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音を伝える“聴導犬” 育成にかける

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まちの未来
ともに生きる
ひるまえほっと
埼玉
2018年5月16日

左から武内陶子アナウンサー、清水明花リポーター

5月22日は〝補助犬の日〝です。補助犬は生活のサポートをしてくれる犬たち。視覚に障害のある方をサポートなどをする「盲導犬」。体に障害のある方に物を拾ったり、ドアを開けたりする「介助犬」。聴覚の障害がある方に必要な音を知らせる「聴導犬」。今回注目するのは「聴導犬」です。聴導犬は74頭とまだまだ数自体も少なく、希望する聴覚障害者の需要に応えられていないんです。必要とする人が聴導犬と暮らせるように、20年以上にわたって活動している女性を取材しました。

■音を知らせる“聴導犬”の訓練士

水越みゆきさん。訓練士歴23年のベテランです。これまで11頭の聴導犬を送り出してきました。
水越さん「ユーザーさんと聴導犬がペアになることで、新しい経験がたくさんできればいいかな」
聴導犬の仕事は、必要な音を判断し、鳴っている場所を知らせることです。

例えば、目覚ましが鳴れば、寝ている飼い主を起こします。

ヤカンのお湯が沸いた音では、飼い主をヤカンの場所へ誘導します。さらに外出時は、後ろから来る車や自転車の音を察知し、飼い主に注意を促します。車が近づくと、何度も後ろを振り返り、飼い主に知らせるんです。聴導犬は、厚生労働省が定めた機関の試験を受け認定されます。試験は、犬と利用者のペアで受けなければなりません。互いの意思疎通がはかれているかが、重要になります。

■欠かせない犬を理解する気持ち

水越さんが訪ねたのは、1年ほど訓練をしている中條美和さんのお宅です。中條さんは大学で政治学を教えています。

清水「最初にやってみたいことは?」
中條さん「とりあえず大学に行きたい、一緒に。チャイムが鳴っても気付かなくて授業を進めてしまったことがある。学生が困った。犬が教えてくれたら、学生もよかったと思うはず」

ペアを組むのは4歳のオス・次郎。これまで中條さんとは室内で訓練をしてきました。この日は屋外へ。部屋から車に乗るまでの手順を確認します。次郎を待機させようとしますが…。

中條さん「伏せ、伏せ」
うまくいきません。
中條「伏せ」
水越「次郎が気になっているから、1回出て、気になっているものを確認させて」

次郎は、建物の裏から聞こえる音が気になっていました。水越さんに促されて、次郎に音を確認させます。

すると安心した次郎は、指示通り座りました。自発的に音を知らせてくれる聴導犬。指示するだけではなく、犬を理解する気持ちが欠かせないと、水越さんは言います。

水越さん「中條さんと次郎の間でちゃんと関係を作っていかないといけない。そのために訓練をたくさん重ねていくことが必要。中條さんの世界がどう変わるか楽しみです」

■アメリカで学んだ聴導犬訓練の神髄

訓練士の水越さんが犬に関心をもったのは子どもの頃。犬が飼えなかったため、憧れが強まりました。18歳の時、訓練士の学校に入学。優秀な警察犬を育てたいと夢の実現に向かっていました。

二十歳で訓練士に合格。しかし、上司から勧められたのは、聴導犬の育成。聴導犬・先進国、アメリカへの留学が命じられました。

水越さん「実際にまったくかかわっていなかったことだったので、何で私?っていう感じはありました」

その時の水越さんの上司、藤井多嘉史(たかし)さんです。数多くの警察犬を輩出し、また日本第1号の聴導犬を誕生させたカリスマ訓練士です。

藤井さん「水越さんは真面目で一生懸命やってくれるし、警察犬の公認訓練士の資格も取っている。これからアメリカに、本場に行って、本場から聴導犬の神髄を習ってくればいちばん早いと」

修業先のアメリカで、水越さんは日本の訓練との違いに衝撃を受けました。

水越さん「まるっきり私たちと考え方が違うんだなと思った。私たちは繰り返し繰り返し反復練習することで犬に覚えさせていくやり方だったが、向こうのやり方は、犬にどう理解させていくかっていうことを考えた訓練だった」

例えば、音の場所に案内する訓練。

これまでは、音が鳴ったら、人がタイマーの場所へ犬を連れて行きえさをやる。この繰り返しで、動きを覚えさせていました。

一方アメリカでは、タイマーの横にえさを置いたのを犬に見せておき、音が鳴ったらリードを放す。犬がえさの近くに行きたいという気持ちを利用して覚えさせるという具合です。

水越さん「犬に任せなきゃいけないんだって、そこで初めて気が付いたかな。犬が好きで行って、犬が好きで音を探して、それを伝えてくれて、人を連れて行ってくれるっていう考え方じゃないと、犬のモチベーションって持続しない」

■最後まで責任をもつために

水越さんは、聴導犬の育成の奥深さに引き込まれていきました。帰国して1年後の2002年。転機が訪れます。身体障害者補助犬法が成立し、聴導犬が飲食店に同行したり、公共交通機関に乗ることが認められるようになりました。広がっていく聴導犬の活躍の場。育成に専念するため、水越さんは、自ら団体を立ち上げる決断をします。

水越さん「こっちに移ったらほぼ無収入って感じですよね。責任を取るかお金を取るかだった。聴導犬を出したという責任が重かった。その子たちが引退するまでやらなきゃいけないことはやらなきゃいけないことなので」

■人が犬の気持ちに寄り添うことの大切さ

水越さんが、訓練士として大きな手応えを感じたのが、7組目に送り出した、東彩(あずま・あや)さんと、
聴導犬・あみのすけのペアです。

東さん「私はいろいろな音を“見て”確認するので疲れてしまっていた。いまは音は任せられている。あみのすけに感謝」。

水越さんは、このペアとの経験で、聴導犬が仕事をするためには、人が犬の気持ちに寄り添わなければならないと、再認識したと言います。それは、東さんとあみのすけが暮らして6年目。赤ちゃんが生まれた時のことでした。

あみのすけが突然、音を知らせてくれなくなってしまったのです。赤ちゃんの泣き声を知らせる訓練はできているのに、あみのすけは動きません。主な原因は、東さんの関心が赤ちゃんばかりに向いてしまい、あみのすけは仕事をしても愛情を感じにくくなっていたことでした。

東さん「環境が変わった、みんなお互いに戸惑っている。(あみのすけと)娘を比べると、娘を優先してしまう。あみのすけがさみしいという気持ちは水越さんから聞いた」

東さんは水越さんから、あみのすけにも向き合うようアドバイスを受けました。3か月ほどかけ、いままでの信頼関係を取り戻すことができました。

水越さん「しっかり関係ができていないと修復出来なかったと思います。あみのすけが自分で考えて、東さんの手伝いをしてあげたら東さんが喜ぶ。だから“自分も子育てに参加する”という答えを出してくれたことが、今まで私たちの教え方で間違っていなかったんだなって。1つの結果だったかな」

あみのすけはことし12歳。まもなく聴導犬として引退です。

水越さん「引退を進めるに当たって、あみのすけが家で待つことも増やしていかないと、ある日突然“お留守番”と言われたら、あみのすけは〝嫌〟と言うと思う」

東さんは、あみのすけをペットとして引き取り、新しい聴導犬を迎えることにしています。

■聴導犬が当たり前の社会を目指して

水越さんが団体を立ち上げてから16年。いま直面しているのは、訓練士の育成です。

水越さん「エスカレーター大丈夫だった?」
スタッフ「エスカレーターは、ちょっとまだ細かい修正が必要かな」

スタッフは7人まで増えましたが、まだ聴導犬を育てられるのは2人しかいません。

訓練士・内田さん「水越先輩の口癖は(1)犬になれ!(2)犬に寄り添え!(3)犬の気持ちになれ!厳しいですね」
水越さん「厳しい言うな!」
訓練士候補・秋葉さん「訓練士自体にも高いレベルが求められるので、よき先輩であり、よき目標」

水越さん「聴導犬が当たり前に街のなかにいるという状況を作っていくためには、私たちが育成する頭数を増やして、社会に出て行ける聴導犬をたくさん育てていくことが必要になるんじゃないかなと思います」

(武内アナウンサー)
聴導犬が飼い主さんの耳になれるようにするためには本当に心を通わせて訓練していく必要があって、水越さんたちの訓練も大変ですね。どれくらいでデビューできるんですか?

(清水リポーター)
だいたい犬自体の訓練に1年ほどかかり、利用者さんとマッチングさせるので合わせて1~2年ほどかかるそうです。期間もそうなんですが、1頭あたり育てるのに約200万~300万かかるのですが、希望する聴覚障害者へは無償譲渡する団体が多いんです。水越さんは、1頭でも多くの聴導犬を輩出していくためには、訓練士の確保のほかにも、聴導犬の支援者・理解者を増やす必要があると、いま広報活動へも力を入れているところです。国内には20ほど育成団体があります。詳しく知りたい方は各団体のホームページでご覧ください。

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