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夏の築地を支える“氷”

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まちの未来
つくる売る食べる
ひるまえほっと
東京
2017年7月28日

今回は夏の築地を支える“氷”に注目します。
鮮度を保つために使われますが、ただ氷をあてて冷やすだけではなく、細やかな工夫があります。築地市場で磨かれてきた“氷を駆使する技”に迫ります。

■氷を求める仲卸たちで早朝からにぎわう“氷販”

街が寝静まる午前2時。
築地市場でいち早く動き始める場所があります。

氷販(ひょうはん)と呼ばれる氷の販売所です。
これから魚を仕入れる仲卸のために、早朝から営業しています。

空の容器を持った仲卸がひっきりなしにやってくる、築地のにぎわいを反映する場所です。

Q:何キロくらい使いますか?
仲卸「だいたい10枚くらい」
Q:200キロくらい?
仲卸「うん」

氷を運ぶだけでもひと苦労です。
夏場は1日100トンほど使われるという氷。ほぼすべてが市場の中で作られています。

■2日間かけて凍らせることで溶けにくい氷に

場内の一角にある工場です。

巨大なアイス缶に水を入れ、周りに氷点下12℃の冷却液を流し、2日間かけてゆっくりと凍らせます。

ゆっくり凍らせることで均等に凍り、溶けにくいものができるんです。
夏場はできあがったそばから無くなります。生産現場はフル稼働です。

一見すると、氷を簡単に運んでいるように見えますが、難しいそうなんです。

Q:結構重いんじゃないですか?
「1本が135キロ~150キロ。白鵬関と毎日稽古しているようなもんだよ」

「下手な人が向こうから滑らせると、失敗してみんな倒れちゃう」

大竹力さんです。
夏場は1人で500本の氷を運んでいます。

Q:どういう思いで作り続けているんですか?
「やっぱり魚のためだよね。新鮮な魚を食べさせてあげたい。それにはこの氷がないとダメなのよ!」

「コトン、コトン、コトン、コトン(氷がぶつかる音)」

できあがった氷は、仲卸の待つ売り場へと運ばれていきます。

■用途に合わせて使い分けられる3種類の氷

築地で使われる氷は、主に3タイプです。

まずは、塊のままの角氷(かくごおり)。
生きた魚、活魚の水槽に入れます。
ゆっくりと溶けるため、水温を徐々に下げることができます。魚に優しい氷です。

続いて、角氷を細かく砕いたバラ氷。
敷き詰めて販売スペースを作ったり、売り場で魚を冷やしたり、小分けにして客に渡したり、いちばん多く使われる万能タイプです。

3つ目は、フレーク氷です。
バラ氷に似ていますが、特殊な方法で作られていて、薄く軽いのが特徴です。
ウロコが柔らかく、身がつぶれやすいアユなどの魚を冷やすのに最適です。

■気温30℃近くの市場で魚の鮮度を保つ職人技

夏場は30℃近くになる市場の中。鮮度を保つために氷は欠かせません。

売場を見ていると、氷がいろいろな使われ方をしていることに気づきませんか?
魚介の種類によって、最適な氷の置き方があるんです。

150年以上続く仲卸の5代目、門井直也さんです。

門井さん
「弱い魚は水に浮かべていないと、つぶれちゃう。水を吸いやすいものは“下氷”のほうがいい」

魚の下に氷を敷いて冷やす方法は“下氷”と呼ばれています。
海水に氷を入れて冷やす方法は“水氷”と呼ばれ、使い分けられているんです。

たとえばノドグロは、氷を下に敷く下氷。皮が薄く水を吸いやすいそうです。
冷やし方が合わないと、味にも影響があるといいます。

門井さん
「水を吸うと大味になるし、水っぽくなる。(鮮度が落ちるので)早く使わないとダメだよね」

こちらはイワシやコハダなどの青魚、水氷です。
表面が傷つきやすいため、氷に直接当てず、浮かべて冷やします。

この水氷。仲卸の経験が問われる冷やし方なんです。

Q:氷と一緒に何を入れたんですか?
門井さん「氷と一緒に“塩”ですね。あと愛情」

塩を加えていたわけは、氷水に塩を加えると温度が下がる現象を利用してより冷やすためです。氷点下まで下がりました。

■同じ種類の魚でも、身の質に合わせて細かく調整

さらに、塩を加えると冷え方が変わるんです。
門井さんは、魚の身の質に合わせて、塩分濃度を細かく調整しています。

この2つはどちらも真イワシですが、産地が異なります。
左は兵庫県産、右は北海道産。塩分濃度を測ってみると、兵庫県の方は1.1%、北海道の方は少し高く1.5%になっていました。

Q:(塩分濃度を)それぞれ変えていました?
門井さん
「濃度を強くしたい魚と少し分けている。(魚は)小さいし繊細なんです。北海道産だと身が少し水っぽい。おなかの皮が薄い、少し緩めなので、(塩を)強くしてピシッと(冷やす)。兵庫県産はきめが細かくて、ガッチリしている。(塩を)濃くすると凍ってしまう。凍りやすい」

同じイワシでも最適な冷やし方を追求しているんです。
左はきめが細かく凍りやすいといっていたイワシで、右は水分が多いといっていたもの。確かに身の質が違います。

この身質に合わせた塩分の調整を、門井さんは舌でおこないます。
築地歴30年の経験がなす技です。

清水リポーター「(濃度は)1000分の4の違いでした。1.1%と1.5%」
門井さん「数字に出すとね、うんうん。毎日やっていますからね」

■客が調理する時間を想定して塩分濃度を調整

門井さんは、客が魚を調理する時間を想定して、この技を駆使しています。

茨城で寿司店を営んでいる小林一太さん。
市場が休みの日曜日も店は営業があるため、2日分の魚を仕入れます。

小林さんが買ったコハダを、門井さんは当日と翌日の日曜日分とで、袋を分けて用意しました。日曜日の袋には、氷が多めで塩分の濃い水を入れています。

門井さん
「袋の中で氷が溶けるのを想定した塩分濃度にした。ちょうどいいように仕上がるイメージ」

小林さん
「しっかり氷を調整して、魚が日曜日にいきてくる状態にしてくれる。あとはやる仕事をやるだけ、助かっています」

■自動管理が主流になった今も欠かせない氷

こうした職人技に支えられ質のいい魚を出荷してきた築地ですが、いまは機械による温度管理が主流になっています。

活魚をあつかう仲卸の安田賢二さんです。

車エビの水槽は、適温の20℃ほどに自動で調整されています。
しかし出荷の時は、いまも氷が欠かせないといいます。

20度ほどあった水温は氷を入れると、10分も経たないうちに10度まで下がりました。

安田さん
「温度が高い時にエビが暴れてしまう。なかなか箱に納まってくれないんです」

水温が高い状態でエビを水から上げると暴れてしまいます。

一方、10℃ほどに下げていると、落ち着いた状態です。

1分1秒を争う出荷作業。
氷を使うことで迅速に、かつエビの質を保って出荷できるんです。

安田さん
「いまはおとなしいんですけど、暴れると熱をもってエビにもよくないんです。冷やして暴れさせない状態で、いい状態でお客さんに提供することを心がけています。(氷は)夏場には無くてはならない存在です。全部に氷を使っていますので、氷が無いと致命傷です」

東京の暑い夏。
築地には、新鮮な魚を届けるために、氷を駆使する職人技がありました。

■日々研究されて編み出されている職人技

(武内アナウンサー)
ただの氷じゃなかったんですね。
いろんな技を加えて、温度も偶然じゃなくてきちんと管理しているんですね。

(清水リポーター)
本当にわずかな差ですけれども、いい状態で魚が届けられるように、日々研究されて編み出されている技なんです。仲卸さんによって、その技は少しずつ違うんですよね。

(武内アナウンサー)
それにしても、いろんな氷の技があるんですね。

(清水リポーター)
氷自体が変幻自在なんです。自動管理していても、温度を急に下げたい時がありましたよね。
豊洲市場は空調が管理されているので、氷を使う量も少なくなると考えられているんですが、氷は仲卸さんたちの“相棒”ですから、この技がなくなることはないと感じました。

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