Menuメニュー
Clip

メニューを開きます

社会復帰したいのに  “リハビリ難民”の実態

クリップ
ページを保存しました。画面右上から保存したページを一覧でみれます。
まちの未来
ともに生きる
ひるまえほっと
東京
2018年10月9日

体の機能を取り戻すためのリハビリを受けたいのに受けられない“リハビリ難民” と呼ばれる人が増えています。国が、病院でのリハビリに日数制限を設けているからです。平成18年から、例外はあるものの、例えば脳梗塞だと、最大で180日=6か月に制限するようになったのです。

社会復帰をめざしている人にとって、リハビリを受けられないのは深刻な問題です。さらに今後、こうした“難民”、増えると予想されています。《野口沙織リポーター》

■社会復帰へ リハビリ日数制限の壁

都内に住む川尻美佐緒さん、61歳です。経理の仕事をしていた5年半前、脳梗塞をわずらいました。今も左半身にまひが残り、不自由な生活をしています。社会復帰をめざし、懸命に病院でのリハビリに取り組んでいたとき、思わぬ壁にぶつかりました。リハビリの日数制限です。脳梗塞の場合、最大でも6か月。回復の見込み次第では、さらに制限されます。川尻さんの場合、5か月半で打ち切られてしまいました。

「(リハビリを)もっとやっていれば良くなるという思いがあったので、これでもう見捨てられてしまうという思いが強くて。崖から突き落とされたような感じで」

■機能回復をめざすリハビリは受けられず…

わらにもすがる思いで見つけたのが、リハビリに特化した施設、デイケアでした。しかし内容や時間は、満足できるものではありませんでした。

「デイケアだとリハビリは15分~20分で終わってしまって。自分が思い描いていたものとは違ったのでちょっと残念でした」

病院では、週6日3時間、マンツーマンのリハビリが受けられました。しかしデイケアだと、専門のスタッフが少なく、1人1人に割かれる時間が短いのです。そもそもデイケアは、心身の機能を「維持させる」ことが目的のため、川尻さんが望むような「機能を回復させる」リハビリは少ないのが現状です。仕事への復帰を望んでいた川尻さん。結局、まひは十分に回復せず、諦めざるを得ませんでした。

今、リハビリへの需要は高まっています。脳梗塞など、脳の血管の病気の患者は、およそ118万。そのうち、働ける若い世代の人も多くいます。川尻さんのように社会復帰を考え、十分なリハビリを受けたいと考える人は、今後増えると予想されています。

■すべて自己負担のリハビリ施設

こうした中、新たなサービスが登場しています。保険を使わない、自費のリハビリ施設です。鍼灸師による針が受けられるなど、独自のリハビリメニューをそろえています。専門知識を持った理学療法士や作業療法士の、マンツーマンの指導も受けられます。費用は2か月で27万5千円から。すべて自己負担です。それでも2000人あまりが利用しています。

週に1度通っている深谷隆善さん、41歳です。くも膜下出血で倒れたのは、3年前。朝起きて激しい頭痛と吐き気に襲われました。救急車で病院に運ばれ、すぐ手術。一命はとりとめました。しかし、左半身にまひが残りました。病院でのリハビリも打ち切られ、絶望の中、動く片手でようやく見つけたのが、この施設でした。

「ホームページの内容を見て、これは可能性があるなと思って。諦めていたものをもう一回ちゃんと取り組んでみようという前向きな気持ちが生まれました」

■高額でも “最善の方法”

リハビリのメニューは、それぞれの症状や目標に合わせた、オーダーメイドです。深谷さんは、麻痺した左半身でも身体を支えられるよう、メニューを組んでいます。サポートがあれば、左足にも体重を乗せられるようになりました。退院したばかりの頃は、車いすが欠かせませんでしたが、2年半経った今は、少しの距離なら杖を使わなくても歩けるまでになっています。

これまでに支払った金額は、およそ160万円。安くはないと思う一方で、現状では最善の方法だと考えています。

「活力につながりますね、生きて行く上で。やっぱりよく、“リハビリ難民”という言葉どおり、諦めてふさぎ込む人もいますけど、道があるというのは、生きる力がもらえる」

■“公的医療保険の適用拡大を”

一方で、リハビリ難民状態の川尻さん。自費リハビリ施設の存在は知ってはいたものの、金銭面で諦めざるを得ませんでした。いまは大学病院の研究の対象として、なんとか不定期で、リハビリを受けています。しかし内容や時間は限られ、この先も続けられるのか、先行きは全く見通せません。

「長いリハビリをしたいので、定期的にずっと続けていくことを考えると、(自費リハビリは)金銭的には無理です。これだけ自分が(リハビリを)やりたいのに、受け入れてくれるところがないのは、本当に悲しいことだと思います」

こうしたリハビリ難民を救う手立てはないのか。国が病院でのリハビリに制限を設けてから10年以上、見直す議論も必要だと社会保障の専門家は指摘しています。

結城康博教授(淑徳大学 総合福祉学部)
「もう少し丁寧に医師が規定をつくり、(回復の)見込みがある人、もう少し頑張ればできる人には、今までよりも公的医療保険で(病院でのリハビリを)カバーする日数を増やせば、もう少し頑張ればできる人がリハビリ難民にならず救われる。医療保険の適用範囲を伸ばしていくのが解決の道だと思っています」

日数制限が始まって12年経った今も、公的サービスでの大きな変化はありませんが、自費のリハビリ施設などができてきて、大手の商社も参入するなど、少しずつ市場ができつつある状況です。

こうした自費リハビリについて、淑徳大学の結城康博教授は課題を挙げています。まずは、自費リハビリはお金のある人は通える一方で、そうでない人は通えないという点。もう一つは、さらにいろんな事業が参入してきたとき、施設の質の担保ができるかどうかという点です。またこうした施設は、今のところ大都市にしかなく、地域間での格差もあります。そうした点を考えると、自費リハビリはリハビリ難民のすべての受け皿にはなっていないというのが現状です。

続きを読む

関連のページ

首都圏NEWS WEB 関連記事

人気のページ

Twitter公式アカウントで更新情報をチェック

@nhk_shutoken

別ウィンドウで開く

※NHKサイトを離れます