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ほっておくと危険! 運動選手の“無月経”

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仕事と子育て
子育て
ひるまえほっと
東京
2017年11月13日

東京オリンピックまで1000日を切り、ピョンチャンオリンピックはあと3か月で開幕です。多くのアスリートの活躍が期待されますが、一方で、女性の運動選手のある健康問題に注目が集まっています。それは運動によって起こる「無月経」です。無月経とは、これまであった月経が3か月以上停止している状態を指します。原因は、エネルギー不足やストレスといわれています。

左から、武内陶子アナウンサー、安部香央里リポーター

実は、私も無月経を経験した一人なんです。小学校から大学生まで陸上の短距離競技をしていて、もともと生理の量も少なかったのですが、高校の時からはパタリと月経が止まってしまったのです。夏の試合の時期だけなぜか生理がきていて、秋から春にかけて練習量が厳しくなる時期は全くこなかったんです。その当時は、体がよく絞れている状態なんだと思って、全く気にしていませんでした。でも無月経を放っておくと、将来まで及ぶ大きなリスクを負ってしまいます。そうした無月経の女性を支えようという取り組みを取材しました。

■無月経と向き合った金メダリスト・小原日登美さん

ロンドンオリンピック・レスリングで金メダルを獲得した小原日登美さんです。31歳で初出場。悲願を成し遂げた姿を覚えている方も多いと思います。いまは2人の子どもを育てている小原さんですが、ここに至るまでには、大きな不安と戦う日々がありました。

小学生でレスリングを始めた小原さん。激しい練習で、10代の頃から無月経になりました。

「心配した母が産婦人科に連れて行ってくれて。(母からは)レスリングと体、どっちが大事かといったら、体の方が大事だから、無月経が続いて将来子どもを産めなくなるようならレスリングをやめさせると言われたことは記憶にあります」

通院し治療を続けていたことで、月経の周期は正常に戻っていました。しかし、ロンドンオリンピックをねらい、階級を落とすことを決意。10キロ近くの大幅な減量を行ったことで、再び月経が止まってしまったのです。

小原さん
「病院に行って検査をしてもらったら、医師から『全くホルモンが出ていない状態で、年がいって閉経した人の数値です』と言われて。もしかしたら子どもを産めなくなるかもと不安もあったんですけど、現時点ではまずオリンピックを優先して、でも常に不安はありました」

金メダルを獲得後、選手を引退。夫とともに子どもを願っていましたが、1年経っても生理はきませんでした。

「オリンピックを48キロ級でめざしたことも後悔しそうになった時期もあって、毎日不安やイライラ、そんな日々が続きました」

■みずからの経験をネットや新聞などで発信

自然妊娠をあきらめ、不妊治療に切り替え、引退から2年後、ようやく子どもを授かりました。

同じように苦しむ人の力になりたい。いま自分の経験を、ネットや新聞などで発信しています。

「選手をやっている頃は競技のことだけになってしまって、なかなか体のことは二の次になってしまうと思うのですけれども、競技を終えるときは必ずくる。自分の体としっかり向き合うことが競技にもプラスになると思うので、自分の経験をみんなに少しでも伝えていきたいなと思います」

■エネルギー不足が続くことで無月経に

無月経はなぜ起こるのか。女性アスリートの健康問題に取り組む能瀬さやか医師。この春から専門の外来も開いています。

能瀬さやか医師(女性診療科・産科 女性アスリート外来)
「無月経の原因はいろいろあるんですが、アスリートに一番多い原因は、運動量に対して見合った食事がとれていない、体がエネルギー不足の状態だと生理が止まるといわれています」

運動していると、多くのエネルギーを消費します。しかし体重が重いと不利だったり、体重に制限がある種目などでは、食事を制限することがあります。それが行き過ぎ、エネルギー不足が続くと、脳からの女性ホルモンの分泌が低下。排卵がなくなり無月経になるのです。

■無月経を放置すると骨粗鬆症の恐れも

こうした無月経の状態を放置すると、将来にわたって体に深刻な影響を及ぼすといいます。そのひとつが骨への影響です。骨は、女性ホルモンの作用で、10代から20代にかけ、急激に密度が高まります。しかしこの時期に無月経が続き、女性ホルモンの量が少なくなると、骨の密度は低い状態にとどまってしまいます。そのため、骨粗鬆(しょう)症になる恐れが将来にわたって続くのです。他にも、摂食障害を伴っていたり、うつや、不妊症に結びつく恐れもあります。

能瀬さやか医師
「無月経の問題は10代で介入してあげないと、一生、骨粗鬆症で過ごしている選手もたくさんいます。いちばん取り組まなければいけない課題は、トップ選手ではなくて、中学・高校の部活動に励んでいる選手たちに、どうやって月経の問題をアプローチしていくかということが課題だと思います」

■進学後、無月経に 運動部の大学生

しかしスポーツに取り組む現場では、その危険性はまだ知られていないのが現状です。

日本体育大学4年生の灘波未央さんです。中学生のときからソフトボールに打ち込んできました。体格に恵まれていたこともあり、中学・高校ではのびのびと楽しんでいたといいます。

ところが大学では、練習量が格段にアップ。加えて、実家を出ての寮生活。慣れない環境が大きなストレスになりました。無月経になったのは、入学後すぐのことでした。

灘波さん
「大学に入学して寮生活になって、先輩も知らない人という新しい人間関係も始まって、そういった変化が(無月経の原因として)大きかったと思います。お母さんに言ったら『病院に行ったほうがいいんじゃないか』と言われて、ちょっと心配になった」

部活を引退した今も、生理は3か月に一度ほどと、正常な状態には戻っていません。当初は病院に行っていましたが、部活動や就職活動で忙しいと、通院をやめてしまったといいます。

灘波さん
「子どもを産みたいってなったときに、もし産めなかったらどうしようと考えたりもするんですけれど、すごい大問題という(意識が)自分のなかにはなくて」

そんな灘波さんを気にかけ、声をかけた人がいます。
「最近はどうですか、その後は?」
「最近は少しずつ(生理が)くるようになった」

運動と月経について研究している須永美歌子教授です。授業を通して灘波さんの症状を知りました。

灘波さん
「(病院には)最近は部活の手伝いなどでなかなか行けていないです」

須永美歌子教授
「部活が忙しくて病院に行けないというのは私もよく分かるんだけれど、きちんと定期的に(医師から)『大丈夫ですよ』と言われるまでは病院に行ったほうがいいと思う」

病院に行くことを後回しにしていた灘波さん。あらためて自分の体について考え直しています。

灘波さん
「自分が健康だと思っていても、生理がきていないのは健康じゃないと分かったので、やっぱり少しずつでも治せるようにしていきたいと思います」

■女性アスリートの心と体を大学がサポート

多くのトップアスリートや指導者を輩出している日本体育大学。およそ1500人の女子学生が運動部に所属しています。

大学では、須永さんを中心にこうした学生を対象とした取り組みを始めています。女性特有の体や心の問題に対応したコンディション作りを、積極的に広めていこうというのです。

この日は、ソフトボール部にセミナーを行いました。

須永美歌子教授
「女性アスリート特有の健康障害と月経周期にともなうコンディションの変化というテーマで話をします」

ふだん学生同士でも相談しにくい月経の問題を、この場を使って学んでもらいたいと考えています。

須永美歌子教授
「生理中に腰が痛くなる、重だるくなるという人はどれくらいいますか? 8割以上、9割ぐらい。生理中に痛みが強くて痛み止めを飲んでも治らない、不安があるという人は、必ず婦人科に早めに受診して、不安や悩みを少しでも早く解決してほしいと思います」

女子ソフトボール部3年生
「監督やチームメートに話しにくい部分があるんですけど、伝えなければ将来にも影響することだと思うので、(周りに)言うことも必要だなと思いました」

女子ソフトボール部2年生
「自分は(生理が)周期よくきているんですけれど、きてない子も同期のなかにいるので、話を聞いてあげて、サポートしてあげたいと思います」

女子ソフトボール部監督
「日頃からコミュニケーションはとっているつもりですけれど、そういうのをなかなか言えない、見せない子もいますので、少しでもアプローチ方法(接し方)を変えたり、どうすればいいか今後も考えていきたいと思います」

■中学・高校の10代のうちから治療を

(安部香央里リポーター)
取材した日体大のように、実際のスポーツの現場で取り組みが始まりつつあるんですが、中学校や高校などの部活レベルでは、まだまだ進んでいないのが現状です。

(武内陶子アナウンサー)
びっくりしました。オリンピックに出るようなトップのアスリートの方たちの問題だと思っていたのですが、ものすごく大事なのが、中学・高校の10代の無月経に向き合っていかなければいけないということなんですね。

(安部リポーター)
どんな競技レベルの人にも起こりうることで、東京大学の能瀬さんも、10代のうちからの治療を受けてほしいと警報を鳴らしています。

(武内アナウンサー)
でも10代だと、恥ずかしくてなかなか言い出せないとということもありますよね。

(安部リポーター)
私もそうだったんですが、高校生のときに母親に連れられて、産婦人科に行ったことはあるんですが、やっぱり10代で産婦人科に行くのは結構勇気がいることなんですよね。そのため、こういったリーフレットを東大病院産婦人科が中心となって作成し、2017年10月末から全国の産婦人科に配っています。中には、無月経の原因や食事の仕方などが書かれています。能瀬さんは、産婦人科は妊婦さんだけでなくアスリートのコンディショニングもするところだと広めたいと話していました。

産婦人科では、食事指導を始め、薬やホルモン治療など、その人に合わせた治療を受けることができます。運動との両立は可能ですので、心配だという人はぜひ早く病院に行ってほしいと思います。

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