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低出生体重児へ贈る “肌着”

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仕事と子育て
子育て
ひるまえほっと
神奈川
2018年6月25日

現在、赤ちゃんの出生時の平均体重はおよそ3000グラムですが、2500グラム未満で生まれてきた赤ちゃんのことを「低体重児」といいます。2017年に国内で生まれた日本人の赤ちゃん約97万人のうち、低出生体重児は約1割を占めています。そんな中「生まれてくる小さな命と、そのお母さんを応援したい」という気持ちが込められたあるものが、今反響を呼んでいます。《浅岡理紗リポーター》

■低出生体重児を励ます肌着

小さな命とお母さんを励まし続けている肌着があります。低出生体重児の赤ちゃんのための肌着です。

大きさは、一般的な新生児用の肌着の3分の2ほどです。この肌着を生み出したのは、一人のお母さん。谷山綾子さん(35)です。

「お腹の中から早く生まれてきてしまった赤ちゃんで、2000グラムの赤ちゃんから着用できるように作ってあります」

谷山さんが運営する、小さな肌着を販売するインターネットショップには、『幸せでした』『心強かったと思いました。他のお母様たちも同じ気持ちだと思います』など、毎日母親から、感謝の声が寄せられます。小さな肌着に反響が集まる背景には、いま低出生体重児が増えている現状があります。出生率に対する割合は、この40年でおよそ2倍。出産の高齢化だけでなく、医療技術の進歩により救える命が増えたことも要因です。

■自分の経験をもとに製作

谷山さんがこの肌着を作ったきっかけは、自らの体験にありました。6年前、第三子となる瑞樹くんをわずか445グラムで出産したのです。

「予定日より4か月早く生まれました。もう出てきてほんの少しだけ見せてもらったんですけど、本当に片手でも乗るくらい。初めのうちは本当に何もしてあげられない。触れることもできずに保育器の前に座って見守るだけでした」
母親としてできることは母乳を届けることだけ。瑞樹くんがいる集中治療室に通う日々の中、自分を責め続けたといいます。

「ああなんてことをしてしまったんだという気持ちにはなりました。母親としてちゃんとお腹の中にいさせてあげられなかった。そういうことをできなかったという思い」

医師たちの懸命な治療の結果、瑞樹くんの体重は2か月かけて1600グラムまで成長。看護師から「肌着を着られますよ」と言われ、喜びの中肌着を用意しました。しかし、市販の肌着は大きくてぶかぶか。首回りから体が出てしまったのです。

「頑張ってやっとここまでできたのに、余計に小ささを際立たせたり、余計痛々しい姿に見えてしまったんですね」

ぴったり合う肌着を着せてあげたい。決して裁縫が得意なわけではありませんでしたが、自分で作るしかないと思い立ちました。

型紙は瑞樹くんの身長に合わせ、市販の型紙を縮小コピーしました。

これが当時、谷山さんが手作りした肌着です。病院から帰ってきた夜、家で少しづつ縫い完成させました。

「自分で作ったというのもあるんですけど、かわいくって。看護師さんとか周りのご家族にもかわいいって言ってもらえて。やっと母親らしいことをしてあげられたっていうのももちろんですし。これで他の赤ちゃんと同じっていう感じはありました。なんか当たり前。やっと当たり前の生活がスタートするようなそういう気持ちですね」

■同じ気持ちのお母さんを応援

自ら作った肌着で前向きな気持ちになったという谷山さん。去年の夏、小さな肌着を販売するネットショップを立ち上げました。

「もし私と同じ思いをしてつらい思いとか不安な気持ちを抱えているお母さんがいるのであれば、私のこの経験から応援とか気持ちを救ってあげられたらいいなと思って」

谷山さんがこだわったのは、小さな体にぴったり合うサイズ。低出生体重児を産んだ母親たちにどれくらい成長したときに肌着が必要になったか聞き取りました。身長や胸囲のデータから谷山さんなりに基本のサイズを見つけだしました。

生地を縫うなど手伝うのは母親たちです。病院を通して知り合った母親や、活動に共感する友人も参加しています。この日は瑞樹くんのお兄ちゃんの同級生の母親と一緒に夏用の肌着の試作をしました。体が細い子が多いため、胸の幅や袖の長さなどを何度も調整します。

「首元が開かないように紐はこのあたり。レースを目立たせたほうが写真うつりがいいかもしれない」

谷山さんのもう一つのこだわりは色。鮮やかなものを選ぶようにしています。

「病院は無機質なのでわりと白が多いので、明るい色にすることで自分もまた前に進めるような気がしましたし、子どもにとっても明るい色はいいんじゃないか」

現在全国から月に60枚ほどの注文があります。中には、注文するときに不安や悩みを打ち明ける母親もいます。谷山さんは、自分の経験談を交えてメッセージも添えます。

「一番はひとりではないってことですね。そういうお母さんたちは今までもいて、みんなそうやって一つずつ乗り越えて今を生きていますので。(私たちが)応援しているってことは忘れないでもらいたいなって思っています」

■お母さんと赤ちゃんをつなぐ絆に

谷山さんはかつて瑞樹さんを出産した病院に、肌着を役立ててほしいと届けています。この日肌着を着ることになったのは加藤慶音くん。

4月に885グラムで産まれ1200グラムまで成長しました。
母親「よしできました。いいお洋服に着替えました、けいちゃんかわいいね」
父親「いいね。お洋服あたたかいね。かっこいい青のお洋服」
母親「本当にありがたかったです。合った服で育っていけるって思うとうれしい」

神奈川県立こども医療センター 豊島勝昭医師
「入院生活の中の彩りっていうか、大変な中でも喜びを感じるような瞬間って大切じゃないかなと思いますよね。何よりの励みになるっていうかね。医療者ではできない励ましをしてくれているのではないかと思います」

谷山さんはこの小さな肌着が親子が前を向いて歩くきっかけになってほしいと願っています。

「頑張っているお母さんたちのほんの一瞬の出来事にしかすぎないんですけど、私ができるのであればお手伝いしたいなって。肌着がお母さんと赤ちゃんをつなぐ絆のようなものになっていってもらいたい」

ほかにも低出生体重児とその母親を支える取り組みは広がっています。昨年大手メーカーは低出生体重児用のおむつ(800グラム用)を発売しました。営業担当者が病院でさらに小さいものをという声を聞き開発。看護師から「おむつが大きくてぶかぶかだとショックを受けるお母さんもいて、精神的な支えになる」といった声があがっているそうです。

さらに東京都は母子手帳に低出生児用のページを作ることを昨年度都内の市区町村に促しました。通常母子手帳には、何か月でどれくらいの身長や体重に成長するかの目安となる“発育曲線”が載っています。でも低出生体重児とは異なるので、小さく生まれた赤ちゃん用の発育曲線を掲載しようとしています。

また、現在母子手帳には月齢ごとに発育の目安、例えば3~4か月で首が座ったりお座りができるようになると書いてあるのですが、それも生まれてきたときの体重によってできる時期に差が出るので、お母さんたちが気にしすぎないように、目安をなくして、できた日にちを書き込むように様式を変えようとしています。低出生体重児とその家族を支えるきめ細やかな仕組みが求められています。

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